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「TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.17 岩崎勉

2018.03.25

「TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.17  岩崎勉  ナンバーカード26  21位(7日間17時間48分) ※4回目の出場

松田珠子=取材・文

 8日目の夕方、まだ日は明るい時間帯だった。岩崎勉がゴール地点の大浜海岸、砂浜に続く堤防に上がると、視線の先に、砂浜に大きく書かれた「イワサキ」の文字が目に入った。次の瞬間、「羽が生えたように」身体が軽くなり、足の痛み、疲労――すべてが身体の中から消え去った気がしたのだという。初めて味わう不思議な感覚に包まれながら、岩崎は笑顔で仲間たちが手でつくったアーチをくぐり、両手を挙げてゴールに駆け込んだ。



ゴールでは「イワサキ」コールが沸き起こった(写真=松田珠子)

 

 悲願の完走だった。初出場は2006年。選考で落選した年、エントリーしなかった年もあるが、実に10年目の挑戦だ。ゴールのインタビューでは、実行委員代表の飯島から「(時間内完走まで)長かったですね。ずっと(TJARに)いる気がする」と声をかけられた。

 飯島から、完走の要因は? と話を振られると、「過去の失敗を生かした」と岩崎は答え、続けて「一つは、計画的に……」――そこまで話すと、聞いていた応援者たちから笑いが起きた。無理もないだろう。岩崎の関門到着時間を振り返ると、市野瀬には制限時間の30分前、三伏峠は関門の1時間前、最終関門の井川オートキャンプ場は制限時間の20分前。いずれも、客観的には“ギリギリ”だった。だが、本人としては、完走に向け冷静なレース運びに徹した結果だった。

 あらためて、飯島から挨拶を促され、岩崎は晴れやかな表情で語った。
「5回目にしてようやくゴールすることができました。これまであたたかく見守っていただき、ありがとうございました」

 

<TJARのルートを3度踏破>

 06年から、10年間にわたるTJAR(隔年で開催)への挑戦。本戦で時間内完走はしていないとはいえ、岩崎はこれまでに3度、TJARの全ルートを踏破している。12年大会は、畑薙第一ダムでタイムオーバーとなった後もロードを走り続け、8日間23時間23分で大浜海岸に着いた。翌13年には単独でTJARのルートに挑み、8日間以内は達成できなかったものの踏破。15年夏には有志でTJARのルートに挑み、8日6時間18分で、3度目の踏破を果たした。



15年夏、有志メンバーでTJARのルートに挑み、踏破した(写真提供=岩崎)

 

 岩崎は次のように語る。
「14年大会は、時間内完走できると思ったし、するつもりでしたが、作戦ミスというか、自分に足りないところがあって完走できなかった。15年は、8日を数時間オーバーしたけど、その数時間は、翌年の本戦に向けて、街中のお店やビバークポイントの確認に時間を要したところもあって、時間を短縮することには重きを置いていなかったんです。15年にやったことで、時間内完走の手ごたえが掴めた」

 16年大会に向けては、14年大会で完走できなかったため、初挑戦の選手と同じく、書類選考を経て選考会に挑むことになる。選考会当日は悪天候だった。

「雨と風。気温も低かった。選考会でいちばん危機感を持った場面が一つあって、両俣小屋で露営技術のチェックを受けるんですけど、ストックシェルターの設営時間が、事前アナウンスと異なり半分になると直前に知らされた。ミスが許されなくなる。順番待ちで日も落ちてきて、手もかじかんできた。これは気合いを入れないと、時間が危ないなと思いました」

 結果的にうまくいき、選考を無事通過。抽選もなくなったことで、5度目の出場が決まった。
「抽選も覚悟していたし、運を天に任せるしかないなと。でも大丈夫だろう、と自分に思い込ませていました。抽選がなくなってほっとしました」
 4度目の本戦出場が決まった。

 5度目の挑戦となる16年大会、岩崎は、ひそかにある覚悟を持って臨んでいた。
「実は、今回完走できなかったら、TJARから卒業しようと思っていました」
 16年のあたまに話を訊いたとき、岩崎はTJARにはずっと挑戦し続けたい、と語っていた。心境が変化した理由は――。
「10年挑戦を続けていますけど、初出場で完走している人も多い中で、不甲斐ないなと。(12、13、15年と)3度コースを踏破しているし、完走できないのはおかしいんじゃないか、と自分自身でも思っていた。これで16年も完走できなければ、自分はTJARに挑戦する資格がないんじゃないかと……」
「自分に檄をとばす意味もあった」と岩崎。自分にプレッシャーをかけ、奮い立たせていた。


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