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【連載】国内外のトレイルを駆けめぐる、大瀬和文の “GOOD LUCK!" Vol.9 「100 MILES OF ISTRIA」で優勝!

2019.04.24

2019年3月1日に香港で開催された「TRANS LANTAU 100」(103㎞ / D+5800m)で優勝した大瀬和文さん。その勢いのまま、4月12日にクロアチアで開催された100マイルレース「100 MILES OF ISTRIA」でも優勝を果たした。「100 MILES OF ISTRIA」はウルトラトレイルワールドツアーの一戦であり、この優勝の価値は大きい。大瀬さんの優勝のヒケツは“リラックス”だったようです。

 


文=大瀬和文 写真=フィールズオンアース

 

クロアチアのイストリア半島で開催される「100 MILES OF ISTRIA」の100マイルレース(168㎞ / D+6500m)。このレースを知ったのは、世界的なウルトラトレイルランナーであるDylan Bowman(ディラン・ボウマン)が、2017年に出場して優勝した記事を見たことがきっかけだった。

「クロアチアってどんなところなのだろう?」と思い、レースの映像を見てみると、美しい景色の中を選手たちがとても楽しそうに走っていた。それを見て、「いつかこのレースには出てみたい!」と思っていた。そして、2019年4月、ついに念願のレースに出場することになった。


■100 MILES OF ISTRIA とは?

今年の「100 MILES OF ISTRIA」は、100マイル、110㎞、64㎞、41㎞と4つのレースカテゴリーで開催され、50を超える国から約1600名の選手が参加した。レースの規模としては大きくはないが、アットホームな運営が素晴らしいレースだ。

舞台はクロアチアにあるイストリア半島。イタリアのベネチア・マルコポール空港から車で2時間30分ほどだ。

コースはこのイストリア半島を東から西へ向かって縦断するもので、コース上からは美しい森と色とりどりの花、透き通った海、そして、紀元前に建てられたレンガ造りの建物など、景色に目を奪われ、つい足を止めてしまいそうになる風景がたくさんある。そして、コース前半(約88㎞地点のエイドまで)は標高1000mから1400mの山を越えていくアップダウンのあるコースで、後半は標高300〜400mの丘にある村々を通過していくというものだった。コース後半で通過する村の中には、居住人口世界最小の村としてギネスブックにも認定されている「HUM(フム)」も含まれていて、ユニークなコースだ。

レースの会場はクロアチアの「UMAG(ウマグ)」という街なのだが、せっかく「水の都」ベネチアに来たので、クロアチアへ移動する前に半日ベネチアで観光を楽しんだ。ベネチアは地中海に囲まれたとても美しい街で、歴史的な建築物が数多く残る街。レースに出場することを忘れるぐらい観光を楽しんでから、車でクロアチアへと向かった。

クロアチアへ向かう際にスロベニアを通過するので、パスポートコントロールが2回あった。車での国境通過は初めての経験で、なんだかワクワクした。無事にパスポートコントールを通過して、クロアチアのウマグに着いた。

今回も自炊ができるようにと、フィニッシュ地点に近いところにアパートを借りた。海外の遠征の際はできるだけ自炊がいいので、キッチン付きの宿はありがたい。翌日のコース下見に備え、早めに休むことにした。

 

■レース前日

昨年このレースに出場した久保信人さん(フィールズオンアースのツアーコンダクター)に案内してもらい、コースの下見をし、エイドが設置される町や村を確認した。世界で一番人口が少ない村「フム」(約100㎞地点)にもエイドが出るとのことだった。この日、下見でフムを訪れた時に出会ったお土産屋さんの女性オーナーが、大会当日に応援をしてくれた。こういう出会いがとてもうれしい。クロアチアの人々はとても社交的で、気さくに話しかけてきてくれる人が多かった。


地元の人が応援コメントを仕込んでくれていた


​その後、128㎞地点にあたる「MOTVUN(モトブン)」を訪れると、クロアチアで有名な酒蔵を見学し、クロアチアの名産として有名なトリュフ工場の販売店にも立ち寄った。前日のベネチア観光にはじまり、いろいろなところを見て周ったので、コースの下見をしながら良い気分転換をすることができた。

コースの下見の後は、プレスカンファレンスへ向かった。会場にはフランスのAntoine Guillon(アントワーヌ・ギュイヨン)選手をはじめ、招待選手が集まっていた。先月香港で開催された「TRANS LANTAU 100」を一緒に走ったアントワーヌ選手が「調子はどう?」と話しかけてきてくれたので、「調子はいいほうかな」と笑顔で答えると、彼も笑顔で「リラックスできているね」と返してくれた。アントワーヌ選手はとても強い選手だが、優しい人柄だ。

プレスカンファレンスが始まり、エリート選手の名前が呼ばれ、私もその一人として紹介された。インタービューを受け、「自分が注目選手の一人なんだ」ということを実感しながら、明日から始まる100マイルの冒険のことを思い、ワクワクしていた。緊張や不安な気持ちはなかった。


プレスカンファレンス。大瀬選手の左がアントワーヌ・ギュイヨン選手

 

■今年初の100マイルレースのスタート

スタート地点に到着した時には、まだ選手はいなかったが、スタート時刻が近づくにつれて多くの選手が集まり出した。そして、スタート15分前くらいから太鼓などの演奏が始まり、会場が盛り上がってきた。ピリピリとした緊張感はなく、「これからみんなで完走へ向けてがんばろう!」といった感じのゆるい雰囲気が会場に漂っていた。雨の影響もあってか、スタート5分前くらいになってやっと選手たちがスタートゲートに並び始めた。
私は他の選手と話したり、写真を撮りながら、リラックスしてスタートの時を待った。

そして、16時ジャストにレースがスタート。スタート直後はフラットで下り基調のコースのためか、速いペースでのレース展開になった。今回の作戦は、前半の大きなアップダウンのあるパートでは先頭集団に入って走り、後半の走りやすそうなとこで一気に差をつけて勝つと決めていた。実際には、最初のエイド(15.6㎞)まで2位で様子を見て、そこからもう一度ペースを上げてコース上の最高峰を通過する登山道へと入っていった。

スタートから降り続いていた雨は、標高1000mを越えると雪に変わった。まさか積雪20cmほどのコース走ることになると考えておらず、トレースがほとんどない道をマーキングを頼りに進んでいった。ときおりそのマーキングが雪に埋まってしまい、わかりにくいところもあった。寒さもあり、途中脚が攣ってしまった時は少し焦ったが、すぐに形勢を立て直し、先頭を引っ張りながら40㎞過ぎにあるエイドに着いた。この時には先頭集団は5人で、ほぼ予定通りの展開だった。エイドに入っている間に順位を落としてしまったが、コースに復帰してからはまた先頭集団に加わりレースを進めた。

60㎞手前ぐらいで2人の選手が落ちたので、後半は私、アントワーヌ選手、そして、フランスのGregoire Curmer(グレゴワール・カーマー)選手の3人が先頭集団となった。

3人になってからは、レースでありながら、まるで一緒にトレーニングをしているような感じでレースが進んでいった。みんなで少し話しながら走り、エイドでは同じタイミングで出発したり、時にはみんなでコースを間違えたりと、楽しい時間だった。この感じが100kmを超えても続いたので、「このまま3人で同時ゴールするのか?」と考えることもあった。しかし、自分にとって世界レベルのレースで優勝できるチャンスはそうそうない。自分がペースをどこまで作れるかを試しながら、先頭に立ってレースを引っ張っていった。予定していたタイムに比べやや遅かったが、良いペースで走れていたので焦らずに進んだ。


力を温存しながらも、自分がどこまでレースをひっぱれるかを試しながら先頭を走る


110㎞を過ぎてから、アントワーヌ選手がペースを落とし、私とグレゴワール選手の二人になった。これまでの100マイルと違い、本当に終始リラックスして走れていたので、128㎞のエイドを余裕を持って通過。136km地点までにタイム差を5分つけたが、147km地点では差が1分まで縮まっていた。

今までの私なら、ここで追いつかれて一緒にゴールするか、抜かれることが多かったが、今回は心身共に余裕があったので、ここまで温存していた力を出し、147kmから155kmの約7.6km区間でラストスパートをかけ、4分差まで広げた。そして、さらに最後のエイド(155km地点)からの13kmでペースを上げ、逃げ切って優勝することができた。一番辛かったのはこの最後の13㎞だった。

悪天候で足場が悪い状態でもタイムは18時間38分と、これまでの大会歴代2位の好タイムを出し、アジア人として初めて優勝者の名前を刻めたことは本当にうれしかった。


常レースをリードし、力を出し切って勝ち取った優勝


今回は、レース自体も、レース前後も、心から楽しんだ。
アントワーヌ選手が「トレイルランを長く続けているとマンネリ化する。そうなるとおもしろくないから、いろいろな所のレースに参加したい」と言っていた。自分もそうだなと思う。

初めて訪れたクロアチアで、多くの人に“Kazufumi ”とか、“Ose”と名前とを呼んでもらって応援されたことが本当にうれしかった。改めて、出会い、そして、学びがあるこのスポーツの素晴らしさを感じることができた。

新しいレースに出ることで、新しい友達、仲間ができ、どんどん人の輪が広がってきた。自分が走ることで、これからもっとそんな経験ができると思うと、ワクワクしてたまらない。

次に出場する海外レースは5月末にフランスで開催される「Salomon Gore-tex MaXi-Race」。既に多くの選手や関係者から強豪選手として注目されているようだ。次のレースも自分らしく、楽しみ、そして、結果を出したい。


表彰式の様子。日本人の、アジア人の力を世界に見せた

サポートをしてくれた久保さんと優勝の喜びを分かち合う


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