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ぶつかり合い、葛藤し…。ひたむきに走り続けるふたりの男の激アツ物語~【新刊紹介】田中正人・田中陽希著『アドベンチャーレースに生きる!』

2017.03.04

“「ゴールしたら、お前殴るわ!」
 僕はすぐに答えた。
「ゴールで殴られるくらいなら、いま殴ってください!」
「よしわかった!」
 キャプテンは即答した。僕らはバイクから降り、キャプテンは僕の胸ぐらをつかんで、左ほほを一発殴った。”

[『アドベンチャーレースに生きる!』「第一章~田中陽希 アドベンチャーレーサーとしての僕の道」より ]

 

 ひとむかし前の学園ドラマのような展開だが、そんなに昔のハナシではない。2011年2月、アウトドアの整地、南米パタゴニアで繰り広げられたアドベンチャーレース「パタゴニアン・エクスペディション・レース」のマウンテンバイクセクションでの一幕。日本から参戦した「チームイーストウインド」のメンバー間で起こったやりとりである。

 チームとしての目標だった5位入賞が確実となった、残り10km地点のできごとだった。

 

 本書の著者のひとり、「殴られた方」田中陽希は、このできごとをきっかけに自分を変えようと決意。日本百名山、日本ニ百名山を人力のみで「ひと筆書き」で踏破するという挑戦に挑み、見事に達成する。挑戦の模様がTV放映され、アウトドア業界を飛び越え話題を呼び、その愛すべきキャラクターがお茶の間にまでも広がることとなった。

 アドベンチャーレーサーとしての実力も花開き、現在はチームの次期キャプテンとして期待されている。

 


田中陽希・近影(写真/永易量行)

 

 もうひとりの著者、「殴った方」田中正人は、チームイースウインドの創設メンバーであり、キャプテンとして20年以上「世界一」という目標に挑み続けている。トレイルランナーにとっては、「初代ハセツネチャンピオン」といった方が覚えがあるかもしれないが、日本におけるアドベンチャーレースの第一人者だ。

 


田中正人・近影(写真/永易量行)

 

 山岳地帯での走力や耐久力、不屈の精神力が求められることでは、アドベンチャーレースはトレイルランニングレースと共通している。しかし、アドベンチャーレースはマウンテンバイクやカヤック、ときにはクライミングやケイビング、珍しいものでは乗馬やスキューバダイビングなどいったセクションも通過する。より総合的なアウトドアスキルが求められるのだ。トレッキングセクションにしても、道なき道を進むため、高いナビゲーション能力が求められる。

 そして男女混成のチームで競うため、個人の身体能力やスキルだけではなく「チーム力」の底上げも勝利のための必須条件となる。美しくも厳しい大自然のなかを、睡眠時間を削ってまで行動し続けるような極限の状況で、むき出しとなった個と個がぶつかり合ってしまうことも、決して珍しいことではない。

 そうだとしても、本書を読み進めていくと、とにかくふたりとも、他のメンバーとの衝突のエピソードにこと欠かないことがわかる。大学を卒業して、一般企業に就職することなくチーム入りした陽希は、リーダー正人や他のメンバーとぶつかり合い、葛藤を続けることで、成長を重ねる。一方、創設から20年、チームをけん引し続ける正人は筋金入りだ。歴代メンバーとぶつかり合いながらも、常にこれでいいのかと自問自答を重ね、リーダーとしての資質が磨かれていった。

 

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