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「TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.10 斉藤聡之(※初出場)

2017.10.12

TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏 Ver.10 斉藤聡之 ナンバーカード1  6日5時間5分(7位) ※初出場

松田珠子=取材・文

 

 7日目の朝方、雲が多くまだ薄暗い5時前、もうすぐ次の選手がゴールするという情報が入った。GPSの情報では静岡駅以降、ルートから外れており、道に迷っているのかと関係者を心配させたが、16年大会の最年少選手・斉藤聡之は、ゆっくりとした、しかし確かな足取りで大浜海岸に姿を見せた。
 記録は6日間05時間05分。7位でのゴールだった。
 その直後にゴールした北野聡と健闘をたたえ合い、写真撮影に応じ、NHKの取材を受けた後、スタッフらの控え場所へ。スタッフや関係者、カメラマンらが見守るなか、ゴール地点に手配していた段ボール箱を開けると、おもむろに小さいペットボトルを取り出した。中には琥珀色の液体が入っていた。斉藤はキャップを開け、中身を一口、噛みしめるように飲むと、表情を緩ませた。

「1週間も飲まなかったのは、初めてなので……」
 あたりに芳醇な香りが漂った。琥珀色の液体の正体はウイスキーだった。



朝5時のフィニッシュ。ゴールのフラッグの前で撮影に応じる斉藤(写真=山田慎一郎/MtSN)

 

<エリートコースから山小屋バイトを経て、消防士に>

 茨城県の海の近くで生まれ育った。中学時代はラグビー部に所属したが、高校では部活には入らず、運動不足解消にランニングする程度だった。山には行ったことがなかった。高校生のころ、長野県の大学に進学した兄のところに家族で遊びに行き、駒ヶ岳ロープウェイで中央アルプスの千畳敷カールへ。付近を散策し、景色の美しさに魅了された。山への興味が湧いたのはこのときだ。

 高校卒業後は京都大へ進学し、生物学を専攻。ワンダーフォーゲル部に入った。夏休みには、北アルプスの三俣山荘で働いた。三俣山荘を選んだのは「いちばん奥にあるから」という理由だ。北アルプスの奥地での生活は厳しくも、性に合った。楽しみにしていたのは、水晶小屋など系列の山小屋に荷物を担いで運ぶ歩荷(ボッカ)だった。当時の主人である故・伊藤正一さんから学ぶことも多かった。伊藤さんは、黒部源流域の開拓者であり、『黒部の山賊』(山と溪谷社刊)の著書でもある。山賊の話はもちろん、小屋から松本まで歩いたことなど、さまざまなことを話してくれたという。三俣山荘で働いた経験は、斉藤にとっての山の「原点」となった。

 大学卒業後は自然科学系総合研究所である理化学研究所に就職し、生命科学の研究を広める仕事に従事。しかし、山小屋での生活が忘れられず、「研究所にいても、山のことばかり考えていた」と斉藤は振り返る。結局、2年で退職。夏は山小屋、冬は各地でアルバイトという生活に戻った。

 三俣山荘には、学生時代から数えてトータルで5シーズン勤めた。理想の生活ではあったが、20代後半になり、「そろそろ定職につかないと……」と、消防士を志す。消防士という職業を選択したのも、山小屋バイト時代の経験からだ。
「山小屋で消防の山岳救助のヘリや、救助隊の方たちの姿を見て、消防の人ってすごいなと思ったのがきっかけです」

 年齢制限で地方の消防局を受けることはできず、東京消防庁に中途で入局。最初の頃は、西多摩の秋川署に配属された。のちに都心の部署に配属となったが、秋川署時代には山岳救助隊として出動したこともある。
 

 TJARを知ったのは、山小屋に置いてあった雑誌『山と溪谷』で大会のレポート記事を読んだことがきっかけだった。04年、田中正人氏(現在、TJAR運営委員メンバー)が優勝したときの記事だった。このときの印象は――。
「信じられなかったです。(日本海の魚津を出発して)1日で双六小屋まで来るなんて、すごいなと。そのときは自分がやってみようとはまったく思わなかった」


 消防士になって1年目の秋、NHKでTJARが放映された。レースに出ている選手たちの姿を見て、数年前に雑誌でレースを知ったときとは違う印象を抱いた。ちょうどトレーニングの一環としてトレイルランを始めた頃でもあった。自分もやればできるのではないか……挑戦してみたい――その気持ちが強くなった。
 12年の時点では、斉藤にとってTJARへの挑戦は「時期尚早」との気持ちがあった。休みがとれると山へ足を運んだ。経験を重ね、16年大会への挑戦を決意した。

 

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