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連載「マウンテンランナー星野由香理の日光発、世界行き」 Vol.3 〜High Trail Vanoise 2018 レースレポート〜

2018.11.21

日光を拠点に、1年を通して山を駆け巡るマウンテンランナー星野由香理さん。

スカイランニングのワールドシリーズに出場するため、6月から海外のスカイランニングレースを5戦、転戦する。目標は2018年ワールドシリーズの年間ランキングで上位に入ること。

連載第3回目は、2018年7月7日にフランスで開催されたHigh Trail Vanoise"のレースレポート。写真を見てもわかるとおり、由香理さんはサポートなしで、たった一人で世界のレースで戦っている。

 


写真・文=星野由香理

 

7月7日、フランスのスキーリゾートVal d'Isere(ヴァルデイゼール)という町で開催されたワールドシリーズ戦 "High Trail Vanoise”(距離70㎞ / D+5400m)に参戦してきました。このレースは私にとって、2018年スカイランニングワールドシリーズ戦の2戦目。

第1戦目のマデイラでは、自分の納得いく結果が出せなかったので、このHigh Trail Vanoiseでは10位以内を目標に、自分のめざす結果が残せるように、このレースへ向けて改めてしっかり準備をし直しました。

大会が開催される町、ヴァルデイゼールは標高1850mにあり、フランスを代表するスキーリゾート地。冬は多くのスキー客で賑わい、トリノやジュネーブなどからの直通バスの便数が充実しています。ただそれは冬のシーズン中の話で、夏はそういったバスは一切なく、パリから電車や普通のバスを乗り継いで現地まで行かなくてはなりません。

今回は成田国際空港からベトナム航空を使いました。途中ホーチミンでトランジットをし、パリのシャルル・ドゴール空港まで22時間。そこから地下鉄とフランスの国鉄SNCFを2回乗り継ぎ、最後はバスに乗って、乗り換え時間も含めて10時間。実に成田を出てから32時間後に、ようやくヴァルデイゼールに着きました。

 

 

■雪のある高所でのレース

今回のレースで事前にわかっていたことは、コースの最高地点は3656mまで登ること。コース上には雪もあること。後半にもう一度3190mまで登り返すこと。日本ではなかなかない高地でのウルトラレース。そのため必携装備品もかなり厳格に決められていて、日本のレースで持つ装備の他に、チェーンスパイク、サングラス、ロングスリーブ、タイツなどの着替えを持つことが決められていました。

 


左の雪を抱いた山がGRANDE MOTTE(3656m)

 

レース当日までは中2日あったので、1日はコースの一部を下見。もう1日は受付とバーティカルの応援などをして過ごしました。

また、ヴァルディゼールの町には多くのアウトドアショップがあり、そういったお店を見て回るのも、日本にないアイテムなどもあって、とても楽しかったです。

レース前日のブリーフィングでは、コースの状況が説明され、前々日に降った雪によりコース全体の38%が雪の上であると知らされました。また、GRANDE MOTTE(3656m)の山頂付近は岩場で、鎖場が多く、その上に雪が積もっているので ”Very very dangerous point” だと告げられました。

私はこのレースは招待選手として呼んでいただいたので、選手紹介で舞台の上に名だたる選手と共に並び、一層身が引き締まりました。

「このメンバーの中で、なんとしても結果を残したい・・・」と、気合を入れました。

 

■いよいよレース当日

レース当日は深夜1:30に起床。ゆっくり体を目覚めさせるようなエクササイズをして、朝食を食べてから、アップがてら宿から3㎞先の会場まで走っていきました。

装備チェックを済ませ、レーススタートは朝4時。日が昇る前のスタート。

最初はロードから砂利道の林道を緩やかに登っていきます。そして、だんだんと空が明るくなってきたあたりから、コースは雪へと変わっていきました。

チェーンスパイクを装着して、雪の急登を一歩一歩踏みしめながら登っていきます。この登りは本当に斜度がキツく、ストックとチェーンスパイクがなければ登れないような急登でした。

気温はとても低く、おそらく体感で0℃近かったと思います。体は登りで暑いけど、手だけはグローブをしていてもまったく温まらず、指先の感覚はほとんどなくなっていました。

そして、このコースの最高地点の "Very very dangerous point" と言われた、3656mのGRANDE MOTTE山頂直下では、岩と雪の急斜面をロープを使いながら登りました。一人一人ゆっくり慎重に登って、下りていきました。


コースの約40%に雪があるため、慎重に進む

 

GRANDE MOTTEの岩場パートを越えたあとは雪の斜面を一気に駆け下りました。この下りは本当に楽しかった! 

そして、一気に町まで下りていくと大勢の観客で賑わうエイドに到着。さっきまであんなに寒かったのに、午前10時のこの時点ではギラギラと刺すような日差しが出てきて、ここから灼熱のレースが始まりました。

次の登り返しは、約4で990m上がるというとてもキツイ急登。気温が急激に上がったこともあり、今回のレース中、このパートが一番キツく感じました。

 


日本のレースではなかなかない急登を何度も越えていく

 

とにかく壁のような登りをずーっと登っていきます。登りきった先では小さなアップダウンを繰り返し、たまに雪の上を通りながら進んでいくと、目の前にキレイな湖が現れました。

周りには雪を抱いた山々、そしてエメラルドグリーンの湖。まさにヨーロッパアルプスの光景。その景色を見て、またパワーが湧いてきたような気がしました。

 


美しい湖にパワーをもらう

 

そして、ここからもう一度1900mの町まで下りて、最後の3190mまでの登り。ここはなかなか山頂にたどり着かず、すごく長く感じましたが、「他の選手たちもみんな本当につらそう。それに比べたら私はまだ脚が動いている!」と思いました。

確かにキツいけど、すばらしい景色の中を走れる幸せを感じられていたような気がします。レース後半、つらい中でこそ味わえる幸福感のようなもの。調子が良いレースでは、そういった感覚に陥ることがよくあります。今回もこの感覚が出てきたということは、良い感じで走れているということ。

ここで一人女子選手をパスしましたが、この時点では自分の順位はまったくわかりませんでした。

 

目標の10位以内に入賞!

3190mのピークを登ったあとも、いくつかの小さなピークを越えて、フィニッシュ地点に辿り着いたのは、スタートしてから13時間後。

12時間を目標にしていたので、大幅に遅れてしまいましたが、
「9位入賞だからあと30分後に表彰式よ」とスタッフの方に言われたときはすごく嬉しかったです。入賞してるとは思っていなかった! ワールドシリーズ戦で2年ぶりの表彰台!

 


9位入賞で目標を達成して、この笑顔

 

今まで70クラスというレースはたくさん出てきましたが、今回の High Trail Vanoiseはどの70レースよりもキツくて、過酷で、おもしろいレースでした。レース中のどこにいても本当に素晴らしい絶景が見渡せて、日本では考えられないようなルートを通り、すごく刺激的な大会でした。日本ではなかなかできないような経験をさせてもらったと思っています。

そして、ワールドシリーズ戦でのトップ10をひとつの目標にしていたので、それが達成できたことも自信になりました。これでワールドランキングがまた少し上がりました。

残るワールドシリーズ戦はあと2戦。


 

 

《High Trail Vanoise 2018》
距離 70㎞
累積標高差 5400m
星野由香理リザルト 女子9位
記録 13時間2分4秒

 

 

 

 

 

 

 

 



星野由香理【ほしの・ゆかり】
フィジカルトレーナーとして、一般からアスリートまで、トレーニングやコンディショニング方法を指導するかたわら、日光を拠点にレース運営やイベント開催に携わっている。2018年スカイランニング世界選手権日本代表選手。

2018年 UTMF2018  女子4位
2018年 ひろしま恐羅漢トレイル65㎞ 女子2位
2017年 美ヶ原トレイルラン&ウォーク 80㎞ 女子優勝
2016年 スカイランニング世界選手権ウルトラの部 女子8位
2016年 スカイランナージャパンシリーズ スカイ女子1位

 

連載「マウンテンランナー星野由香理の日光発、世界行き」 Vol.1 〜UTMF2018 レースレポート〜

連載「マウンテンランナー星野由香理の日光発、世界行き」 Vol.2 〜Ultra Skymarathon Madeira 2018レースレポート〜

 

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