MtSN

登録

ますます注目の山岳スキー競技(SKIMO)日本選手権レポート。男子は小川壮太が制覇

2018.05.17

文=横尾絢子 写真=杉村 航

近年、トレイルランナーの間でも人気が高まっている「山岳スキー競技(SKIMO)」。日本では春を中心にレースが開催され、年々参加者も増えている。MtSNでも過去に何度か紹介しているので、気になっているトレイルランナーも多いのではないだろうか。

SKIMOは雪山の決められたコースをスキーで登り、滑ってタイムを競うスポーツ。ほとんどのレースがスキー場内で開催されるなか、アジアでも唯一、バックカントリー(=スキー場の管理外となっている自然の雪山であるエリア)で行なわれるのが「日本選手権大会」だ。2018年4月15日に開催されたレースの模様を紹介しよう。

日本選手権大会の舞台は、長野・栂池高原スキー場。毎年、栂池高原スキー場上部から天狗原にかけての斜面を使って行なわれる。カテゴリーは「国際規格競技」「ショート」「ビギナー」の3つ。「国際規格(男子)」は距離約14㎞、標高差約1400mで、「国際規格(女子)」と「ショート(男子)」は距離約11㎞、標高差1000mのコースだ。

また、去年からは、競技を体験してみたい人向けの「ビギナー」コースが設けられ、初めて競技に参加する人にとってハードルが低くなった。

日本ではまだまだマイナースポーツであるSKIMOは、日本選手権大会といっても予選等もなく、申し込めば誰でも出場可能だ。もちろん、国際規格に準じた装備規定などはあり、出場選手は必携装備をそろえなくてはならないが、装備によってはレンタル品も用意されている。


レースが開催された栂池高原スキー場の上部。この日は雲が多く、
景色はあまり楽しめなかったが、背後には雄大な白馬の山々がそびえている


今年は、レース前日から当日にかけて低気圧が通過し、悪天となった。前日は受付とブリーフィングが行なわれたが、ここですでにコースが短縮されることが発表され、コースはレース当日に再度発表されることが申し渡された。ブリーフィングが開催される頃から雨が降り始め、夜には土砂降りとなった。

レース当日の朝、天気は回復に向かってはいたが、集合の時点では冷たい小雨が降っていた。低体温症などの危険から、主催者からはさらなるコースの短縮が発表された。

選手はゴンドラに乗り込み、スキー場上部へ。小雨が残るなか、いよいよレーススタート。水分をたっぷり含んだ湿った雪面は、シール(登行時にスキーの滑走面に貼る滑り止め)が効きづらく、登りで苦労している選手も多数見受けられた。

なかには完全にシールがスキーから剥がれてしまった選手もいた。山岳スキーというと、登りは体力、滑りは技術、と思われる部分も多いが、実は登りこそテクニックが要求され、少しの工夫や体の使い方の違いで、体力の消耗が大きく変わってくる。

トップ選手はもちろん体力も優れているのだが、それに加えて足の運び方が上手だったり、道具に対する工夫を加えたりしている。この日の雪質を考え、シールの予備を持参し、途中で乾いたシールに取り換える選手もいた。

 

優勝した小川壮太選手(写真上)と、星野緑選手(写真下)。
トップ選手は登り方が上手く、トランジットでの手際も鮮やかだ

 

滑走パートも、ゲレンデのように圧雪をしていないバックカントリーエリアだ。春は、気温の上昇につれて雪が湿り、斜面も凹凸のある難しいコンディションとなる。不規則な荒れた斜面を滑る滑走技術と体力がなければ、途中で転倒し、後れをとってしまうこともある。


春の雪山は、スキーが滑りにくかったり、雪面が荒れていたりと滑走も難しい

 

レースでの見どころの一つが、トランジットエリア(登りから滑走パートへ、または滑走から登りパートへ変わる場所)だ。ここでのシールの付け外しの速さによって、順位が入れ替わることも多い。競技ではスキー板をはいたままシールを外すのが普通だが、トップ選手はシールを外してブーツを滑走モードにするのに30秒もかからない。

レース後半になると、雲が次第に少なくなり、青空が広がってきた。一転して春の陽気となり、斜面を登っていると暑いくらい。コース後半は斜度の緩い林道パートで、ザクザクになった春雪ではスキーが滑らず、なかなか前に進まない。選手はみなクロスカントリースキーのようにストックで精いっぱい漕いでスケーティングしながら、ゴールへ飛び込んでいった。


混戦状態のトランジットエリア。シールの付け外しの速さが順位に大きく影響する

 

SKIMOは体力だけでなく、スキーでの登行技術や滑走技術を含む、雪山での総合能力が要求されるスポーツだ。高い心肺能力やバランス力が求められる点は、トレイルランと共通している。ただ、それだけがトレイルランナーに注目される理由ではない。

スキーで速く登り、滑るには、変化に富む雪山の状況に対応できる知識と経験が必要だ。地形や天候、雪質を読み解き、道具の準備をしてこそ、自分のパフォーマンスを発揮できる。また、レースとはいえ、山岳地帯で開催されるため、最低限の安全確保は選手自身で行なうことも必要となる。こういったノウハウは、同じ山を舞台とするトレイルランニングにも生かせるものだ。


せっかくなら冬の山にも親しんでみよう(もちろん安全第一で)。その経験は夏山での行動にも生きてくるはずだ

 

SKIMOはアルペンスキー等に比べると歴史は浅いものの、世界的に見ると、その人気は年々高まりつつある。ヨーロッパではスノーシーズンには毎週末、大小のレースが開催されている。また、22年の北京オリンピックの正式種目候補にもなったことで、アジアでもにわかに盛り上がりを見せており、韓国と中国ではナショナルチームが組まれ、選手強化に乗り出している。

いっぽう日本では、競技としての取り組みや環境という面ではアジア諸国から少し遅れをとっている。世界でも有数の良質な雪が降る国であり、豊かなフィールドをもつ日本。今後、もっと愛好者が増え、アジアにおける山岳スキー競技の牽引役になることを期待したい。


★レース結果

男子国際規格での優勝は、トレイルランニングでもプロとして活躍する小川壮太さん。準優勝は小寺教夫さん、3位が國吉正紀さんだった。女子国際規格は、やはりトレイルランで活躍する星野緑さんが優勝を飾り、渡邉ゆかりさんが準優勝、3位が加藤倫子さんとなった。

■詳細なレース結果は、日本山岳・スポーツクライミング協会のサイトに掲載
 ⇒リンク
■山岳スキー競技の情報サイト「SKIMO JAPAN」
 ⇒リンク

 


中央が、男子国際規格カテゴリーで優勝した小川壮太さん。左が準優勝の小寺教夫さん、右が3位の國吉紀さん

 

■優勝者インタビュー 小川壮太選手

「最近はSKIMOも強い選手が多く参加してきているので、簡単には勝てなくなっています。また、日本選手権は春特有の難しいコンディションであるうえ、標高の高い場所で開催されるので、滑りの練習をしっかりしておかないと最後まで足がもちません。今年はそういう部分を意識して、だいぶ練習を積んできました。今回、コースが短縮となったことで、体力のある若いユースの選手が脅威でしたが、自分の練習してきたことをしっかり発揮しようと思って挑みました。やってきたことを出し切れて優勝でき、満足しています」

 


女子国際規格カテゴリー入賞者。中央が星野緑さん、左が準優勝の渡邉ゆかりさん、右が3位の加藤倫子さん

 

■優勝者インタビュー 星野緑選手

「普段は忙しくて、朝1時間程度しかトレーニングの時間がとれないのですが、急斜面を登ったり滑ったりする練習を集中的に行なうことで技術や体力を磨いてきました。あと私はレースでも意気込んだり、緊張したりしないタイプなんです(笑)。レースは達成感がありますが、個人的にはのんびりとツアーに行くほうが好きなんですよね。優勝したとはいっても、私はSKIMOを始めてまだ3年目ですし、まだまだ学ぶことのほうが多いです。特にシールの付け外しやキックターンなどの技術面で課題を感じていて、そこを改善することでもっと上に行けると思っています」

最新ニュース

トレイルレースとロード練習。履き分けベストチョイス
ロード練習もトレイルも、足に合うシューズで統一したい。ランナーと同じ目線のブルックスの2足を履き分けてみてはいかがだろうか?
水分に加え、塩分+カリウムを補給しよう
モニタプレゼントあり! 酷暑の夏を乗り切るには水分だけではNG。「塩熱飴」でナトリウム、カリウム、マグネシウムなど電解質を補給し、熱中症対策を!
究極のオールラウンドシューズ「Bajada」
2012年のデビュー以来、数々のレースでウィナーの足元を支えてきたモントレイルの「バハダ」のポテンシャルに迫る。
過去の記事を見る
MtSNが過去に掲載した注目の特集・連載記事のアーカイブ。ニュース記事のインデックスとしてご利用ください。
トレイルランPRニュース
イチ押しの大会や、最新のギアやサプリなどの注目情報はこちら!