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【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート第1話 ~総距離170km、累積標高差1万mに及ぶ、美しくも過酷な旅UTMB~

2016.11.07

 UTMB 2016で女子8位に入賞し、日本人女性選手として初めてUTMBの表彰台に登った丹羽 薫さんによるレースポート。小柄な丹羽さんが世界の強豪女性ランナーとともに、170km・累積標高差1万mのコースをフィニッシュめざして激走しました。レース中には、さまざまなトラブルや出会いがありました。UTMBは170kmの「旅」といえるのかもしれません。丹羽 薫さんが強い心で進んだ170km。あの暑い熱い夏を、連載5回にわたって振り返ります。

文=丹羽 薫

■ UTMB出場への想い
 
UTMB(旧名称:ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)は、フランスのシャモニーをスタート・フィニッシュ地点とし、ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランを取り巻くフランス、スイス、イタリアにまたがる山岳地帯を走る世界最大規模のトレイルランニングのレースです。UTMBには5つの種目がありますが、今回のUTMB(総距離170km・累積標高差1万m)のカテゴリーだけで約2300人のランナーが出場しました。UTMBの他に、PTL、TDS、CCC、OCCという、300km~50kmの距離の種目があり、自分のレベルに合わせた種目に出場することができます。しかし、どのレースも出場希望者は年々増加傾向にあり、申込みに際しては、各種目ごとにエントリー資格ポイントを取得しておかなければなりません。さらに、そのうえで出場できるかどうかは抽選という形で決まります。特に一番人気のUTMBは、エントリー資格ポイント数・倍率とも最も高く、出場したいと思ってもそこに辿り着くまでの道のりが大変になっています。私も真剣にUTMBの出場を考えるようになってから、3年越しでようやく出場することができました。

 


UTMBのコースマップ。モンブランの周りをグルっと一周する170km(累積標高差)のコース。スタート・フィニッシュ地点はフランスのシャモニー

 


UTMBの高低差図。一つひとつの山が大きい
 

 トレイルランニングを始めた2011年頃、鏑木 毅さんが参加されていた2009年のUTMBのドキュメンタリー番組『激走モンブラン』を見て、「凄いレースがこの世に存在するんだ。死ぬまでに一度出てみたい」と思ったのが出場のきっかけです。それからは、関西の小さなレースに出場しはじめ、徐々に出場するレースの距離を伸ばし、UTMBへのエントリー資格ポイントが獲得できるレースにも参加するようになりました。2015年のUTMBには、エントリーすることができたのですが、運悪く抽選で落選してしまいました。しかし、2015年にUTMBの代わりに参加を決めたTransvulcaniaというスペインのスカイウルトラレースやUTMF(ウルトラトレイル・マウントフジ)で入賞することができ、2016年のUTMBには抽選なしのエリート枠で出場できることになりました。「死ぬまでに一度!」と思っていたその日は、意外にも早く訪れたのです。

 


受付会場で、UTMBに出場する大瀬和文さんと一緒に記念撮影。無料で写真を撮ってもらえるサービスがあります

 

待ちに待ったUTMBのスタート前、思いもよらないトラブルが!
 2014年に国内の100マイルレースを初めて走り、この距離への適性を自分の中に見出してからは、早くUTMBを走ってみたくてうずうずしていました。ようやくUTMBのスタート地点に立てる日を迎え、「やっとこの日がきた!」という感覚でした。

 エリート選手はスタートゲートに並ぶ必要がなく、スタート20分前までにゲート付近に集まれば、前列からスタートさせてもらえることになっていました。私は少し浮かれていたのかもしれませんが、膝にテーピングを貼り忘れていることにも気がつかず、ザックをサポートクルーに預けて、ウォームアップに行ってしまいました。しかし、スタート会場付近は一般選手と観客の人々で混雑していて、結局ウォーミングアップはあまりできませんでした。ザックを受け取るために、早めにスタートゲートに向かったものの、サポートをしてくれる友人の姿はなく、大きな声で探してもどこにも見当たりませんでした。エリート選手用のスタートラインに並ぶ時間制限のため、とにかく空身のままで並ぶことにしました。しかし、スタート時間が刻々と近づくにつれ、段々と不安が募っていきました。そばにいた奥宮俊祐選手に状況を説明すると、奥宮さんは親切に友人に電話してくれましたが、応答がありませんでした。私はもう最後の手段だと思い、MCにマイクで呼び出しをしてくれるよう交渉し、友人を呼び出そうとしていたその時に、奥宮さんが友人からザックを受け取って来てくれました。奥宮さん、本当にあの時の恩は一生忘れません!

 なんとかスタートできる状況になったのですが、焦っていたこともあり、ザックに入れていたヘッドバンドを付け忘れ、膝のテーピングもサポーターから受け取り損ねたまま、スタートの異様な興奮と熱気の中に立ち尽くし、UTMBのテーマ曲である“Conquest of Paradise”に聞き入っていました。そして、やっとこの日を迎え、スタートできる安堵感や嬉しさで感極まりながら、横にいた小原将寿選手やチームメイトの大瀬和文選手と健闘を祈って握手を交わし、ベストを尽くして無事にシャモニーへ帰ってくることを誓ったのでした。

 スタート30秒前のアナウンスがあったものの、観客の歓声でかき消されていたのか、カウントダウンはなく、いきなり170kmの長い旅が始まりました。

 スタート時のウェアリングについては、スタート直前まで悩みましたが、朝晩の気温が10℃を下回らないだろうという天気予報だったので、半袖のTシャツにアームカバーとスコートを選択しました。

 

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート第2話

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート第3話

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート第4話

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート第5話

 


UTMB 2016 ダイジェスト映像。画像をクリックして映像をご覧ください

 

 

 

丹羽 薫(にわ・かおり) 
三重県で生まれ、岡山で育つ。高知での大学時代はヨットに明け暮れ、卒業後はオーストラリアへ。念願だった馬の調教などの仕事に携わる。帰国後は神戸に住み、六甲山で犬の散歩をしながらボルダリングやスキーに熱中。結婚して京都に引っ越してからトレイルランニングと出会い、元々山やキャンプなどのアウトドアが好きだったのもあり、すっかりはまる。じつは結構ゲーマーだったり、ピアノも習っていたが全部やめて、現在はトレイルランとスキー三昧の現在を送っている。愛犬と野山を駆けめぐるのが最高の幸せ。(写真=新名健太郎)
◆丹羽 薫さんのMtSNマイページへのリンクはこちら

 

【2016の戦績】
第2回 奥三河パワートレイル 70km 3位
第2回 Mt.Hiei INTERNATIONAL TRAIL RUN 50km  4位
UTMB 170km 8位
UTMF(短縮コース)44.8km 3位
志賀高原エクストリームトレイル 60km 優勝

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