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【短期連載】KLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレース〜連載第1回

2019.08.30

第1回 KLTR構想のはじまり ~単独での関西トレイル日本縦断

平成から令和へと元号が変わる2019年のゴールデンウィーク中、関西のトレイルをつないで日本縦断するイベントが、有志20名の参加により開催された。総距離約400kmにもおよぶ、壮大な旅の模様を紹介しよう。

取材・文=松田珠子


そのイベントの名称は、KLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレース~」。和歌山県の那智海岸(太平洋)をスタートし、熊野古道、ダイヤモンドトレイル(通称ダイトレ)、京都トレイル、比良山系、高島トレイルなどをつなぎ、福井県の気比の松原(日本海)にゴールする総距離約400㎞(累積標高約22000m)のコースだ。
 


和歌山県の那智海岸にて、KLTRスタート前の集合写真。新藤衛、村上貴洋が企画・運営の中心となり、
TJARへの出場経験のある選手ら20名が参加した(写真=阿部加世子)


山をつないで日本を縦断するレースといえば、2年に一度開催されるトランスジャパンアルプスレース(TJAR)がよく知られている。日本海から太平洋まで、日本アルプスを縦断する総距離約415kmを自身の足のみで8日間以内に踏破する、2年に一度の山岳アドベンチャーレースだ。

このKLTRにはレースと名がついているものの、公に参加者を募集する一般的なレースではなく、個人の発案を起点として、知り合いどうしで開催、参加者も個々の呼び掛けによって集めたいわゆる“草レース”である。発案したのは、KLTR実行委員長を務めた新藤衛(しんどう・まもる)。2016年にTJARに初出場し、5日23時間31分で6位に入っている実力者だ。KLTRの構想は、新藤のTJARへ向けた行程から生まれた。

TJARに向けて

MTBの元日本代表である新藤が、TJAR出場を志したのは2012年。北アルプスの黒部五郎小舎で、TJARの選手たちと居合わせ、レースを肌で感じたことがきっかけとなった。MTB選手を引退して10年以上が経過し、運動不足解消目的で走り始め2年がたった頃だった。

当時、新藤は関西近郊のトレイルを24時間でどこまで行けるか、という個人的なチャレンジ(通称「俺チャレ」=俺のチャレンジ)を幾度となく行っていた。関西には六甲縦走路、東海自然歩道、京都1周トレイル、生駒山系、ダイヤモンドトレイル(通称ダイトレ)と、大阪府を囲むだけでもいくつものトレイルコースがあり、しかも年中走れる環境にある。このほか、北部には高島トレイル(CT40h)、比良山系(CT18h)が、南部には台高山脈(CT30h)大峯奥駈道(CT50h)、熊野古道(CT45h)と、アルプスに劣らない長さの縦走路がある。

これらの多くは修験の道であり、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産になっている。また、コース上には補給が確実な有人小屋が無いため、食料はすべて背負わなければならない。TJAR出場を目標としていた新藤は、前述した関西のトレイルでトレーニングを重ね、実力をつけていった。「関西のトレイルは、決してアルプスに引けを取らない。TJARに選ばれて当然の選手になることは、それを証明する一つのチャンスととらえていた」
そう新藤は言う。

「俺チャレ」の中でも新藤が最大の目標としていた、24時間以内での大峯奥駈道無泊縦走を12年に達成(※それ以降、新藤はこのチャレンジを5回遂行している)。その後、2014年のTJARに向けたトレーニングとして考えたのが、KLTRの礎となる、関西トレイルを繋げる「海(太平洋)から海(日本海)へ」のコースだった。

単独での関西日本縦断

翌13年GW、新藤は、関西トレイルを繋げての日本縦断に単独で挑んだ。コースは、太平洋(和歌山県の新宮)を出発し、大峯奥駈道、ダイトレ、京都東山、比良山系、高島トレイルを経て、日本海(福井県の敦賀湾)までの約430㎞だ。
 

単独での関西トレイル日本縦断。スタート時の写真(写真提供=新藤)


関西トレイル日本縦断は、厳しい道程だった。新宮から30kmのロード、CT50hの大峯奥駈道を経た吉野までは途中で何か補給することができない。熊野と吉野を結ぶ大峰山を縦走する大峯奥駈道は1000m~1900m級の峰々が続く険しい縦走路だ。途中には積雪もあった。霜柱が降りる寒さの中、唯一の固形物として自販機で購入したアイスでエネルギー補給をしながら「いつかこれを仲間うちでのネタにしてやろうと、一人でニヤニヤしていた」と新藤は振り返る。

土砂降りの中、京都トレイルの起点である伏見稲荷神社に向けて、電車の踏切で止まったときには、リタイアがよぎった。「このときばかりは、自分が何をやっているのか意味が見出せず、そのまま電車で帰りたい衝動を抑えられなかった」



コース上の大峯にある二百名山・釈迦ヶ岳(写真上)/京都・伏見稲荷大社(写真下)

 

それでも何とか気持ちを整え、前に進んだ。その後も「鹿の群れに囲まれたり、夜中の比叡山にこだまする読経にビビったり」(新藤)しながら縦走路を踏破。ロードを経て、ゴールとした福井県敦賀市の気比の松原(日本三大松原)へ。「気比の松原にゴールしたときは、こんなに穏やかな海があるのかと、大きな達成感と共にひとりで悦に入りました」。当初は6日あれば完走できるだろうと試算していたが、実際には5日間で踏破した。
 


気比の松原にゴール。海を見ながら感慨に浸っていた


TJARへの手応えを感じ、挑んだ2014年大会の選考会は、まさかの落選。新藤いわく、視力の影響により地図読みの精度が不足していたことが要因だった。新藤は16年にTJARに再挑戦し、本戦への出場を果たす。本戦では初日から両膝の痛みが出る中、積極的なレース運びで上位争いに加わった。最後のロード、残り12kmの時点では右足を肉離れするアクシデントに見舞われたが最後まで粘り、6位で完走した。当時、48歳。このときの記録5日23時間31分は、TJARにおける6日切りの最年長記録となった(※参照:連載『鉄人たちの熱い夏
 



TJAR2016での新藤選手。レース序盤、馬場島から山岳セクションへ。
望月、紺野に続く3番手につけていた 写真=山田慎一郎/MtSN


TJARに向けたトレーニングを通じて、「関西トレイルへの理解が深まった」と新藤。単独で関西トレイルを繋ぐ日本縦断を果たしたときから、「このコースの魅力と達成感をいろいろな人と共有したい」との思いを抱いていた。2016年のTJARに出場したことで、強靭な体力を持つ山の仲間も増えた。

しかし、TJARが、長期休暇を取得しづらいサラリーマンでも参加しやすいようにと夏のお盆に重ねて開催されているように、関西トレイルの日本縦断もまた、全行程を繋ぐには5日以上の連休が必要だ。「いろいろな人と共有したい」という思いを実行に移すには、ハードルの高さを感じていた。

そんなとき、天皇陛下の退位と新天皇即位に伴う新元号の施行により、2019年のGWが暦上10連休になることが報じられた。このニュースを耳にし、新藤の中で“保留”となっていた関西トレイルの日本縦断への思いが再燃した――。

第2回へ続く


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