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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.22 2014年の勇者たち (17)中村雅美

2016.04.04

2014年の勇者たち(17)中村雅美 ナンバーカード28 DNF(4日間03時間48分 中央アルプス・池山でリタイア)※初出場

取材・文=松田珠子

​ 2013年、50歳でフルマラソンサブスリー(3時間切り)を達成。同年11月には、TJAR実行委員でもある田中正人率いる日本を代表するアドベンチャーレースチーム・イーストウインドの女性メンバーとして、コスタリカでのアドベンチャーレース世界選手権(ARWC)に挑んだ。そして14年には、51歳でTJARに初出場。中村雅美は、年齢を感じさせない挑戦を続けている。

 


13年、イーストウインドの女性メンバーに。左から、田中陽希、中村、
山北道智、田中正人(写真提供=イーストウインドプロダクション)

 

 生まれは東京だが、小学校時代から千葉県で過ごし、現在も在住する。中学・高校では陸上部に所属していた。専門種目は800m。高校2年時には千葉県トップクラスの実力となった。マラソン解説でおなじみ、元マラソン日本記録保持者の増田明美氏(千葉県成田高校出身)とは同学年で、当時、県大会では顔を合わせるライバルだった。実は、増田氏に勝ったことも一度ある。
 「高校2年のときの最後の800mのレースで、ゴール前で抜きました。上には上がいて、その時は優勝じゃなくて2位だったんですけど」
​ 将来を期待されながら、しかしその大会を最後に、中村は陸上をやめることを決めていた。
 「絵とかアニメが好きで、美大に行きたかったんです。美大に行くためには、とにかく絵をたくさん描かなくちゃいけない、と言われて……」
 当然、陸上部の顧問からは強く引き留められた。
 「呼び出されて、お寿司を奢ってもらいながら説得されたんですけど、辞めちゃいました。記録ばかり求められて、もういやになっちゃっていたんだと思います」

 翌年、増田明美氏は、高校3年生で5000m、10000m、フルマラソンで日本記録を更新した。中村も陸上を続けていれば、あるいは、日本トップクラスの選手になっていたかもしれない。

 だが、当の中村は陸上に未練はなかった。すっぱりと競技を辞めた後、美術部に入り、高校卒業後は目標どおり美大へ進学。大学卒業後はデザイン関係の仕事に就いた。
 その後、趣味としても美大出身の才能を発揮。銅や真鍮で服飾品などを創作することを趣味とし、個展やグループ展に出すこともあった。このほか、友人とスペイン旅行に行ったことや女性バックパッカーの紀行本に影響を受け「パッケージされていない低予算の旅」のおもしろさに目覚め、お金が貯まると海外旅行を楽しんでいた。
 「リュックを背負ってフラッと。好きだったのは、ネパール、スペイン……。友達と行くこともあったけど、基本的には一人で。あまりおすすめできないような安い旅でした(笑)」
 結婚してからはバックパッカーを卒業。創作は行なっていたが、体を動かすことはほとんどなかった。転機が訪れたのは40歳を過ぎてからだ。それまで「1ミリも走らなかった」(中村)が、夫の影響で再びスポーツの世界へ。
 「夫がダイエットのために自転車を始めたんです。そのうち『一緒にやろう』と言われて。夫のお古のMTBをもらって、乗り始めたのが、運動をまたやり始めたきっかけです」

 MTBを始めてすぐ、中村は夫に誘われるがまま、タイで行なわれる「チェンライ国際MTBチャレンジ」に参加することになった。毎年1~2月頃開催、2日間で100km以上を走るステージレースで、実力に合わせて参加クラスが分かれている大会だ。
 「MTBに触ってまだ1週間くらいしかたっていなかったのに、いきなり海外レース(笑)。そこで落車して病院送りになったんです」
 幸い、大事には至らなかったが、このときは「すっかり嫌になった(笑)」と振り返る。

 その後、07年に行なわれた第1回東京マラソンをテレビで見て、マラソンへの興味が湧いた。
 「都庁をスタートする場面で、紙吹雪がバァーッて舞っているのを見て、このレースに出たい! と思いました」
 練習のために何かレースに出ようと、大会を探し、エントリーしたのが、丸沼のエクステラ・ジャパンレース。中村は、MTBとトレイルランの「デュアスロン」に出場した。45歳のときだ。
 「すごく厳しいレースでした。MTBのコースには階段や岩が出てくるし、走るのは山道。マラソンの練習のはずなのに、ロープを使って登るところがあるし、どうして川の中を走らないといけないんだ、と(笑)。こんなレースがあるんだと、びっくりしました。ちょっと方向を間違えましたね(笑)」
 ゴール後は、あまりのツラさに動けなくなったというが、結果はいきなりの女子4位入賞。潜在能力の高さを示した。その後、ロードレースの大会にも参加するようになり、「マラソンの練習なら、こっちだ、と気づいた(笑)」と中村。それでもトレイルランにもおもしろさを感じ、ロードレースと両軸で取り組むようになった。

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