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【野間陽子のレースレポート vol.12】「La PICaPICA(ピカピカ)」を走ってきました!

2019.03.01

文=野間陽子

2018年8月、ピレネー山脈の中でも屈指の最高峰を舞台に繰り広げられるウルトラマウンテンレース、「La PICaPICA(ピカピカ)」《距離109㎞ / D+1万1500m》を走ってきました。

 


山岳アスリートが作る山岳アスリートのためのレース「ピカピカ」

 

ピカピカとの出会いは突然に
私は、2018年7月に開催された「Andorra Ultra Trail Vallnord(アンドラ・ウルトラトレイル・ヴァルノード) / 以下AUTV)」のレースカテゴリーの一つ、距離233㎞(D+2万m)の「Euforia(ユーフォリア)」というペアレースに出場するためにアンドラ公国に向かいました。

現地で、私と同じ「ユーフォリア」に出場するフランス人のNahuel Passerat(ナウエル・パサラ)に声をかけられました。

「来月フランスで新しいレースをやるんだ。YOKO、走りに来ない?」と。

ナウエルはAUTVのアンバサダーで、2016年には100マイルレースで優勝。2017年、2018年には233㎞のペアレースで2連覇しているタフな選手です。

2018年の8月は、「トランスピレネー」というレースに参加する予定だったのですが、レース開催1ヶ月前にレース中止の通達があり、私は「予約していた航空券をどうしようか・・・」と思っていました。

その矢先の話だったので、ナウエルからの誘いに神様のボートに乗ったような気になり、ナウエルがオーガナイズする「ピカピカ」というフランスで開催される新しいレースに参加することを決めました!


レース前に試走を兼ねてエイドステーションの山小屋へ

 

30回続くチャレンジ・ド・モンカルム
 「ピカピカ」は、アンドラ公国の北側に位置するピレネー山脈のフランス側、アリエージュ県を舞台とするトレイルランニングレースで、「Challenge du Montcalm(チャレンジ・ド・モンカルム)」に昨年から加わった新しい山岳レースです。距離は109㎞、累積標高差は1万1500m。

今年で第30回を迎える歴史ある「チャレンジ・ド・モンカルム」における初めてのウルトラディスタンスのカテゴリーということで、地元での注目度はかなりの高さでした。参加者の大部分はフランスのローカルランナーで、英語があまり通用せず、日本人参加者は私一人。珍しさもあって地元新聞が取り上げてくれたこともあり、村の人々は明るくジャポネーゼ(私)に話しかけてくれるのですが、フランス語がほとんどわからない私は笑顔をふりまくばかりでした(笑)。

 


フランスの地元新聞の2面に登場(笑)

ナンバーカードと参加賞のTシャツ


コースは、フランス側のピレネー山脈、モンカルム山域のテクニカルな山々を時計回りに縦走するものです。20以上の湖が点在する山深いエリアで、標高2400m以上の山頂を16も越えていきます。その中には標高3000mを超えるピークが4つ含まれます。このレースのハードさをご想像いただけると思います。アップダウンが激しいだけでなく、コースのテクニカルなサーフェイスは今まで参加したどのレースより厳しいものでした。

 


岩稜帯が続く険しいモンカルム山域

いよいよレーススタート!
スタートは夜22時。星空の下、200人のマウンテンランナーたちがヘッドライトを点けてスタートしました!

スタート前10日間はずっと晴天続きでしたが、レース当日の天気はあいにくの嵐の予報。
「どうか気まぐれな嵐でありますように!!」と願いながら進みましたが、夜が明けてすっかり明るくなった午前7時頃から雨が降り始めました。

 


2019年は朝8時スタートへと変更される予定


スタートから13時間後に立ち寄った35㎞地点のエイドステーションで、女子4位と聞き、フィニッシュラインをくぐる瞬間を心に描きました。

「これから先の70kmを30時間でまとめよう!」と、具体的な目標を得て前に進みましたが、風雨がどんどん強くなり、次第に嵐になり、雷が鳴り始め、ガスで視界が狭くなり、体感温度はマイナスの状態になってしまいました。

濡れた草のダウンヒルで滑って転び、連続する岩場でも滑って転び、怪我への恐怖と悪天候とで心が折れそうでした。コースマークのフラッグを見つけても、暴風雨とガスとで次のフラッグが見つけられず、前後にランナーの姿も見えず、GPSでトラックデータを確認することもしばしばでした。過酷な状況でした。

 


ピレネー山脈の悪天候の洗礼を受ける

 

これから先に挑む3000m以上の4峰をこの悪条件の中進めるのか不安でいっぱいになりながら、とにかく立ち止まってはいけないと前に進みました。

厳しい気象条件の中、必死でたどり着いたコルや山頂や、進む方向を見定めるのが難しい分岐に突然現れるスタッフの存在には驚かされました。悪天候の中でも選手のために懸命に活動してくれるスタッフに、どれだけ力をもらったことでしょう。ただ立っているだけでも大変な場所に、選手の安全を確保するために何時間も待ってくれている。

「守ってもらっているのに泣き言なんて言っていられない!」

そう思ったタイミングで、レースプロデューサーのナウエルが山を駆け上がってきました。

「スタッフの安全を確保する。スタッフはすぐ下山して!」とナウエルは叫びました。

スタッフすら避難を余儀なくされる嵐の中、私は次のエイドステーションまでとにかく必死で岩場を進みました。ガスで視界が利かない岩場のルートファインディングは難しく、一人だったらとても不安だったと思うけれど、屈強なマウンテンランナーであろう山岳スタッフが私の歩みを確認しながら、ガスが薄くなる標高の地点まで誘導してくれました。本当にありがたかったです。

立ち止まったら危険なほどの寒さの中、18時間かけて49km地点のエイドステーションに到着。そこで大会の中止を告げられ、レースは終了となりました。

 


トップ独走態勢にいたのは世界的に活躍する地元のトップアスリート、アントワーヌ・ギュイヨン(写真中央)

 

嵐のあとのサプライズ
翌日の表彰式は真っ青な空の下で行なわれました。「ピカピカ」はレース半ばで中止になってしまったので、「他のレースカテゴリーの表彰式をしていているんだろうな」と思いながら会場に足を運ぶと、なぜか私の名前を呼ばれ、ステージに上がることに!

優勝確実のペースでレースを走っていたトップアスリート達と一緒にステージに立ち、年代別優勝(なぜか40代の笑)の盾と素敵な花束をいただきました! フランス語なので何が起こったのかわからないのですが、日本から一人で参加した私を歓迎してくれたのだと思っています。

山岳アスリートが作った山岳アスリートのためのレース、「ピカピカ」。山の美しさも厳しさも愛する「チャレンジ・ド・モンカルム」のオーガナイザーたちが作った素晴らしいウルトラマウンテンレースです。今年は第2回大会が開催されることが決定しています。美しくも厳しいピレネー山脈で開催されるこのレースに、挑んでみてはいかがでしょうか?

 


表彰式でオーガナイザーたちと一緒に

 

【2019年の大会情報】
Challenge du Montcalm(チャレンジ・ド・モンカルム)
開催日程 2019年8月15~18日
開催場所 フランス Ariège (アリエージュ県) Auzat (オザ)
レースカテゴリー
109km/D+11500m、42km/D+2580m、25km/D+1250m、13km/D+650m、13km/D+650m、KV/D+1080m
制限時間 50時間(PICaPICA / 109km/D+11500m)

Challenge du Montcalm(チャレンジ・ド・モンカルム)公式ウェブサイト

 

【連載】野間陽子のレースレポート Vol.1~11

 

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