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【短期連載】KLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレース~連載第2回

2019.09.20

平成から令和へと元号が変わる2019年のゴールデンウィーク中、関西のトレイルをつないで日本縦断するKLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレースが、有志20名の参加により開催された。連載第2回目の今回は、KLTRの構想と、実行委員の立ち上げのストーリーを紹介しよう。

取材・文=松田珠子


太平洋(和歌山県の新宮)を出発し、大峯奥駈道、ダイヤモンドトレイル(通称ダイトレ)、京都東山、比良山系、高島トレイルを経て、日本海(福井県の敦賀湾)までの400㎞を、仲間と一緒につなぎたい――。KLTRの構想を、新藤衛が最初に持ちかけた相手は、当時、山行を共にすることが増えていた村上貴洋だった。

兵庫県在住の村上は、TJARの2016年大会に初出場。「完走」を目標に挑んだものの、足のトラブルにより、南アルプス・聖平小屋手前でリタイアした(連載『鉄人たちの熱い夏』参照)。
 

TJAR2016大会の村上。塩見小屋にて。撮影はスイーパーを務めた福山智之

 

次回こそ完走をとトレーニングを重ねる中で、同じ関西在住の新藤を慕い、山行をともにする仲になった。村上は2016年大会後、2年後の再チャレンジに向け、山での行動スピード、登りのスピードを上げようとトレーニングに打ち込んだ。獲得累積標高にこだわり、季節問わず地元の六甲山に通った。休日だけでなく、平日も早朝暗いうちから山に入り、そのまま会社に出勤するという生活を送った。


18年に入ると、村上自身、実力が格段とアップしていることを実感していた。同じ関西(大阪)の新藤と山に行く回数も増えた。「力のある新藤さんに“山に行きましょう”と自分から言えるほど、自信がついた」(村上)

「再来年のGW、10連休やから、何かおもろいことしようぜ」

村上が新藤からそう持ちかけられたのは、2017年12月、大阪箕面にあるトレイルランナー御用達の居酒屋「ちゃりらん屋」での飲み会の場だった。たまたま翌日も同じく「ちゃりらん屋」で顔を合わせ、「ホンマに再来年のGW、空けといてや」。そう念を押された。

さらに翌日。村上のSNSに新藤からメッセージが届いた。

「昨日の話。再来年のGWは、あほな企画のレースをやりたいね。(和歌山の)那智スタートで高野山抜けて、トレイルをつないで日本海。これなら女性も出られるな」(※全文ママ)


「3日連続で聞かされて、断わったら関西で生きていけないと思い、すぐに家族の了承を取った」。冗談交じりに、村上はそう振り返る。当初、新藤は自身が単独で踏破したルートに含まれる大峯奥駈道を通るコースを考えていた。だが大峯奥駈道は宗教上の理由でコースの一部が女人禁制とされていること、さらには昭文社の登山地図『山と高原地図』シリーズに「高野山・熊野古道 伯母子岳」が新たに加わったことなどから、高野山を経由して熊野古道を北上することにした。


「コースの大半の道が『山と高原地図』でカバーできることで、地理に不安のある関西以外のメンバーにも声を掛けやすくなった」。また雪の影響で事前にコース確認ができないことから、スタート地を和歌山県の那智、ゴールを福井県の気比の松原にすることで構想は固まりつつあった。


TJAR出場を機に、出張などで関西以外に住む選手と飲む機会が増え、交流が深まった。「あほなことに付き合ってくれそうな知り合いも増えた」(新藤)。山での判断力・行動力や走力等、総合的な力が求められるTJARに出場経験のある選手であれば信頼できる。出張に合わせた飲み会などでは、「(19年の)GWの10連休にこんなあほなことやりたいんやけど、どない?」と声を掛けた。


構想を幾度となく話しながら、新藤自身もまた、レース実現への手応えを感じるようになっていった。18年8月、2年に一度のTJARが開催された。TJARを最大の目標と掲げ、2度目の出場を目指した村上だったが、選考会で落選。当初は落選という結果を受け入れられずにいた。それでも最終的には「自分に過信があったかもしれないし、配慮や謙虚さが足りなかったかもしれない」と気持ちを切り替えた。


16年に完走し、選考会スタッフを務めたことで18年大会への出場を予定していた新藤は、急きょ都合がつかなくなり出場を辞退。選手として出場できなくなったかわりに、実行委員会から要請を受け、本戦では北アルプスのスイーパーを務めた。



2018年、新藤(写真左)は北アルプスのスイーパーを務めた(写真:桑山晴子)


9月、新藤は村上を誘い、熊野古道の中辺路(和歌山県田辺市から山間部の熊野本宮大社・熊野那智大社を経由し、那智まで)を1泊2日で縦走した。熊野古道の中でも、古道の雰囲気を色濃く残す中辺路を縦走しながら、新藤はあらためて熊野古道からの関西トレイルの魅力、「海から海」のコースへの思いを語り、村上もまた、新藤の熊野古道愛を感じながら、歴史ある道に触れる楽しみを知った。新藤は、村上と2人でこの草レースの計画の骨子を固めていった。新藤との中辺路縦走後、村上は、コースのGPXデータの整理から始めた。データを整理するのに手間取り、暫定版が完成したのは12月だった。


開催中止の危機、実行委員が4人に


2019年1月。関西トレイル日本縦断レースの基本ルールと、ルートのGPXが出来上がった。そこから、TJARに出場経験のある選手を中心に、新藤自らが声を掛け、参加者を募った。やみくもに声を掛けたわけではない。新藤にとっては、思い入れのあるコースだ。レースとしてもこだわりたい。この選手ならば大丈夫だと信頼できること、さらには、新藤自身が一緒にやりたいと思った相手、一人ずつに、レースへの思い入れを自らの言葉で伝え、声を掛けた。


「さすがに10連休もあればみんなも予定もあるだろうし、参加してくれないかもしれないな……」

新藤はそう思い、そのときは村上と「2人でもやろうな」と話していた。ところが予想に反し、続々と参加表明が相次いだ。結果的にはスポット参戦を含め、20名近い参加者が確定し、嬉しさを感じる反面、発案者として運営をしっかりしなければ、と気持ちが引き締まった。


レースの開催に向けた準備に取りかかろうとした矢先、今度は新藤に想定外の事態が起きた。「声を掛けた私自身が、家の事情で、大会準備に時間を割けない事態が起きてしまった」。

新藤は、村上をはじめ、参加を表明してくれた仲間たちに頭を下げ、レースを中止しようかとも考えた。だが、実現に向けて現実味を帯び、すでに20名近い参加者がGWに予定を入れてくれている。ここまで構想が進んでいるのだから、できることなら何とか実現させたい――。


そこで新藤は、やはり関西在住(大阪)で交流のある有吉俊博、山中俊郎に、レースの開催に向けて協力してもらえないかと相談した。有吉は、2018年のTJARを完走(9位、7日9時間27分)、山中は2018年の選考会に落選したものの、2年後のTJAR挑戦にも意欲を持っている。

新藤の打診に、有吉、山中ともに二つ返事で協力を承諾した。

実行委員が4人に増えたことで、一度はあきらめかけた、レース開催への道筋がはっきりと見えた。そうして実行委員会を立ち上げたのが1月22日。レースの名称は「KLTR (Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレース~」と決まった――。

(第3回に続く)


【関連記事】
KLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレース〜

第1回 KLTR構想のはじまり ~単独での関西トレイル日本縦断

 

 

 

 

 

 

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