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「TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.13 江口航平(※出場2回目)

2017.12.28

TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.13 江口航平 ナンバーカード4  16位(6日間23時間32分)※出場2回

松田珠子=取材・文

 大会7日目、もう30分ほどで日付が変わろうとする深夜にも関わらず、ゴール地点の大浜海岸では多くの応援者が待っていた。江口航平は、駆け付けてくれた仲間たちに囲まれながら、初めての大浜海岸の砂浜に足を踏み入れた。
 目標としていたのは、翌日の明るい時間帯でのゴールだった。南アルプス・三伏峠でのリタイアとなった2年前の苦い記憶から、睡眠時間をしっかり確保して進むという確実なレース運びに徹した。それでも想定よりかなり早い時間での完走。天候に恵まれたとはいえ、この2年での成長を示した。
 フィニッシュラインを踏むと、2年分の思いが込み上げた。
 ゴール後、実行委員代表の飯島浩にマイクを向けられ、次のように語った。
「この2年、なんで三伏峠であきらめてしまったのか、なんでもう少し頑張れなかったのか、ずっと心残りでした。でも今回は、最後まで出し切ることができた。7日なんて切れないと思っていたけど、出来過ぎたレース。脚も痛かったが、いろんな方が応援してくれたおかげで最後まで走りきれました」
 そしてTJAR戦士きっての恐妻家は「嫁に精神面を鍛えてもらった」とユーモアを交えながら妻への感謝、さらには「山を理解した上で『気をつけて行ってこい』と背中を押してくれた」と、両親への感謝の気持ちを口にした。
 


前回たどり着けなかった大浜海岸にて、念願のゴール!(写真=宮崎英樹/MtSN)
 

<初挑戦の14年大会>

 京都府出身、在住の江口は大学ワンダーフォーゲル部出身だ。大学4回生時には、学生メンバーでネパールのアイランド・ピーク(6189m)に登った経験もある。TJARの存在はまだ学生だった04年大会後、雑誌『山と溪谷の記事で知ったが、挑戦してみたいと思ったのは、12年大会のNHK放映を見たことがきっかけだった。消防士になり数年、結婚し、長女が生まれたばかりだった。仕事と家族を優先し、山に行ける頻度は決して多くなかったが、限られた時間のなかでできる限りのことをした。14年、それまでの山の経験が生かされ選考会を通過、運も味方につけ抽選会もクリアした。

 悪天候に見舞われた初出場の14年大会、江口は初日からつらさを感じていた。それでも完走圏内で進んでいたが、南アルプスの熊の平小屋を過ぎたあたりで異変が起きた。記憶が途切れ途切れになり、幻覚のようなものが現われた。頭が混乱しているうち、いつの間にか登山道を逆走していた。
 当時、江口は次のように振り返っている。
 「今まで幻聴、幻覚も経験したことがなかった。思考回路が壊れてしまった自分に恐怖感を覚えました。(原因は)寝不足なのかなと……」
 この後、後ろから追いついてきた阿部岳史と三伏峠まで進むも、迷った末にリタイアを決めた。江口が決めていたリタイアの判断基準は、「(リタイアに)迷い、『TJARだから続行しよう』と思ったとき」だった。「この先、安全に行けるのかといわれたら、自信がなかった」

 



14年大会レース初日、立山室堂へ向かう江口(写真=松田珠子/MtSN)


 14年は「出場するのが目標になっていて、完走のイメージが具体的に描けていなかった」と江口は振り返る。このままでは終われない。すぐに2年後の再挑戦を誓った。それまで1泊以上の山行は控えていたが、翌15年夏には、2泊3日の行程での山行を数回敢行。北・南アルプスのコースを試走した。

「1日だけじゃなくて、2日、3日と長時間動き続ける山行ができたのは大きい。本番に近いかたちで練習できて、20数時間、コースタイムを落とさずに行けるようになったのは自信にもつながりました」
 家族の理解も大きかった。14年大会前には次女が生まれていたが、妻は江口の再挑戦を全面的にサポートしてくれるようになった。
「僕は僕でめざしていたけど、嫁は嫁で、『もっと練習させてあげたら(ゴールに)行けたんちゃうか』と思ってくれたみたいで……。食事も栄養面とかいろいろ考えてくれて、僕もそれに応えなあかん、という気持ちになりましたね」

 16年春には目標としていた救急救命士の国家試験にも合格。公私ともに充実の2年を経て、2度目のTJARに挑んだ。

 

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