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【連載】「RUNNERS’TALK」 ウルトラトレイルレースの魅力とは? 第2回  文=野間陽子

2014.10.19

ウルトラトレイルレースの魅力を紹介する第2回目。今回はレースの事前準備についてお話しします。

 

トレイルレースは旅

私が今まで参加したトレイルレースには、距離が6㎞の短いレースから、170㎞のウルトラトレイルレースまで色々ありますが、どのレースを思い返しても、大小さまざまな旅をしたような感覚になります。私が生活している場所は東京の都心部なので、いちばん近い高尾山に行くのにも1時間半ほどかかります。私にとって、山に出かけて、山の中で過ごすひとときは、日常生活から抜け出す時間でもあるので、旅をしたような感覚になるのかもしれません。
旅は素敵です。まず、旅に出る準備から楽しい。出発してから帰ってくるまでの時間の過ごし方を思い描き、いかに快適で充実した旅になるかを考えながら準備すると、わくわくします。

 

楽しむための事前準備

トレイルレースも旅と同様に、楽しむためには事前準備は欠かせません。
開催される場所へのアクセス、開催される時期の天気や気温、コースの特徴など、レースによってそれぞれ条件が異なります。
例えば、フランスのシャモニーで開催されるウルトラトレイルレース「UTMB」ですが、シャモニーへ行くには、スイスのジュネーブから、もしくはイタリアのミラノからアプローチします。どの航空会社を利用して、どの都市を経由して、どうやって空港から目的地へアクセスするかを考える。シャモニーがあるサボア地方の天候や、例年のコースマップなどをインターネットで情報収集する。ここからすでに旅の楽しみは始まっています。

トレイルレースに必要な装備品の準備も大切です。天気や気温に対応するウェア、距離と路面の形状に合うシューズ、夜間行動するに十分な性能を持つライト、長時間背負い続けられる快適なザック等、数多くあるギアの中から自分に合ったものを探します。それは、快適にレースを運ぶための工夫です。ウルトラトレイルレースの場合、コースの途中に1〜2か所、デポジットバッグを置けることが多いので、替えのウェアとシューズ、予備のライト、追加したい補給食やサプリメント、薬やファーストエイドキット等を準備します。


Andorra Ultratrail 2014でのウェアとシューズ。長距離レースにストックは必携装備。日差しが強いので日焼け止めはこまめに


レース展開のシミュレーションをする

ウルトラトレイルレースには、その距離と累積標高差と平均標高によりコースのタイプがいろいろありますが、トップランナーでも20時間前後、最終ランナーにいたっては64時間走り続けるレースです。スタート時刻も朝だったり、午後だったり、深夜だったりします。レースにおいて、おおよそ何時にどの地点まで進んでいるかを把握することは、難しいですがとても重要です。どの地点で日が暮れ、どの区間が夜で、どの地点で夜が明けるのか。仮眠施設のあるエイドに入れるのは何時頃なのか。過去のレースリザルトを追ってみたり、他のレースと比較したりして、ざっとシミュレーションをします。

 

Andorra Ultratrail 2014の場合

私が2014年7月に走ったウルトラトレイルレース「Andorra Ultratrail 2014」は、フランスとスペインに挟まれたピレネー山中にあるミニ国家、アンドラ公国で開催されるウルトラトレイルレース。スタート時刻は朝7時。この時期のアンドラは日が長く、21時過ぎまで明るいので、日没までの活動時間はたっぷりあります。1日目の元気なうちにたくさん進んでおきたい、と思いながら、コースマップを眺めてシミュレーションをします。最初の関門は70㎞地点で、翌日の朝8時。関門時刻より早く到着したら、休憩できるゆとりができます。70㎞の距離を25時間でと考えると厳しさを感じませんが、コースマップを見ると、70㎞地点までの間に、標高2500mを超えるピークが8峰あります。標高2500mを超えた北斜面には雪渓が残っていて、7月とはいえ、気温は氷点下まで下がることもあるピレネー山中の鋭鋒が連なっているのです。その頂上直下にある雪渓が夜の間に凍てつくことを考えると、明るいうちに通過したい。そのためにはどうすればいいのか。また、それができなかった時のために、何を用意したらいいのか。
シミュレーションをすることで、必要な装備も明確になり、レース展開を時間軸の中で考えられるので、本番ではコースタイムの経過をシミュレーションとの比較でとらえることができ、レースペースを組立てやすくなります。


Andorra Ultratrailの情景。標高2800mの山頂を登りきった先には、深い谷へ下る長いトレイルが続きます。山頂付近の稜線で吹く風は、ひんやりとして涼しい


雪渓を渡るトレイルも数ヵ所あります。アイゼンは不要ですが、慎重に進まないと眼下の凍った池の際まで滑り落ちる危険あり


Andorra Ultratrail は6月か7月の満月が昇る週末に開催されます。どこまでも続くピレネー山脈を夕焼け色に染めて昇る満月は美しい


エイドステーションでの一品。コーンとツナと穀物を混ぜたもの。見かけを覆す美味しさでした!

 

UTMF2014の場合

2014年4月に走った「UTMF2014」は、日本を代表するウルトラトレイルレースで、富士山をぐるり一周します。私にとって今回のUTMFは3度目の挑戦だったので、今回の目標は「自己ベストで完走すること」。過去2回のレース経験から、目標達成にはエイドステーションでの休憩時間をできるだけ短くすることが必要であると思いました。
スタート時刻は午後3時。スタート後3時間半で日没を迎えます。ライトを装着するタイミングはどこか、エイドステーションで補給しながら一晩目の夜明けまでにどこまで進めるか、眠くなる夜明け前後はどのあたりにいるか。次のエイドステーションまでの距離と時間を、コースマップを見てルートや地形と照らし合わせながら、レース展開をシミュレーションします。

実際にウルトラトレイルレースが始まると、そこにはシミュレーション通りには進まない困難に遭遇します。次回はそのさまざまな困難にまつわる、補給とペース配分についてお話しします。

(プロフィール)

野間陽子(のま・ようこ)
1965年愛媛県松山市生まれ。東京都千代田区在住。マラソン歴11年、トレイルランニング歴7年。「UTMB 2013」44時間25分、「第21回日本山岳耐久レース」11時間09分、「UTMF 2014」35時間50分、「Andorra Ultratrail 2014」55時間21分。次のウルトラトレイルレースは10月にアフリカのレユニオン島で行われる「グランレイド・レユニオン」。

【連載バックナンバー】

第1回 なぜ私はウルトラトレイルレースを走るのか

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