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雪上をぶっ飛ばせ! 駆け下れ! トレランの常識をひっくり返すレース、SNOW VERTICAL DOWN 2016~NAEBA-RISING~ レポート【予選編】

2016.12.01

取材・文=宮崎英樹(MtSN編集長)

 土や岩の上でなく雪の上を走るレース、しかも登りは一切ない、下りだけのレース「SNOW VERTICAL DOWN 2017 ~NAEBA-RISING~」が、2017年3月18~19日の2日間の日程で、新潟県湯沢町の苗場スキー場で開催される。
 MtSNは、今年2016年の3月20~21日に開催された同レースの第1回大会を取材した。まずは、1日目に行なわれた「予選編」をお届けしよう。


 

 「スキー場のコースを自分の足で駆け下るレース? スキーやスノーボードで滑るんじゃなくて?」

 スキーやスノーボードの経験者に、そんなレースがあるよと話すと、みなさん異口同音に「滑るほうが楽しいでしょ!」という反応が返ってくる(私も最初はそう思った)。だが、では実際にそういうレースを体験した人がいたかといえば、これまで日本には一人もいなかった(はず)。
 そう言われれば確かに、私も、雪山登山の帰路、アイゼンのいらない(=滑落が事故につながる可能性のない)安全地帯まで下ったら、必ずアイゼンを外し、登山靴で雪面を滑走しながら下るのが楽しくて仕方なかった。こういう状況では、転ぶくらいに「攻める」のが楽しい。雪上滑走スポーツは転ぶのが前提であり(アルペンスキーの滑降やノルディックスキーのジャンプ競技は例外だが)、転ぶほどに攻めることができるから楽しいのだ。これが普通のトレイルランでは、転ぶとケガをする確率が高いので「転ばないように」走るのが当然である。

 

 で、スキー場を駆け下るレースの話に戻ろう。

 「そのレース、やってみようじゃないか」と立ち上がったのが、レードライトジャパンの笠原幹正さん、写真のお方だ。
 レードライトが本国フランスで2014年春に開催したレースが、SNOW VERTICAL DOWN。「雪上をトレランシューズで駆け下ったらどうなるのか、レースやっちゃえ!」と思いつき、実行してしまうところは冒険好きのフランス人らしい。しかしそのレースをすぐに日本に導入してしまう笠原さんもまた、別の意味で冒険家ではないだろうか。だって、参加者が集まるかどうかもまったく未知数なのだから。

 こうして2016年3月20、21日に新潟県の苗場スキー場で開催されたレースが「SNOW VERTICAL DOWN 2016~NAEBA-RISING~」。はてさていったいどんなレースかというと……。

①雪の上を足で下る(滑走器具は使用禁止)
②全長5km、標高差750m、最大斜度20°。登りは一切なし
③シューズの制限なし。スノースパイクやストックは使用可
④賞金が出るレース

 コースは苗場スキー場のゴンドラ山頂駅をスタートし、麓の苗場プリンスホテル前がゴール。コースの雪面はスキーヤーやスノーボーダーのために雪上車によって圧雪されているから、ズボズボ潜って走れない、ということはない。だが今回のレースは、スキー場の営業に迷惑がかからないよう、営業が終了した夕刻に予選が、そして翌日、まだ営業が始まっていない早朝に決勝が行なわれる。そのため、スキーやスノーボードで雪が削られたり、気温が冷え込んだりしてツルツルのアイスバーンになっている可能性もある。あるいは逆に、気温が上がればグサグサの腐れ雪になるかもしれない。

 よって、ソールのグリップ性能の高いシューズがいいのか、雪面との摩擦抵抗の少ないシューズがいいのか、あるいは滑り止めのスノースパイクを装着したほうがよいのか等々、足回りの選択によってレース結果が大きく変わる可能性もある。スキーなどの滑走競技はワックスの選択が結果に直結するが、このスノーダウンヒルレースは「ギアの選択」が重大な意味を持つ。だが、誰もこのレースに勝つための正しいノウハウなど持っていない。そこはなにしろ日本初開催の競技カテゴリーなのだから。

 「このレースに出たい」と集まってきた選手は52人。同じ週末にはOSJ新城トレイルレースなどのビッグレースもあったが、それを蹴ってこのレースに馳せ参じた選手たちである。遠くは関西からやって来た選手もいる。顔触れを見たところ、ウルトラレース系が得意な選手から、スカイランニング系・バーティカル系の選手まで実に多様である。招待選手を列挙すると、「トルデジアン」で14年・15年と2年連続5位入賞の世界的実力者・小野雅弘。砂漠マラソンで活躍するいいのわたる。スカイランニング界からは世界ランカーの星野和昭。さらには中距離系の若手実力者・反中祐介(2日目の決勝から参加)。また、雪国福島からは眞舩孝道も参加している。一般参加では、MtSNの2015年年間ランキング男子1位の細山雄一や、大学生の青木奈和子(2016年11月のMtSN月間ランク24位)、中学1年生(当時)の渡部春雅(かすが)らがエントリーしている。

 

[インスペクション]
 予選は3月20日(日)の夕方に行なわれた。スキー場の通常営業が終了し、スキーヤーやスノーボーダーがあらかた姿を消したら、トレランシューズを履いたスノーダウンヒラーの時間だ。

 まずはコースインスぺクションとして、予選出場者のうち希望者が実際にコースを走り、状態を確認する。

 まず、ゴンドラリフトに乗ってスキー場上部へと上がる。事前の説明では、コース上部のヘアピンカーブが続くセクションがアイスバーン化しており、スノーボード初心者が何人も滑落していた、とのこと。スノースパイクを持ってきていない私はちょっと怖さを感じていた(ちなみに私は取材扱いであり、正規の選手ではない)。


インスペクション。標高の高い上部は完全にガスの中

 


ヘアピンカーブが連続する中腹まで下りると視界が開けてきた

 

 実際、青氷が表面に出ている箇所もわずかにあったが、その部分を避けて通ればそれほど危険はないだろう。また、上部は雪が締まっているし、斜度もある程度あるのでスピードが出るが、下部は傾斜がゆるくなるうえに雪もグサグサになるため、一歩一歩がきつい。走っているつもりでも、なかなか前に進まないという感じだ。これは下見であって、先頭を走る代田渉さんの後ろについていくため競走ではないのだが、私はインスペクションだけでけっこう消耗してしまった。

 インスペクションが終わり、ちょっと休憩、と思ったら、「予選出場者は早くゴンドラに乗ってください」との指示が流れ、選手たちは慌ててゴンドラに乗り込む。

 最大斜度20°のアイスバーンの斜面は、「雪上車で氷を砕きます」とのアナウンスが流れた。

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