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【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート第2話 ~総距離170km、累積標高差1万mに及ぶ、美しくも過酷な旅UTMB~

2016.11.08

 UTMB 2016で女子8位に入賞し、日本人女性選手として初めてUTMBの表彰台に登った丹羽 薫さんによるレースポート。第2話では、スタートから約80km地点のクールマイユールまでのレース模様をお伝えします。170kmという長い旅の中で、丹羽さんが自分を奮い立たせて前へ前へと進んでいる様子をご覧ください。

 

文=丹羽 薫

スタート~サン・ジャルベ(21km)
 
スタート地点のシャモニー(Chamonix)から49km地点のシャポー(Chapieux)までは事前に試走し、コースをよく把握していたので、他の選手の速いペースにつられないように気をつけながら、一緒にレースに参加している友人や、よくレースで一緒になる海外選手と会話を交わしながら進みました。

 


UTMBの各エイドステーションまでのタイムチャート。緑色のエイドステーションではサポートクルーによるサポートが受けられる

 

 しかし、21km地点のサン・ジャルベ(Saint-Gervais)に予定より18分早く着いてしまいました。予定したペースよりは早めでしたが、調子に乗って飛ばしたというわけではなく、たえずSUUNTOの時計に表示される心拍数を確認しながら、抑え気味で走りました。「汗はあまりかかないものの暑さに要注意だな」と、自分に言い聞かせ、こまめな水分補給を心がけました。サン・ジャルベ手前で薄暗くなってきたので、ウエストに装着していたライトを点灯しましたが、ヘッドランプは付けませんでした。

 


ウエストに装着したライト、Lumen600をメインライトにして夜間走をした

 

■サン・ジャルベ21km)~コンタミン(31km)
 サン・ジャルベに到着すると、3週間前から現地に滞在したことで知り合った多くの友人達に出会え、大声援をもらいました。“ゴールで待っているから!”という友人の言葉に、「なんとしても遅くならないうちにシャモニーに帰って、みんなと喜びを分かち合いたい!」と思いました。ソフトフラスクに水を足して、すぐにエイドを後にしました。

 次のエイドである31km地点のコンタミン(Les Contamines)は、サポートが許されている1つめのエイドです。コンタミンにも予定より20分早く到着しましたが、この区間に関しては、ほぼ想定どおりのペースで進めました。 

 21km地点のサン・ジャルベから、31km地点のコンタミンまでのコースは、かなり平坦だったので、ペースを上げ過ぎないように心がけました。試走のときを思い出し、心拍数の確認に加え、自分の感覚も確認しながら走りました。ヘッドランプはボノム峠(Col du Bonhomme)の下りまでは使用しないつもりだったので、この区間もウエストライトだけで進みました。

 コンタミンで、サポートクルーが用意してくれていたドリンクとジェルのソフトフラスクを交換し、エナジーバーなどを食べながらふと隣に目をやると、2015年のUTMBで12位になった土井 陵選手が横になっていました。「えっ! まさか!」と自分の目を疑いましたが、土井選手が体調不良なのは明らかでした。しかし、まだレースは始まったばかり。少し休んだら、きっと復活するだろうと思い、土井選手に「また後で会いましょう!」と別れを告げ、トイレをすませて出発しました。

 

コンタミン(31km)~クールマイユール(79km)
 
コンタミンから、サポートが可能な次のエイドステーションであるク―ルマイユ―ル(Courmayeur)までは、約50km離れており、サポートクルーの友人に会うのは約8時間後の予定でした。ここで寒いようならウェアを長袖とタイツに変更する予定でしたが、特に寒さを感じることもなく、しっかり走れていたので、ウェアは変更せずに進みました。

 しばらくフラットな舗装路と林道を進むと、いよいよ本格的な山のボノム峠への登りが始まります。標高1700mまでは林道でしたが、2000mを超えてからは、次第に山らしくなり気分が高揚しました。この辺りでは、まだ他の選手のことをまったく意識していませんでしたので、私を抜いていく選手がいても、「まだ序盤、勝負は124km地点のシャンペ・ラック(Champex-Lac)以降だ」と、自分に言い聞かせていました。ボノム峠への登りの最後から下りの途中までは、岩場で少し足場が悪いため、登りでヘッドライトを装着し、下りの時に点灯させて足元の不安をなくしました。以降も同様に、登りではウエストライトのみで、下りではヘッドライトを併用して進みました。

 ここから66km地点のコンバル湖(Lac Combal)まではゆるやかな長い登りです。セイニェ峠(Col de la Seigne)まで登り、一度少し下って、もう一度登り返してピークを踏み、再度大きく下るコースです。予想したとおり、途中で復活した土井選手が追いついてきて、颯爽と抜き去っていきました。私は「マイペースでかんばろう!」と自分自身に言い聞かせて、土井選手の背中を見送りました。

 この区間では、淡々と走りながらも、満天の美しい星空にみとれ何度も空を仰ぎました。また、稜線近くの低い位置に月が出ており、月に向かって走っているような幻想的な情景で、Eelsというアーティストの“Climbing to the moon”という歌を口ずさみながら、絶対的な孤独感を満喫していました。

 コンバル湖を越え、ク―ルマイユールへの下りにさしかかったところで、逆走するPTL(※)のチームに会い、すれ違うたびに“Good luck”と声をかけながら進みました。PTLに出場している知り合いの日本人には会うことができませんでしたが、自分よりも長い時間をかけて、長い距離を走っているPTLの選手達に会えたことで、身震いするような不思議なパワーをもらうことができました。

(※)PTLとは、UTMBのレース種目の一つで、300km(累積標高差2万8000m)のコースを3人1チームで進むレース

 

クールマイユール(79km)に到着
 
79km地点のク―ルマイユールは、サポートが許されている2つめのエイドステーションです。サポートをしてくれている友人に早く元気な姿を見せたい、待たせたくないという気持ちでいっぱいでしたが、テーピングを貼り忘れた膝に若干の違和感が出始めていたため、ク―ルマイユールまでの下りで思っていたより時間がかかってしまいました。それでも、タイムには前半の貯金があったので、予定どおり午前6時13分にク―ルマイユールのエイドに到着しました。

 


79km地点のクールマイユールにて photo by Onodera 
 

 この後、気温が上昇することが予想されたため、ノースリーブに着替え、サポートクルーに水とジェルのフラスクを交換してもらい、補給をして再出発しました。私は、明け方に眠くなることが多いので、オルガニックという、天然カフェインを含むオーガニックエナジードリンクを飲んで、気分をシャキッとさせました。補足ですが、レース中にカフェインを使ったときの効きをよくするため、ロングレースの前には、私はいつも1カ月ほどカフェインを摂取しないようにしています。

 


エイドステーションでは、天然カフェイン入りのオルガニックを飲んでリフレッシュ photo by Onodera 

 

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート 第3話

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート 第4話

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート 第5話

【連載】丹羽 薫のUTMBレースレポート 第1

 

 

丹羽 薫(にわ・かおり) 
三重県で生まれ、岡山で育つ。高知での大学時代はヨットに明け暮れ、卒業後はオーストラリアへ。念願だった馬の調教などの仕事に携わる。帰国後は神戸に住み、六甲山で犬の散歩をしながらボルダリングやスキーに熱中。結婚して京都に引っ越してからトレイルランニングと出会い、元々山やキャンプなどのアウトドアが好きだったのもあり、すっかりはまる。じつは結構ゲーマーだったり、ピアノも習っていたが全部やめて、現在はトレイルランとスキー三昧の現在を送っている。愛犬と野山を駆けめぐるのが最高の幸せ。(写真=新名健太郎)
◆丹羽 薫さんのMtSNマイページへのリンクはこちら

 

【2016の戦績】
第2回 奥三河パワートレイル 70km 3位
第2回 Mt.Hiei INTERNATIONAL TRAIL RUN 50km  4位
UTMB 170km 8位
UTMF(短縮コース)44.8km 3位
志賀高原エクストリームトレイル 60km 優勝

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