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【短期連載】KLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレース~連載第3回

2019.10.26
2019年のゴールデンウィーク中、関西のトレイルをつないで日本縦断するKLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレースが、有志20名の参加により開催された。連載第3回目の今回は、KLTR実行に向けた準備と活動について紹介しよう。

取材・文=松田珠子 写真提供=KLTR実行委員

 

実行委員が始動

 

発案者であり実行委員長の新藤 衛(しんどう・まもる)と、村上貴洋、有吉俊博、山中俊郎という4名のメンバーで、KLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)へ向けた準備が本格的にスタートした。

すべての決定と交渉ごとを担ったのは新藤だ。アイデアを次々と出すも、大まかな方向性だけ示し、細かな実務はそれぞれのメンバーに任せる。ただし、自身がこだわる箇所での妥協はしない。「(新藤は)“いい上司”、そのままのイメージ」とは有吉の言葉だが、持ち前のリーダーシップでメンバーをけん引した。

村上、山中は物事の綿密な計画や遂行のチェック、文書作成などを得意とする。新藤が出したアイデアに対し、気になった箇所を指摘したり、具体策を練ることで実際の形につなげていった。有吉は、参戦しているアドベンチャーレースつながりの人脈を生かし、レースのビブスや横断幕の作成、スポンサー集めといった役割を担当。「4人の実行委員が“適材適所”でうまくはまった」というのは、実行委員の共通した認識だった。

 

コンセプトは「まじめにふざける」
 

3月下旬からはメンバー4人で分担しながら、レースに向けた試走を開始した。
18年9月に近畿地方に大きな被害をもたらした台風21号の影響で、KLTRのルート上にも多くの倒木と崩落箇所が見られ、当初新藤が想定していたコースとは若干の変更を強いられた。
 

熊野古道、船見茶屋跡
 
メンバーそれぞれ、試走で道に迷うことはなかったというが、時に通行止・迂回指示のある箇所は、代替ルートを含め、入念に確認した。もっとも多く試走を行った村上は「どのルートを選手に通ってもらうべく、GPXデータに載せるか? 注意事項は?というところを意識して試走しました」と振り返る。
 


熊野古道を試走する有吉
 
 

高野山町石道を試走中の村上、山中(撮影=有吉)
 
 
試走のため、レース本番のスタート(4月29日)前週の4月20日まで山に入り、4人でのべ12日間、400㎞のコースを分割で踏破した。
「試走のときはけっこう寒かったですね。特に比良山系と高島トレイルは、4月下旬くらいにならないと一部は雪解けが進まないと新藤委員長から聞かされていました。なので、本番の前週に試走しましたが、高島トレイルの三重嶽前後は思った以上に雪が残っていて寒かったのと道が分かりにくかったので、翌週のレースは大丈夫かいな? と思っていた」(村上)
 

地図とルートを確認しながら進む


台風の影響で倒木のひどい箇所も
 
 
コース図を作るための、GPXデータの作成には時間を要した。
新藤の回想――。
「大型台風の影響もあって、単なる登山地図をトレースするだけではすまなくなった。特に参加者の大半は関西圏以外の方たちなので、道に慣れていない。そのため実行委員で分担し、GPSの記録を重ね、これを実際の地図に落とし込んでいきました。不安な箇所は複数人がトレースし、精度を高め、一般道も全て踏破したものを作り上げました」
 400㎞に及ぶGPXデータである。時間は要したが、私有地など通過に時間の制約があるところも調べ上げ、迂回ルートまで万全に記した。
 
一方、参加者への事前の情報提示は最低限のものとした。
「GPXデータは参加者に手渡しましたが、やはり現地では地図読みの能力が必須となる。また、補給場所やトレイルの概要も詳しくは伝えませんでした」(新藤)
交通量の多い一般道だけは情報公開したが、地図も各自用意とした(※生駒山系、高島トレイルの地図は入手方法を案内)。
 
実行委員の中には、レースとうたう以上はコースの詳細を事前に細かく提示したほうがいいのではないか、との意見も出たが、新藤は「自分で調べて準備する楽しみを奪いたくない」と譲らなかった。
 
また、唯一の必携装備として、赤色点滅灯(国道165号等の指定区間では昼夜問わず使用)は課したが、そのほかの持ち物は決めず。ルールには「持ち物は指定しない。自身で想定し、準備する」と記した。デポジットも設けなかった。
「『装備は自分で考える』というのは原則としたかった」
 
そう新藤は言い、続ける。
「山に入るということは、そこにあるリスクを念頭に、それを最小化するために考えなければならないということ。しかしながら、多くのレースでは必携装備が義務化されている。選手の実力が考慮されないことも多々あります。不特定多数が参加し、事故が起こるリスクを最小化しようとする開催側の事情はよく分かりますが、私のいうリスクとは、必携装備=必要十分と考え、思考停止してしまうこと。夏には夏なりの、冬なら冬なりのリスクがあり、それらは一様ではありません。もう一度原点に返る為にも、装備についての義務化は行いませんでした」
 
 

高島トレイルを試走する新藤(撮影=有吉)
 
新藤が掲げたKLTRのコンセプトは、「まじめにふざける」――。
「面白さ」を追求する関西人ならでは、と思いきや、そこにも新藤の明確な意図がある。
「『ふざける』という言葉を入れたのは、そのくらいの余裕を持ってやって欲しいということ。逆に、そのくらいの余裕がなければ、命の危険もあること。そして、私たちと同じ目線でチャレンジし、レースの後も楽しくやれること。『装備を自分自身で考える』を原則としたのも、同様の理由からです」
 
実行委員それぞれ、通常の仕事をこなしながらも着々と計画が進んでいった。
「メンバーの行きつけのお店やパイプのあるメーカー、企業等に少しでもお返しができればと、スポンサーという名目でビブスに各々のロゴを入れさせていただきました。 スポンサーフィーは関西の単位で(笑)一律1000万円。 スポンサーも実行委員もシャレを共有し、大変満足しました」(新藤)
 
つながりのあるデザイナーに依頼し、作成したビブスには、レース名とスポンサー名のほか、選手名、ゼッケンナンバーも入った。横断幕も完成した。
参加選手は、TJARの本戦や選考会の経験者を中心に、スポット参加の1名を含め、20名が決まった。
 
ビブスナンバー順に、1新藤、2村上、3有吉、4山中(以上実行委員)、11斉藤聡之、12米田なつ美、13朽見太朗、14星加博之、15米田英昭、16中野洋平、17片野大輔、18大原倫、19船橋智、20桑山史朗、21前田圭紀、22玉置千春、23北野聡、24柏木寛之、25円井基史、26男澤博樹(スポット参戦)という顔ぶれだ。
 
KLTRを前に、参加者から実行委員に対し、コースや装備に関する質問は一切なかったという。
「レースに関する質問や確認がなかったのは、さすがだと思わされた。連絡がなくてもしっかりとテンションが上がっている様子を感じとることができた」(新藤)。
レースのコンセプト、新藤の想いが参加者に伝わっている証でもあるのだろう。
 
こうして、GWの10連休が近づいていった。
 
(第4回に続く)
 

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KLTR(Kansai Longitudinal Trail Race)~歴史の道 関西縦断トレイルレース〜

 
 

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