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【連載】国内外のトレイルを駆けめぐる、大瀬和文の “GOOD LUCK!" Vol.4 TDSでトップ10入りをめざして(中編)

2018.01.17

ウルトラトレイルを得意とするトレイルランナー大瀬和文さん。
大瀬さんの連載第4弾は、2017年のメインレースのひとつに設定した「TDS」(119㎞ / D+7300m)の参戦記。トップ10入りをめざしたTDSのレースがいよいよ始まります。大瀬さんはどんな走りを見せたのでしょうか?

 


 

文=大瀬和文

朝3時に起床。ホテルがあるフランスのChamonix(シャモニー)から、TDSののスタート地点であるイタリアのCourmayeur(クールマイユール)までは、モンブラン山群を挟んで対になっていて、山を巻いて行くと相当時間がかかるが、今はモンブラントンネルを利用することで 1時間ぐらいで到着できる。

 

 

4時過ぎにシャモニーのホテルを出発し、5時にはクールマイュールに到着。
スタートラインには、早朝にも関わらず、すでに多くの選手、応援者、スタッフなどで街は賑わいを見せていた。


TDSのスターゲート

 

スタート前に、TDSに出場する日本人選手たちと健闘を誓い合った。私はエリートエリアからのスタートだったので、スタート30分前に列に並んだ。まだ日の出前で暗いのだが、スタート前のクールマイユールの街は徐々に熱く盛り上がってきていた。


スタートラインに着くと、海外のレースで出会った仲間達が声をかけてくれた。香港・スペイン・オーストラリア・フランスと、各地で出会った選手達は私の友達だ。彼らとは国籍は違うが、SNSで情報をシェアしているので、久しぶりに会ったという感じはしなかった。しかし、実際に会ってお互いを励まし合えるのはSNSとは比べものにならないくらい楽しいものだ。国内外問わず、同じコースを走る選手達と同じ時間、同じトレイルを共有できることは本当に幸せだと感じる。

 


TDSのスタートラインから見た景色

 

気温は思ったより寒くなかった。走るには絶好のコンディション。スタート5分前になり、TDSのメインテーマソングである「彼こそが海賊(※映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマソング)」が流れ始め、会場の盛り上がりは最高潮に達した。

 


TDSのスタートの様子。画像をクリックすると、動画が流れます


TDSのような大きなレースのスタート前は、目を閉じて、このレースに向けて自分がやって来たことを思い浮かべる。そうすることで、自分自身が積み重ねてきたことを自信に変える。「このレースで戦える」という強い気持ちを持つ。瞑想で気持ちが整ったと同時に、スタートのカウントダウンが始まった。
「もうここまで来たら、あとは楽しむしかない」。そう心に決めた時、スタートの号砲が鳴った。

 

スタートしてすぐのコースは、下り基調のロードだったので、レースペースが速かった。しかし、私は自分が良いと思うペースを保ち、遅過ぎず、速過ぎずのペースで進むようにした。まだ先は長いのだ。

スタートしてすぐに約1200mUPの急登に入る。そこから、UTMBでも通過する景色の美しいLac Combal(コンバル湖)へ向かう。そこからさらに高度を上げ、標高約2600mのCol chavannes(ジャバンヌ峠)を越えて高度を下げて再び大きな山を越えいくコースだ。

 

 

最初の登りで周りが息を切らす中、私はあまり息を切らすことなく余裕をもって走れた。ポールを使うと楽になるのだが、スピードが落ち、すぐに周りに抜かれてしまう。やはりポールは普段からしっかりトレーニングをして経験を積んでおかないと、このスピードレースでは重荷になってしまうと思い、そこからは、ポールを使わずに手で腿を押して進むパワーウォークに切り替えた。

 


ポールを使うのをやめ、パワーウォークに切り替えて進む

 

最初の山場、ジャバンヌ峠とCol Du petit saint bernard(プチ・サン・ベルナール峠)は、余裕を持って通過し、TDSでは一番標高の低いエイド、51㎞地点のBourg Saint Maurice(ブール・サン・モーリス)に到着した。

 


51㎞地点のブール・サン・モーリスに到着

 

ここから気温が上がりはじめ、暑かったので、サポートに準備してもらったタンクトップのユニフォームに着替えて、日除けのハットを被り、十分な暑さ対策をして出発した。エイドでは自分が欲しいものを補給し、着替えもできたので、「順調だ!」と思い、安心してエイドを出発した。しかし、この時私は大きなミスを犯してしまったことにまだ気がついていなかった。

エイドを出て、しばらく街の中を走り、坂道を登り、気づけば舗装路から林道へと道は変わっていた。標高が低いこともあるが、「暑いなあ」と思っていた。エイドで補給した水の減りが早かった。汗もだいぶかいている。しかし、この暑さは想定どおりで、私はすでに前のエイドで暑さ対策をとっていた。携帯する水の量をこれまでの1リットルから1.5リットルに増やしていたのだ。
でも、「あれ? なんか変だぞ・・・」

さっきのエイドでしっかり補給し、着替えもして、満足して気が緩んでしまったのかもしれない。追加で持とうとしていた500mlの水が入ったボトルを忘れてしまっていたのだ!
「ヤバイ、次のエイドまで登りはまだ半分以上も残っているのに、水はもう半分以下になっている・・・」

時間はちょうど正午。日差しを遮るものもなく、気温はどんどん上がってきた。TDSは例年よりも暑い中でのレースになってしまった。

「暑い・・・。もう水がない・・・」
標高2000mの山を越えてから、さらに500m登るのだが、暑さで少し朦朧としてきた。脱水だろうか。手足も痺れて脚に力が入りにくくなってきた。吐き気もする。

「ヤバイ。どうするんだ、俺」

 

大瀬さんのTDS参戦記は、【連載】国内外のトレイルを駆けめぐる、大瀬和文の “GOOD LUCK!" Vol.5 TDSでトップ10入りをめざして(後編)に続く。

 

大瀬和文【おおせ・かずふみ】
(写真=山田慎一郎)

中学で陸上を始め、箱根駅伝をめざして東海大学へ。社会人になってから、2013年、雑誌の企画をきっかけにトレイルランを始める。現在はSALOMONアスリートとして、国内外のトレイルレースに出場し、上位入賞を果たしている。

 

【2017年主な戦績】
「Trans Lantau 」50K 優勝(香港)
「The 9 Dragons Ultra」 50マイル 3位 (香港)
「Penyagolosa Trails」 115K 8位(スペイン)
「ULTRA TRAIL AUSTRALIA」 100K 9位(オーストラリア)

 

【連載】国内外のトレイルを駆けめぐる、大瀬和文の “GOOD LUCK!" Vol.1 

【連載】国内外のトレイルを駆けめぐる、大瀬和文の “GOOD LUCK!" Vol.2 海外レースの楽しみ方

■【連載】国内外のトレイルを駆けめぐる、大瀬和文の “GOOD LUCK!" Vol.3 TDSでトップ10入りをめざして(前編)

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