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連載「マウンテンランナー星野由香理の日光発、世界行き」 Vol.2 〜Ultra Skymarathon Madeira 2018レースレポート〜

2018.08.18

日光を拠点に、1年を通して山を駆け巡るマウンテンランナー星野由香理さん。

今年は彼女にとって大きなチャレンジの年。スカイランニングのワールドシリーズに出場するため、6月から海外のスカイランニングレースを5戦、転戦する。目標は2018年ワールドシリーズの年間ランキングで上位に入ること。

体育大学出身で、フィジカルトレーナーである由香理さんにとって、スポーツは特別な意味を持つ。競技をすることで自分自身を高めること、また、自分が競技で活躍することで、国内におけるマウンテンランニングの普及につなげていきたいと思っている。

連載第2回目は、2018年6月2日にポルトガルで開催された「Ultra Skymarathon Madeira」(以下、USM)のレースレポート。写真を見てもわかるとおり、由香理さんはサポートなしで、たった一人で世界のレースで戦っている。

2年ぶり2回目の出場となるUSMではどんな走りをしたのでしょうか?

 


 

写真・文=星野由香理

マデイラ島について
スカイランナーワールドシリーズは「SKY CLASICC」と「EXTRA」の2つのカテゴリーがあり、私は50㎞以上のウルトラのカテゴリーであるEXTRAに参戦し、年間ランキングの上位入りをめざしています。

その中のひとつ「Ultra Skymarathon Madeira(USM)」に出場してきました。2018年に5戦出場するシリーズ戦の第1戦です。

「大西洋の真珠」と称されるポルトガルのマデイラ島。エメラルドグリーンの美しい海に囲まれたその島には、1862mを最高峰とする広大な山域が広がっていて、その山肌や深い渓谷には白とオレンジを基調とした家が立ち並び、街には彩りどりの花が咲き乱れています。

 


マデイラ島は日本の奄美諸島とほぼ同じ大きさで、年間の平均気温は20℃前後という温暖な気候

 

今回、マデイラ島へはエミレーツ航空とポルトガルの国内線(TAP)を利用しました。成田から出発し、ドバイで一度トランジットをし、ポルトガルの首都リスボンへ。そこから国内線でマデイラ島へ移動します。成田からマデイラ島に到着までは合計で29時間もかかりました。

マデイラ島はリゾート地であり観光客も多いので、行きにくい場所ではありませんが、アジアから訪れる人は多くはないようで、6日間の滞在でアジア人を見たのは2〜3人程度でした。

USMが開催されるのは島の北東にあるSantana(サンタナ)という町で、マデイラ島の中心部のFuncial(フンシャル)からは車で1時間以上かかります。

私は島での移動はバスを利用しました。マデイラ島にはバスの路線がたくさんあり、中心部はもちろん、中心部から郊外へもバスを使って行くことができます。しかし、街の中も平坦なところがほとんどないほど坂が多いマデイラ島。急坂が多く、急カーブも多い。そして、運転が荒いポルトガル人! バスもまるでジェットコースターのようでした! 急坂も急カーブもおかまいなしに突っ込み、急ブレーキも日常茶飯事。私は一回自分の荷物がバスの運転席まで吹っ飛びました(笑)。


USMの会場に到着して、受付終了

 

弱気になる自分と向き合う
USMのコースは前半と後半で大きく様相が変わります。そして、私自身も、前半と後半ではレース内容が全く違っていました。

まず前半のコースは、島の最高峰である1862mのPico RUIVO(ピコ・ルイボ山)へと登る山岳コース。かなりテクニカルな岩場などもあり、マデイラの急峻な峰を越えていきます。

 

 

スタート時刻の朝6時はまだ真っ暗ですが、走り始めると、ちょうど森を抜けたあたりで空が明るくなってきて、美しい朝日と雲海を見ることができました。

 


朝6時、まだ暗い中でのスタート

 

しかし、この日は明け方までは雨が降り続き、地面ははぬかるんで滑りやすくなっていました。
下りはさらにテクニカルになり、より技術が必要なコースでした。まだまだこういう路面に慣れていないため、濡れてボコボコした一枚岩の上で足を滑らせお尻を打ちつけたまま滑り落ちる、なんてことを2回ぐらいやらかして、かなり痛かった。でも、なんとかその後も走り出すことができました。

最高峰のピコ・ルイボ山に登ると、その後は多少の登り下りを繰り返しながらも、一気に海抜0mまで下ります。このレース前半では、他の女子選手たちの速さに圧倒されていました。

事前のレースプレビューで、今回のUSMにはかなりのトップアスリートが揃っていること知っていました。
私はそんな中でもトップ10に入ることを目標にしていましたが、序盤からとにかく女子選手にどんどん抜かされて、
「自分はこんなに遅いのか?」
「ワールドシリーズでトップ選手たちと戦える力は私になかったんだ」
と、弱気なことばかりを考えてしまっていました。
そんなネガティブな気持ちでいると、体の動きにも影響が出ることは分かっていました。でも、この時はそんな気持ちを振り払うことができずにいました。

 


他の女子選手の速さに焦りながらも必死でくらいついていく

 

エメラルドグリーンの海まで下りると、そこはコースの中間地点。ここからの後半はサンタナの里山をメインとしたコース。レース後半には沢の中を進んでいくパートもあり、本当に沢の中にマーキングのフラッグが立っていて、一番深いところでは私のお尻まで水に浸かりながら500mほどジャブジャブ進んでいきました。

里山ながらも、かなりの急登を登る場面がいくつかありました。そして、マデイラ島の人気のトレッキングコースである用水路のトレイルなども通りながら、フィニッシュ地点のサンタナをめざしました。

 

トラブル発生
ここでアクシデントがありました。沢の中を進んでいる途中、右手で岩を掴んだまま滑ってしまい、右肩が外れて元に戻るという経験をしました。いわゆる肩の脱臼です。本当に一瞬でしたが、初めての経験で、すごくビックリしました。その後、右肩にはやっぱり少し痛みがあり、右腕を使うような動きをするのが怖くなってしまいました。

 


コースの中盤には、一面に広がるエメラルドグリーンの美しい海が待っていた

 

そんなアクシデントがありながらも、実はこの時すでに気持ちを立て直していました。

中間地点の海まで出たとき、目の前に広がるエメラルドグリーンの透き通った大西洋を見て、
「こんなに遠くまできて、何を弱気になってるんだ!」と思いました。

ここに来るために応援や支援をしてくださってるたくさんの人たちのことが頭に浮かんできて、「このままじゃ終われない」と思いました。そして、まだまだ自分の脚が動くことがわかり、「ここから一人でも多くの女子選手をキャッチしていこう!」と決めました。

最終的に後半で5人ほど女子選手を抜き、18位という順位でフィニッシュすることができました。

 


女子18位 8時間35分でフィニッシュ

 

このワールドシリーズ戦では上位20位までランキングポイントが与えられます。この20位以内は、レースに参戦する上で私の中のひとつの最低ライン。今年は年間ランキングの上位入りをめざしてこのワールドシリーズ戦に参戦しているので、ポイントが付くか付かないかは、今後のモチベーションに大きく影響してきます。なんとかこの最低ラインをクリアして、最終順位を見たときはすごくホッとしました。

ただ、やっぱり悔しかったのは、2年前の自分を越えられなかったこと。2年前とはコースは変わっていたし、雨の影響でコースはさらにテクニカルにはなっていましたが、それでも2年前の自分より30分遅いタイムにがっかりしました。

何が悪かったのか、どこを修正しなければいけないのか、思い当たる節はいろいろありますが、これからさらに細かく分析していこうと思います。

そして、時間もお金もかけて遠い地まで来て、多くの方の支援や応援を受けて、ワールドシリーズ戦に参戦させてもらっているのだから、ちゃんと自分が納得いく結果が残せるように、次のシリーズ戦の2戦目に向けてまたしっかり準備していきたいと思います。

日本から応援してくださっている皆さん、サポートをしてくださっているスポンサーの皆さん、こんな私を理解して協力してくれる家族のみんながいるからこそ、できているこの挑戦。本当に応援してくださる全ての方に感謝です! 引き続きシリーズ戦で全力を出していきます。

 

 


目標をなんとか達成し、ホッとして記念撮影

 


がんばったご褒美はやっぱりビール♪

 

Ultra  Skymarathon Madeira2018
距離 55.6㎞
累積標高差 4121m
星野由香理リザルト 女子18位 記録8時間35分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星野由香理【ほしの・ゆかり】
フィジカルトレーナーとして、一般からアスリートまで、トレーニングやコンディショニング方法を指導するかたわら、日光を拠点にレース運営やイベント開催に携わっている。2018年スカイランニング世界選手権日本代表選手。

2018年 UTMF2018  女子4位
2018年 ひろしま恐羅漢トレイル65㎞ 女子2位
2017年 美ヶ原トレイルラン&ウォーク 80㎞ 女子優勝
2016年 スカイランニング世界選手権ウルトラの部 女子8位
2016年 スカイランナージャパンシリーズ スカイ女子1位

 

連載「マウンテンランナー星野由香理の日光発、世界行き」 Vol.1 〜UTMF2018 レースレポート〜

連載「マウンテンランナー星野由香理の日光発、世界行き」 Vol.2 〜Ultra Skymarathon Madeira 2018レースレポート〜

 

 

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