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「TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.8 竹内雅昭(※初出場)

2017.07.18

TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.8 竹内雅昭 ナンバーカード29  DNF(7日4時間00分 白樺荘)※初出場

松田珠子=取材・文

 8月14日、大会8日目。井川オートキャンプ場の関門は4時。その時刻、竹内雅昭は、数キロ手前の県道を睡魔で蛇行しながら走っていた。
 畑薙大吊橋を渡った時点で、関門の通過は難しいだろうとわかっていた。それでも、足を止めるつもりはなかった。
 NHKの取材カメラが「プライベートカメラのように」(竹内)竹内の姿を追っていた。カメラマンが「竹内さん、4時です」と声をかけると、竹内は歩みを止めることなく「はい。ありがとうございます」と答えた。
 カメラマンの呼びかけには淡々と応じたが、その後、前方に妻や仲間たちの姿を確認すると、張りつめていた糸が緩んだ。その場面を振り返って竹内は言う。
「待ってると思わなかったんです。なんだよ、来てたのかよって……」
 歩み寄った妻に向かって「ごめん、完走できなくて……ごめん」と伝えると、人目もはばからずむせび泣いた。
 56歳で出場した夢の舞台は、リタイアに終わった。
 


早月川河口を選手たちが一斉にスタート。ビブスナンバー29が竹内(写真=山田慎一郎)

 

<さまざまなスポーツに熱中してきた>

 生まれ育ったのは富山県。亡き父は立山駅(※立山黒部アルペンルートの富山側の玄関口の駅)の駅長をしていた。山が好きだった父の影響で、小学生のときに何度か立山に連れられ、高校のときに初めて山小屋泊まりで剱岳山頂に立った。

 大学時代も山に熱中。週末は沢登りのために丹沢へ通った。夏は北アルプスの双六小屋や鏡平小屋でアルバイト、貯めたお金で冬はネパール単独トレッキングへ。東海自然歩道を43日かけて放浪したのも学生時代だ。
 社会人となり、なんとかまとまった休みがとれるとキナバル山や中国の奥地を放浪した。冬山も始めた。

 その後はパラグライダーに没頭し、指導員の資格を取得するまでになる。1990年、現在も居を構える福井県・敦賀へ異動となり、目前の海でウィンドサーフィンを始めた。ランニングを始めたのも敦賀に来てからだ。さらには苦手としていた水泳を習い始め、トライアスロンの大会にも出場。冬季はスキー、スノーボードに熱中し、正指導員資格も取得した。海外への興味も弱まることはなく、北米やヨーロッパへ滑りに出かけた。
「遊び人ですよ。好きなことばかりしてきました」と竹内。興味を持ったことにとことん取り組む。まさに、趣味を謳歌してきた人生だった。

 この数年は、ランニングとスキー、スノーボードの指導に取り組んでいる。出場するランニングの大会は地元開催のものなど年間数十レースを超える。富士登山競走にも毎年出場を続けるが、この頃は山行の頻度は少なくなっていた。

 そんな竹内だが、TJARの存在を知ったのは12年大会の模様が放映されたNHK番組がきっかけだった。かつては多くの時間を“山”に費やしてきた。現在はランニングに熱中している中、「『これだ』と。すぐに挑戦を決意しました」。
 さらには、それまで自身が持っていた山の装備とはまったく異なる選手たちの洗練された装備等に「夢を抱いた」(竹内)。
 52歳のときだった。

 当時を振り返り、竹内は次のように話す。
「この頃はマラソンではサブ3を狙っていた。昔取った杵柄である山行は、勝手知ったアルプス。TJARは『望むところだ』という気持ちがありました」
 年齢を考えると、もう少し早くその存在を知りたかった、と地団駄を踏むような思いもあったが、挑戦の意志が揺らぐことはなかった。
 一緒にNHKのTJAR特集番組を見た妻は、「危険なことをしてほしくない」の思いから当初反対したが、揺るがない熱意に、挑戦を了承した。

 参加要件を満たすため、再びアルプスなどの山に通うようになった。そして14年大会にエントリー。書類審査は通過したが、選考会の結果は不合格。本戦への出場は叶わなかった。
 不合格の要因については知らされなかったが「応急処置の判断が間違っていたのではないか」と自己分析する。
「想定していなかったタイミングで課題が出されて、あたふたして、焦っているうちに時間が過ぎて……。参加要件の理解不足です。アホだったなと……」
 落ち着いて臨めていれば、竹内にとって難しい内容ではなかっただけに、悔しさが残った。

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