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アマチュア初心者から競技者まで、山岳スキーヤーを増やすレシピ〜フランス編

2019.03.22

登山やトレイルランをはじめ、山岳スポーツが盛んなフランスで、いま人気急上昇中の山岳スキー。日本でもトレイルランナーを中心に山岳スキー競技(SKIMO)にトライする人が増えているが、フランスの人気ぶりは、やはり日本とは比べものにならない勢いがある。

その盛り上がりの一端がうかがえる、ヴァーティカル・スキーナイターレースの様子を、フランス・メリベル在住のライター、祐天寺りえさんにレポートしてもらった。
 


現在、フランスの山岳スキー競技人口は約20万人。一瞬、多く聞こえるが、スキーヤー全体からみればわずか8%。ただし、フランスでもアルペンやクロスカントリースキー、スノーボード人口が年々減少しているのに対し、山岳スキーの競技人口だけは、ここ15年、毎年5%増が続いている(Dynafit France調べ)。

 「山岳スキーは確かにマイナースポーツ。しかし、身体のメンテナンスや環境への配慮という、いまの社会傾向にマッチするスポーツであることも確かなことだ」と、フランスで有望視もされている山岳スキー競技。それを一過性のブームにはせず、着実に根深く競技人口を増やしていく。そんなフランスの手腕を実感できるイベントのひとつを紹介します。
 

レースの開催場所は、フランス・メリベル(Méribel​)
 


メリベルはリヨンから200km。スイスのジュネーブから180km。
フランスのなかでもスイスとイタリアの国境寄りの町


バックカントリーを含まない整備されたゲレンデのみでも総滑走距離600kmを超える
アルペン・スキーリゾート「トロワバレー」の中央に位置している
 


そのメリベルで1月から4月までの間に計5回開催されている山岳スキーレースが『Les Noctunes des Restos de Méribel 』(レ・ノクチューン・デ・レスト・ドゥ・メリベル)。標高の高い場所にあるゲレンデレストランを目指して、山岳スキーで登るヴァーチカル・ナイター・レースだ。

今回は標高1122mから1642mまでの標高差540m、2.984kmのルート(ちなみに前回は標高1686mから2398mまでの標高差713m、3.651kmのルート)でレースが行われたが、毎回協賛レストランによってルートや難易度が変わる。競技者はさまざまなシチュエーションで技術向上を図ることができ、アマチュアは飽きることなく変化を楽しめるので、リピーター多数。回を追うごとに参加者が増えている。
 


スタートは18時30分。エントリー料は到着点近くのゲレンデレストランでのスープ&デザート
込みで
7ユーロ(約900円)。平日(火曜日)開催のため職場や学校からギリギリでかけつける
参加者が多数なので、エントリーは直前までOKだ。


平日の火曜日に開催する理由は①土日は大会が多いため ②月曜日はその休養日にすべしという配慮から ③木金は土日の大会への準備や移動日になることが多いため ④隣のスキー場(クールシュベル)で開催のヴァーチカルナイター・レースが水曜日。どちらにも参加してレーストレーニングにしたいという競技者も多いため、こちらを火曜日にした
 

クラブ収益(=選手育成資金)にもつながる「ノーコスト・イベント」


このレースの主催は「メリベル・スポーツ・モンターニュ」。トレイル&山岳スキー競技の会員・約150名の地元クラブだ。そこに、ゲレンデレストランと観光局、パトロール会社が協賛している。タイムキーパーなど大会運営スタッフはボランティア10名弱。つまり出費はなしの「ノーコスト・イベント」として運営されている。
 

エントリー代(7ユーロ)はほぼ全額クラブの収益となり、合宿や大会遠征などの活動資金となる。とりわけ高校生や大学生など若手選手を増やすためにはこの資金があるか否かが非常に重要。「個人負担が少ないにも拘らず、身体能力を高められる合宿」などは確実に若手競技者集めに反映。すなわち「山岳スキーの将来性も育てているイベント」ともいえる 
 

正味3時間で運動&食事タイムを楽しめるお気軽イベント

レースは18時30分スタートで、トップは約30分、遅い人でも1時間30分でレストランに到着する。スタッフも含め全員が20時には食べ物にありつき、しばしにぎやかに過ごした後、表彰式。拍手後21時には解散。登ってきたコースを滑り降りながら「あぁ、楽しい夕べだった」と帰路につく。つまり正味3時間の「時間的にも身体的にも気軽なイベント」というのも人気の理由のひとつだ。2014年当初は20〜30人の参加者だったが、6年目の今季は毎回120人前後。来季は150名を優に越えるだろうと言われている
 



18時30分、レース競技選手からアマチュアファンまで100〜130名が一斉にスタート!
スノーシューや徒歩でも参加OK



コースの目印は3m間隔ほどの蛍光スティック。コースアウトする心配はほとんどない


ヘッドランプは義務づけられているものの、忘れてしまったり故障して使えず、
仲間に前後から挟んでもらって登る参加者もいたりする


スノーパークが途中にあるゲレンデでは、トンネルを逆にくぐって登るコース設定が
されていたりもして「黙々とただゲレンデを登るより楽しい!」と好評



ひたすら登ってゴールしたとき、なにより嬉しいのがゲレンデレストランの灯り!


到着した順にどんどん食べ始める気ままさがフランス流。みなの汗で熱気ムンムン。
外の寒さを忘れる暖かさにおしゃべりもはずみ、居酒屋のようなにぎやかさ


協賛レストランは基本的に「スープ&デザート」を用意。つまみ類やアルコールまで提供するか、それらは有料にするかなどはレストランによって異なり、主催者側はノータッチですべてレストランに一任している。ただ、やはり気前のよいレストランのレースは大いに盛り上がり「これで7ユーロはとてもお得!」「タイムレースをできたうえに夕食にもありつけて、しかも皆でワイワイ楽しいムードも味わえた」と大満足。「次回も是非参加したい!」と参加リピーターを増やすことになる。






おつまみにミニ・キッシュ、スープには好みでチーズをたっぷり入れながら。
飲み物はホットワイン、ワイン、ビール、ココア、ミネラルウオーターなど、これも好みで。
デザートは梨のタルト。この時のオーナーは大盤振る舞い!

 


家族やカップル、仲間が集うイベント。全員が山岳スキーとは限らず、スノーシューや徒歩で登る人もいる。
そしてそのスノーシューの人達が、それぞれのペースで登れるヴァーチカルイベントで「これならできるかも」と感じ、山岳スキーをはじめるケースがとても多い。でもそれもやはりこの最後の和やかな飲食の効能ともいえる。

 


パトロール2名も参加者の荷物をゴール地点までスノーモービルで運ぶ任務を終え、
冷えた身体をスープで温める(リフト会社の協賛でパトロール員はボランティアではなく有給)

 


全員が食べ物&飲み物にありつき、落ち着いた21時少し前に表彰式.賞品は観光局が提供

 



1位の女性の賞品は、観光局特製「メリベル・キャップ」。ショコラティエ協賛の「ショコラ」。
スポーツ店協賛の「スプレーワックス」飲食が終わらないうちに表彰式をするのもポイント。
待たずにどんどん帰ってしまうのも勝手気ままなフランス人達の常なので

 

スキー場に山岳スキールートを作らせる促進イベントでもある


毎年5%増という将来性を有望視されている山岳スキー。それでも、まだ山岳スキーヤーが安全に登れるルート整備や確保はフランスでも不十分な現状だ。なぜならリフトを使用しない山岳スキーはスキー場の利益には即座に結びつきにくいため。そんななか、こうしたイベントは「リフト終了後の一般スキーヤーがいない時間なので安心」「夜間の雪上整備車にもルートを告知されているので、雪上車との事故の不安なしに安全に登れて下ることができる」。しかも「ナイタースキーという普段味わえないシチュエーションも楽しめる(フランスにはナイタースキーはないので)」と、初心者から競技者までを満足させ、山岳スキーヤー人口を確実に増やしている。

 

そしてさらにもうひとつ、開催の狙いがある。
「ファンが増えれば、保安上、安全に登れる山岳スキールートをスキー場も確保せざるを得なくなり、徐々にルートがフランス中に増えてもいくはず!」と各地のクラブは推察する。そのためにも、このようなイベントは今後も全国的に増えていき、フランスの山岳スキー人口増加が留まることはないだろうと予想されている。

 

Text&Photo:祐天寺りえ

協力:MÉRIBEL SPORT MONTAGNE,
         MÉRIBEL COEUR DES 3 VALLEES


 

 

 

 

 

 

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