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UTMB 2017 レースレポート Vol.2 UMTB女子4位 丹羽 薫 ~すべてがこのためにあった~

2017.10.17
 

2017年8月28日~9月3日にフランス・イタリア・スイスの3カ国に渡るコースで開催された「UTMB 2017」は、各国から有力選手が出場し、過去最高レベルのレースと言われた。その中でUTMB 女子4位に入賞し、日本人女子トレイルランナーとして歴史的快挙を成し遂げた丹羽 薫さん。しかし、レースに出場した丹羽さんのコンディションは万全とはいえないものだった。丹羽さんはどのようにしてUTMB 女子4位という輝かしい結果を手にしたのだろうか。丹羽さんのインタビューをお届けします。

 

取材・文=若岡 拓也

100マイルレースは闇夜と共にある。そして、永遠とも思える暗がりはランナーの心を浮かび上がらせる。弱気や不安、恐れ。ゴールをめざすには自分の弱さを受け入れ、夜明けを、そして、自分を信じて足を踏み出すしか道はない。出場すら危ぶまれたケガから、4位入賞を果たした丹羽 薫のUTMBは、まさに暗闇からの帰還だった。

 


UTMB 2017 女子4位に入賞した丹羽 薫のフィニッシュの瞬間

 

骨折は「ドラマの前触れ」

2017年は、4月に中国・浙江省で開催されたUTGK(Ultimate TsaiGuTrail Kuocang) / 100㎞で優勝、7月上旬には、Andorra Ultra Trail Vallnord(アンドラ・ウルトラトレイル・ヴァルノード)/ 170㎞で準優勝と順調な滑り出しだった。ところが、7月下旬にノルウェーで開催されたロムソ・スカイレース / 50㎞のレース中に転倒し、左手首を骨折してしまった。気丈に振る舞う丹羽だったが、さすがに骨折をした時には、「走れないかもしれない。上位を狙えないなら走る意味がない」と、UTMB出場を悲観したという。

しかし、丹羽は絶望的な状況にあっても、希望を捨てることはなかった。骨折しても帰国はせず、トロムソ・スカイレースの開催地であるノルウェーにそのまま滞在し、日本の医師にレントゲン写真を送って診断をあおいだ。そこで伝えられたのは、出場できるという一筋の光だった。とはいえ、骨折した箇所が癒えるのは、レース直前というギリギリのタイミングだ。加えて、ギプスをはめたままで挑むことになる。丹羽が厳しい状況にあることは間違いなかった。それでも、UTMBに出場することに迷いはなかったという。

「整形外科の先生に走れるって言われたときには、これは何かドラマの起こる前触れだ、ドラマティックにできるチャンスだと思った。脚さえ動けばなんとでもなるだろうし、ギプスをしたまま表彰台に立てたらかっこいいなって。最初はちょっと揺れると痛んだけど、絶対間に合うと確信していた。信頼している先生が間に合うといってくれたから。できるトレーニングをして、あとは神のみぞ知るという気持ち」。丹羽はギプスをして出場し、ベストを尽くすことを決めていた。

 


丹羽の走りを支えてくれるTeam Niwaのメンバーと

 


UTMBの直前にギプスを外すと、骨折していた左腕はやせ細り、握力が極度に低下していた

 

スタート直前にあふれた涙

覚悟を決めた丹羽は驚異的な回復をみせた。左腕に負荷のかからないコアトレーニングやマシーンを使ったメニューを中心にトレーニングを積み、UTMBの開催地に入ってからはランニングをこなせるまでになった。

「これでダメなら、他の人が上だからしょうがない」

そう言い切れるだけの準備を丹羽はしてきた。そこに至るまでには、並々ならぬ不安や苦労があったのだろう。レース当日に、その一端を垣間みるエピソードがある。

UTMBのスタート直前のウォーミングアップでのことだ。プレッシャーはなかったというが、丹羽は無意識のうちに重圧を感じていた。

「UTMBは1回経験しているので、楽しみとか、ワクワクするという気持ちのはずだったのに、レース前に大瀬和文さんに『めっちゃ緊張してるでしょ』と声をかけられて、涙が出てきた。なんの涙か分からないけど、涙がポロポロあふれて止まらなかった」と丹羽は振り返った。

前年のUTMBで8位に入賞してから、「次も入賞できるでしょ」「次は何を狙うの?」と声をかけられることが増えた。「できて当然」、「さらに上位を」と、周囲からの期待は膨らむばかりだった。一方で骨折してからは、「もう日本に帰ってくるんでしょ」と諦めを口にする人もいた。小さな体で多くの人々の期待を一身に受け止めつつ、ケガという逆境と戦いながら、やっとUTMBのスタートラインにたどり着いたのだ。丹羽が流した一筋の涙は、スタートにたどり着くまでの努力と苦しみを物語っていた。

 


涙の後は笑顔を取り戻しスタートを待つだけ。ブラジルのトップランナー Maciel Fernandaと

 

 

次ページでは、丹羽さんのレース展開をお伝えします。

 

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