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【野間陽子のレースレポート vol.11】アンドラ・ウルトラトレイル2018(AUTV2018)、再びユーフォリア・デル・シムへ

2018.08.24

■レース4日目、嵐の襲来
4時間休憩して、4日目は午前4時にスタート。
ロングレースではいつも胃腸がやられるのですが、今回も2日目からバナナしか喉を通らなくなっていました。

4日目ともなると力がなくなり、急登を進むのに時間がかかるようになりました。そんなときも緑ちゃんは本当に強く寛大で、私のザックまで背負って前を進んで行きます。自分も食欲が落ちているのに、底力が違う。なんと強い人なのか、と思いながら、彼女の後ろ姿を追いました。

 


天空の広場で草を食む馬のすぐ横を通過

 

4日目は午後から天候が崩れました。午前中は強い日差しに照りつけられていましたが、午後から天気が急変、嵐がやってきました。真っ黒い雨雲が空を覆い、稲妻が走り、雷が鳴り響き、パール大の雹がバサバサと降り始めました。瞬く間にオフトレイルは雹で埋め尽くされ、冷たい水溜まりと泥流の中を歩く足元は冷えていきます。逃げ場のないオフトレイルで、爆音を轟かせる雷が鳴るたびにしゃがみ込みながら進み続け、1時間が過ぎた頃、運良くコース上に避難小屋が現われました。その避難小屋は112㎞のレース、”ミティック”のコースと重なる場所にあり、避難小屋の中ではスタッフがストーブを焚いていました。なんという幸運でしょう。雷が遠ざかるまでの小一時間を、冷えきった体をストーブで温めながら待機することができました。

 


積雹10㎝、翌日は一面の銀世界

 

” OK. You can go! ”というスタッフの声を聞いて、またレースに戻ることができました。ゆっくりしている余裕はありません。前へ進まなくてはレースの終わりは近づいてこないのです。4つ目の最後のライフベースをめざしてレースを続けました。これでもかと続くスキー場の急斜面を直登し続け、午前1時過ぎに4つ目のライフベースに到着。4日目の軌跡は21時間で43㎞。「よかった! 関門には間に合った!」とホッとしました。

4日目の関門は午前5時。残すは最終日だけです。もう何も食べられないけれど、なんとかスイカだけ口にして、急いで2時間寝て、最終日にむけて準備しました。


トレランシューズで雪渓をダウンヒル

 

■レース5日目、フィニッシュ地点をめざして
3時間半休憩して、5日目は関門閉鎖10分前の午前4時50分にスタート。
最終グループである他の2チームと一緒にスタートしました。ルートミスをする時間的余裕は1分たりともありませんでした。他のチームの速いペースについて行きながらも、ルートミスがないか随所でGPSを確認しながら進みました。オフトレイルの長い下りを進みながら夜が明け、さらに下ってフラットなエリアへ。順調にルートファインディングして進めたので、予定通過時刻からどれくらい貯金ができたか確認すると、なんと2時間近くビハインドしています。

「え??? このままだとフィニッシュの制限時間に間に合わない! このタイムチャート、タイト過ぎる!」
ここからひたすら巻き返すしかありません。まだ力が残っている自分たちに驚きながら、追われるように2時間あまり、心拍を上げて走りました。

そして、ようやく最後の町、アンドラの首都ラベリャに到着。残すは25㎞、山4つ。制限時間まであと8時間。
まず越えなければならないのは、午後の強い直射日光に照りつけられながら急斜面を全身でよじ登る標高差800mの岩壁。登っても登っても尾根にたどり着けない。私と同じように緑ちゃんもやられているはず。それなのに、緑ちゃんは本当に強い。

緑:「陽子さん、ザック背負うよ。貸して」
陽子:「大丈夫。自分で持つ」
緑:「本当に大丈夫?」
陽子:「うん。遅くなるけどね」
緑:「それじゃ困る。私たち完走するんだから!」

私のザックも背負って緑ちゃんはぐんぐん登っていく。なんという強さだろう。
フラフラになりながら登っていくと、トレイルを横切る舗装道の手前で今回のレース中、所々で応援してくれている赤嶺ご夫妻の姿が見えました。アンドラで私設エイドを出してもらえるとは思ってもいなかったので、本当にパワーをもらいました。

 


赤嶺夫妻の私設エイドはまるでオアシスのようでした

 

オアシスを後にして、ラスボス、カサマーニャへ向かって進みます。その途中で雨が降り出し、どんどん雨脚が強くなり、また遠くで雷が鳴り始めました。豪雨の中、カサマーニャへ取り付こうとしたコース上で、私たちを見つけた大会スタッフ達が近づいてきました。

「カサマーニャの鎖場が危険なので、ここからはオルタネート・ルート(※悪天候時の代替ルート)を行くように。ゴールはそんなに遠くないよ。ずっと君たちチームのトラックを追っていたよ。本当によくやったね!」と言ってもらいました。

あと6時間頑張ればたどり着くと思っていたフィニッシュ地点が、豪雨のおかげで急に近づいたのです! あと2時間。夢にまで見たフィニッシュゲートに向かって走りました。大雨でぬかるんだトレイルに足をとられて泥んこになっても、心は嬉しさでいっぱいでした。


170㎞の"ロンダ・デル・シム"も112㎞の"ミティック"も、同時間にボリュームゾーンがゴールするはずでしたが、どちらのレースも嵐により途中で中止になってしまいました。ユーフォリアはレース時間を3時間延長して続行したので、この時間にフィニッシュゲートをくぐるのは、ユーフォリアの選手だけでした。

緑ちゃんと繋いだ手を高々と挙げて感動のフィニッシュ! 一年越しの想いが実った瞬間でした。チームで完走をめざした107時間24分52秒の旅は、女子ペア2位というプライズまでもたらしてくれました。


107時間24分52秒で夢にまで見た完走の瞬間!

 

最初にフィニッシュゲートで待っていてくれたのは、十数分前にゴールしていたもうひとつの日本人チームでした。言葉では表現しきれない233㎞の厳しいレースを共に進んだ同志です。励まし合いながら進み、喜びを分かち合うことができて、本当によかった。
そして、オーガナイザーから女子ペアカテゴリー2位の表彰楯をいただきました。

 


女子ペア2位の表彰台に立つ

 

107時間24分という長く深く濃い時間を一緒に過ごしてくれた最高のバディ、星野 緑ちゃん。緑ちゃんとだからくぐれたフィニッシュゲートでした。かけがえのない5日間をどうもありがとうございました。私の人生に AUTVがもたらしてくれたすべてのことに感謝しています。


完走を果たしたもうひとつの日本人チームと祝杯!

 

 

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