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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.10 2014年の勇者たち(5)米田英昭

2015.09.16

2014年の勇者たち(5)米田英昭(ナンバーカード5) 13位、7日間23時間14分(※初出場)

取材・文=松田珠子

 TJAR2014で、7日間23時間14分(13位)で完走を果たした米田英昭(よねだ・ひであき)。
 現在は栃木県・宇都宮市在住。実家は滋賀県だが、父親の仕事の関係で、スペイン・ジローナ(バルセロナから100km)で生まれ2歳まで過ごした。「同じカタルーニャ州出身ということで、(世界的なトレイルランナーの)キリアン・ジョルネに少し親近感を持っている」というが、「スペイン語は全然話せない」そうだ。
 小学校時代は剣道、中学では陸上部に所属し800mで近畿大会に出場した実績がある。高校ではアメフト、大学はBMXとさまざまなスポーツを経験。社会人になってから登山を始めた。登山をきっかけにトレイルランへ。中学時代、陸上部だったこともあり、走ることには抵抗はなかった。
 TJARの存在を知ったのは、望月将悟が初優勝した2010年大会からだ。山の雑誌などで知り、どんな大会なんだろうと気にはなっていた。
 初のトレイルレースは2011年、OSJの志賀高原50kmに出場。当時は、まだフルマラソンも走ったことがなかった。 
「足切りの時間を全部確認して、ギリギリゴールできれば、と思ったらけっこう行けた。しんどいけど、達成感がありましたね。ゲレンデをひたすら登るとか、バカバカしすぎて、普通やらないよなぁというようなことをやるのがおもしろかった」
 翌年、TJAR2012が開催された。米田は、同年秋のトレイルレースのボランティアで知り合った仲間に誘われ、TJAR報告会に行った。実際に参加した選手たちの生の声を聞き、心が強く動いた。「挑戦してみたい」との思いが強くなった。



TJAR2014開会式にて。ナンバーカード5が米田(写真=宮崎英樹/MtSN)

 

<9日かけ、日本海から富士山山頂を経由し太平洋へ>

 TJARへの挑戦を決める前、米田は大きなチャレンジを敢行している。2011年の夏、米田は、日本海から太平洋まで、富士山経由の日本縦断に挑んだ。新潟・糸魚川を出発し、標高3776mの日本一の山・富士山山頂を経由し、太平洋をめざす全長約270km(!)の行程――いわば「トランスジャパン・マウントフジ」(!?)だ。
 レースではなく、個人的なチャレンジである。初トライしたのは2009年。当時はTJARの存在はまだ知らなかった。
 それまで富士山には2回登頂経験があったが、いずれも五合目からだったため、「どうせなら0mから、3776mまで登りたい」と思っていた。たまたま『山と溪谷』誌の付録の日本アルプス総図を眺めていたときに、富士山を含めた日本縦断を思いついた。それまで、キャンプも野宿もしたことがなかった。

 初トライの2009年は、テントや寝袋など「結構な荷物を背負って」糸魚川をスタートしたが、白馬村を通過したあたりで足が痛くなり、「心が折れて」電車で帰宅。
 2年目の2010年は、ひとまず「0mから」というコンセプトを実現するために、太平洋から富士山を往復、達成。そして3年目(2011年)に、日本海を出発して9日間で静岡・富士川河口にゴール。初トライから3年がかりで踏破に成功した。

 2011年の挑戦を振り返ると、糸魚川を出発後、序盤は「塩の道」(=旧街道で、現在はトレッキングルート)を進んだが、「アブに噛まれすぎて」舗装路に変更。「夕方から夜中、午前中の涼しい時間帯に歩き、昼間はスーパー銭湯とかで仮眠をとりながら進みました」。
 富士山までは遠かった。甲府に下りる坂で見えた山が富士山だと気づいたときは、一人で叫んでいた。しかしまだ道のりは遠かった。次に河口湖への下り坂で富士山が見えたときは、嬉しくて泣いてしまったという。「傍目からみたら、汗かきながらトボトボ歩いて泣いている変な人でした」。
 最終日の翌日に、両親と甲子園に高校野球観戦に行くことになっていた。父から「今日中に帰ってこい」と連絡が入り、疲労困憊の体に鞭打って太平洋まで急いだ。「海面をピチャピチャして、また急いで新富士駅まで痛い脚を引きずりながら歩き、最終の新幹線に飛び乗りました」。
 
 長い道中は、山とはまた異なるアクシデントにも見舞われた。夜、スーパーの駐車場で寝ようとしたら、パトカーが来て職務質問をされたり、富士山から下ってきた山麓では野良犬の群れに遭遇したり……。ちなみに犬は4匹ほど。「こちらに危害は加えない感じだったんですけど、『ストップ!』『ストップ!』」、と叫びながら必死で追い払いました」。

 友人からは「アホちゃう?」と言われたというこのチャレンジ、やり遂げたときの達成感は大きかった。
「自分で思いついた計画を、自分のやりたいようにできたことに達成感と自由を感じました。歩くって凄いなと」
 この踏破が、TJAR2014に挑むにあたっての自信になった。

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