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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.34 2014年の勇者たち (29)湯川朋彦 

2016.07.31

2014年の勇者たち(29)湯川朋彦 ナンバーカード25 DNF(2日間18時間10分 沢渡)※4度目の出場

取材・文=松田珠子

 08年にTJARに初出場し、完走。12年から実行委員メンバー入り、代表の飯島浩、副代表の田中正人とともに中心的な役割を務めている湯川朋彦。
 12年秋に放映されたNHKのTJAR特集番組では、湯川もクローズアップされ、勤務先の超高層ビルの非常階段を利用したトレーニングが紹介された。TJARを想定した9kgの重りを背負っての1224段(52階分)、標高差約226mを上る階段トレーニングは、05年から始め、10年以上続けている。



14年大会、天狗平から立山室堂へ向かう湯川(写真=杉村 航/MSN)

 

 大阪で生まれ育ち、小中学校時代はサッカー、高校は管弦楽部、大学では弓道部に所属。社会人になってから一時的にゴルフにはまったが、高校生以降は激しいスポーツと無縁といえる。ただ山は好きで、小学校時代から地元の金剛山や高野山、六甲山にはしばしば登っていた。
 そんな湯川が走り始めたのは、04年夏、38歳のときだった。同年12月のホノルルマラソンをめざし、「ぼちぼち走り始めた」のが最初だった。動機は「楽しそう!」だった。

 練習がてら、11月に20㎞のロードレースに出たところ、膝を痛めてしまう。それでも1カ月後のホノルルマラソンに出場し、「ボロボロになりながら」(湯川)4時間33分28秒で完走した。このゴールの瞬間、「アスリートになりたい」と強く思ったのが、現在の湯川の原点かもしれない。

 膝を痛めたことで、舗装路よりも脚への負担が少ない未舗装路を走るトレイルランに興味を持ち、実家近くの高尾山で大晦日にトレイルランデビュー。
 「山を走るというよりは、山歩きでした。登りは息が続かず、早歩きが限界。下りは膝の痛みが出て、やはり早歩きが限界。でもとても気持ちがよかった」
 トレイルランのおもしろさにはまり、4月の青梅高水山トレイルラン、10月の日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)とレースにも出場、距離も延ばしていった。

​ 膝の痛みで走れないときに、職場の超高層ビルの非常階段を歩いて上るトレーニングを取り入れた。脚が治ってからも階段トレーニングは継続し、駆け上りや段とばし、2Lのペットボトル4本を背負うなどいろいろなバリエーションで1日に3~4本、多いときは10本以上をこなした。


<TJARへの道>

 TJARを知ったのは、06年夏。同じランニングクラブの先輩である鈴木基(TJAR2008完走者)から「出場者が6人で2人しかゴールできなかったレースがある」と聞いた。それが、終わったばかりのTJARだった(完走者は、間瀬ちがや、高橋香の2名)。そんなレースがあるんだ、と「興味をひかれ」、原宿で行なわれた報告会に参加した。
 日本海から太平洋まで日本アルプスを縦断するというのは、自分には壮大すぎるチャレンジだと思っていたが、「完走できなかった人も含めて、選手の顔がみんなむちゃくちゃ生き生きして輝いて見えた。それにコロッとやられてしまった」と湯川。「2年間準備して、自分も出る」と決意した。06年10月のことだった。
​ ロードとトレイルのランニングは距離を延ばしていたが、アルプスの経験は浅かった。
​ 07年7月、中央アルプスで行なわれた選考会A(駒ヶ根高原~駒ヶ岳~空木岳~駒ヶ根高原の42.1㎞を13時間13分以内)に参加。だが、途中の登山道で道に迷い、関門通過制限時間に間に合わずリタイア。山の経験不足を痛感した。
 「このとき、アルプスは2度目。それまで走っていた奥多摩や奥武蔵ではそんな経験はなかったので、自分がいかに山に慣れていないかを思い知らされ、『これはアルプスに行かないとダメだ』と。経験不足、実力不足を痛感した」

 この後、可能な限りアルプスに通う計画を立てた。また走力もさらに強化。5月のTTR100(東京トレイルラン※同大会で06年TJAR完走の高橋香が急逝)では、25時間42分8秒のタイムで総合6位に入った。07年はOSJ箱根50K、おんたけスカイレース、日本山岳耐久レースなどトレイルランのレースにも多く出場した。
 平日はロードランニング(月間300㎞)、職場の非常階段のトレーニング、ジムのトレッドミルでの高傾斜走を軸に、さらにはミウラドルフィンズでの低酸素室でのトレーニングも取り入れた。
 翌年は、すべての練習やレースを「TJARに焦点をあてたもの」とした。そうした努力が実を結び、08年7月の選考会Aでは時間内に完走し、08年の出場権を獲得した(当時は書類選考後、山岳フィールドの走力のみの選考会だった)。2週間後の選考会B(北アルプス、立山・雄山~薬師岳~黒部五郎岳~槍ヶ岳~上高地の73.8kmを24時間6分以内)にも練習を兼ねて参加。本戦を見据え、アルプスでの実践を重ねていった。

 そして8月、TJARに初挑戦。41歳だった。

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