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「連載:TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.1 2016年大会ダイジェスト【前編】

2016.12.14

松田珠子=取材・文

 2年に一度の“究極の山岳レース”「トランスジャパンアルプスレース(TJAR)」。2016年大会の模様を、上位選手の動向を中心にダイジェストで紹介する。

​ 日本海をスタートし、日本アルプスの山々を縦断、太平洋に至るまでの総距離415km、累積標高差2万7000mを、自身の足のみで8日間以内に踏破するTJARが、2016年8月7日~14日に開催された。

 前回(14年)大会は、初日の台風直撃に始まり、大会期間中を通して悪天候の厳しいコンディションとなった。コース変更によりリスクの高い剱岳は回避されたものの、薬師岳直下の稜線は激しい暴風雨に見舞われ、初日に上位10選手が薬師岳山荘に一時待機する事態となった。また3日目には救助が必要となる低体温症者が出た。このレースの理念は「自己責任」「自己完結」だが、14年大会のこれらの事例を受け、16年大会では悪天候時等の大会中止・中断の基準が明確に定められたほか、環境保全と安全性確保のため「早月小屋~剱岳~一服剱」「雄山~一の越山荘」「槍ヶ岳山荘~坊主岩小屋」の3区間が走行禁止となった。また、選手の安全性をより確保するため、レース中のスイーパー(最後尾の選手の後ろを走るスタッフ)が導入された。

 16年大会は過去最多となる80名がレースにエントリーし、書類審査、実地での選考会を経て、29選手の出場が決まった。
 

<1日目、8月7日>


TJAR2016の開会式は魚津のミラージュランドにて盛大に開催された(写真=山田慎一郎)
 

 

 14年大会から、富山県魚津市のミラージュランドで盛大な開会式が行なわれるようになった。6日21時から開会式、そしてブリーフィングが行なわれ、スタート時刻が近づいていく。

 スタートを前に、ミラージュランドすぐ近くの早月川河口には、選手をはじめ、関係者や応援者ら多くの人が集まっていた。選手たちは“スタート前の儀式”日本海の水に手をつけてから、スタートゲートへ。選手の最終点呼が行なわれ、実行委員会代表の飯島浩が、気合の掛け声をかける。雰囲気が盛り上がる中、10秒前からカウントダウン。「3、2、1……」そして8月7日午前0時、歓声と拍手の中、選手たちがスタート。


午前0時、選手たちが一斉にスタート。ライトに照らされる中、無数の羽虫が舞っていた(写真=山田)
 

 

​ 最後尾でスタートゲートをくぐったのは、3連覇中の望月将悟だ。応援の声や握手にも応じながらゆったりとスタートを切る姿が、この旅の長さを物語っていた。

 スタート時の気温は27℃。湿度が高く、深夜になっても蒸し暑い。選手たちはそれぞれのペースでば登山口の馬場島(ばんばじま)をめざす。まずは馬場島までロードを約30km。スタート後、いち早くトップに立ったのは、4度目の出場で過去2度2位(08、10年)に入っており、今大会を「集大成のレースにしたい」と意気込む紺野裕一。最後尾からスタートした望月もほどなく追いつき、肩を並べて並走する。


いち早くトップに立ち並走する望月(左)と紺野(写真=山田)

 

 馬場島をトップで通過したのは望月。数分遅れて紺野が続く。その後、初出場の新藤衛、4度目の出場で14年には4位で完走している石田賢生が続く。さらに14年は初出場組の中で最上位の8位で完走、16年までの2年間も山に通い詰め実力を備えてきた朽見太朗、前回は選考会を通過しながら抽選で涙を呑んだ渡部祥、今大会唯一の選手マーシャル(選手兼スタッフ)の船橋智、3大会連続の完走をめざす松浦和弘、14年に続く完走をめざす雨宮浩樹、初出場の吉藤剛、2大会連続完走をめざす大原倫の順に通過。ロードの序盤で、一時は6位につけていた4度目の出場で悲願の初時間内完走を誓う岩崎勉は、馬場島を14番目に通過した。

 山岳区間に入ると望月が単独トップに。紺野は暑さによる脱水症状で足の攣りに見舞われペースダウン。剱岳は2番手で石田、3番手グループで紺野、朽見、新藤がカニの横ばいの渋滞を抜け、通過。



​写真上/山岳区間に入り単独トップに立った望月(写真=田上雅之)  写真下/早月尾根を進む選手たち(写真=田上)

 

 望月は立山・雄山を越え、登山者で渋滞するなか9時45分に一ノ越着。4年前の通過時間より30分ほど遅れているが、気にする様子はない。一の越山荘でコーヒーなど購入、10分ほど休憩し、再出発。日差しが強く、すでにかなりの暑さだったが「暑さはあまり気にならない。調子は悪くない」と語った。



9時45分、望月が一ノ越に到着。実行委員の越田と“グータッチ”を交わす(写真=石神悠里江)

 

 望月から約30分後、朽見、石田、紺野が一の越山荘に到着。石田は「天気が良すぎて、暑くてペースが上がらない」、紺野は「暑さが苦手。剱岳の登りから何度も足が攣っている」と、ややつらそうな表情。朽見は「練習で山に通った中でもこんなに暑かったのは1、2回くらいじゃないか」と語っていた。



一の越山荘で休憩する2番手グループの朽見(左)、紺野(右)ら。
応援に駆け付けた平井小夜子(中央)と談笑する(写真=松田珠子)

 

 5番手で一の越山荘についたのは初出場の渡部。剱岳の登りで一時は調子を崩しながら、早月小屋でラーメンを食べ「復活した」という。「ここまでは渋滞もあって心配していたけど、ここから先は渋滞もないし、楽しんでいきたい」と元気に出発した。

 望月はこの後、2年前暴風雨に見舞われた薬師岳を越え、太郎平小屋を通過。調子を崩していた紺野は巻き返し、北ノ俣岳で望月に合流。20時過ぎ、望月と紺野は黒部五郎小舎でビバークする。

 2選手から1時間半ほど遅れ、3番手グループの石田、朽見、その後、渡部も黒部五郎小舎に到着しビバーク。望月、紺野は2時間ほどのビバークで再出発。



初日19時過ぎ、薬師岳山荘を通過する選手たち。2年前は激しい
暴風雨により上位選手が一時停滞となった地点だ(写真=小関信平)

 

​ 後続の9選手(新藤、松浦、船橋、北野聡、佐幸直也、雨宮、大原、斉藤聡之、吉藤)が薬師峠でビバーク。10選手(柏木寛之、江口航平、栗原葉子、桑山史朗、米田英昭、仙波憲人、田中尚樹、村上貴洋、恵川裕行、内山雄介)がスゴ乗越小屋で仮眠をとった。

​ 竹内は五色ヶ
原を通過後、越中沢岳付近で休憩。岩崎は五色ヶ原を過ぎたあたりで、岡田泰三はその先(スゴの頭付近)でそれぞれ休んだ。
 序盤の早月尾根で高山病の症状により大きくペースダウンしていた男澤博樹は、五色ヶ原で仮眠。
​ 何度も立ち止まりながら最後尾を進んでいた玉置千春は、立山・富士ノ折立鞍部でも休憩をとった。

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