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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.30 2014年の勇者たち (25)船橋智

2016.07.22

2014年の勇者たち(25)船橋智 ナンバーカード10  6日間06時間54分、3位 ※3回目の出場

取材・文=松田珠子

 色白で線が細い。華奢な体のどこに、過酷なTJARを踏破するだけのパワーが潜んでいるのか、不思議に思うほどだ。
​ そう振ると「よく言われます。『なんでそんなに筋肉ないの?』とか……。私からしてみたら逆に、みんな良い脚をしているけど、どうしたらそんなに筋肉つくのか知りたい(笑)。仲間とも、笑い話でそんな話をしたりしますね」と船橋は言う。
​ 10年に初出場、12年大会からは実行委員に名を連ね、選手マーシャル(スタッフ兼選手)として出場している船橋。過去3度の戦績は、5位、5位、3位、いずれも7日以内の完走で安定した強さを見せる。

 


14年大会の開会式。ビブスナンバー10が船橋(写真=杉村航/MtSN)

 

<子どもの頃から山は身近だった>

 神奈川県の最北に位置する旧藤野町(現在は相模原市)の出身、在住だ。実家はもともと兼業農家で、養蚕、お茶、林業をやっていた。船橋は子どもの頃からその手伝いに駆り出されていた。小学校は歩いて1時間近くかかる場所にあり、6年間徒歩で通った。父は子どもたちのために、庭にプールやテニスコートを自作。その手伝いもしたという。船橋は、豊かな自然の中、思い切り体を動かせる環境で育った。
 「(南アルプス南端・井川地区で育った)望月(将悟)さんと子どもの頃の境遇が似ているのかな。要は田舎者です(笑)」と船橋。
 「今は出荷していませんが、草刈り、お茶刈りはしています。庭のプールは今はカエルの池、テニスコートがあった場所には私の家が建っています」

 子どもの頃から丹沢の山々や陣馬山なども身近な存在だった。高校時代は山岳部に在籍していた。
 「顧問が高山病の体質で、標高2000m以上のところには行ったことがなかった(笑)。地元の陣馬山とか、低山ばかりでした」
 高校卒業後、大学入学と同時に趣味としてランニングを始めた。
 「体を動かすのは好きだったので、何もしないのは嫌だなと。走り始めていろいろなレースがあるのを知って、ハーフマラソンとかに出るようになりました」

 山を走るようになったのは、社会人になってからだ。
 船橋が山を走る楽しさを知ったレースが2つある。それは「立山登山マラニック」と「OSJおんたけスカイレース」だ。
 まず、立山登山マラニックに初めて出たのは、05年、25歳の頃だった。このとき立山に登ったのが、船橋にとって初アルプスだった。
 「自然の雄大さと景色のきれいさに感動しました。こんなに素晴らしいところがあるんだと」
 自然の中を走る楽しさをこの大会で知った、と船橋は言う。立山山頂がゴールのこのレース、選手たちはゴール後、室堂まで下山し、雷鳥荘に宿泊することになっている。そこでの出会いからも大きな影響を受けた。
 「一緒に泊まった人たちが登山の好きな年配の方が多くて、山の話とか山を走る大会があるのを教えてくれた」
 そして翌年に出場したOSJおんたけスカイレース。当時スカイレースのワールドシリーズの一戦として開催された。王滝村中心部から御嶽山頂(標高3067m)、お鉢を巡って下山する行程(当時24km)だ。
 「実際に出て、こんな標高3000m級のところを走っちゃっていいんだ、と驚きました。もっと他の大会にも出てみたいと思うようになりました」
 この後、日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)や北丹沢12時間山岳耐久レースなど、各地のトレイルレースに出るようになった。

 TJARを知ったのは05年頃『山と溪谷』で創始者・岩瀬幹生の記事を見たのがきっかけだった。
 「こんなすごい人がいるんだ、こんな世界があるんだ、と衝撃を受けた」
 当初は自分には縁のない世界だと思っていた。情報もあまりなかった。08年大会後、レースの報告記事を雑誌で読んだり、飴本義一ら出場選手のブログ等で情報収集するうち、だんだん興味が湧いた。
 「すごい世界だけど、やってみたいなと。吸い込まれていったような感じでした」
 船橋は、10年大会に挑戦することを決めた。

 トレイルランの経験は積んできていた。ただ、高校時代、山岳部だったとはいえ、本格的な登山の経験はほとんどなかった。立山登山マラニックで登った立山以外のアルプスにも行ったことがなかった。
 「もっと山の経験が必要だし、ビバークも経験しないといけないな、と。09年の立山登山マラニックに出場したとき、(ゴールした)翌日、立山から上高地まで縦走してみようと挑戦しました。それが第一歩ですね」
 天候にも恵まれ、順調だった。「もっと山の経験を積みたい」と、翌週には南アルプスにも足を運んだ。船橋はアルプスの魅力に引き込まれていった。
 可能な限り山に通い、インターネット等で情報収集を行ない、実践につなげた。そうして2010年の出場権を手にした。

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