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外出禁止令(ロックダウン)下のトレイルランナー・ライフ in France

2020.04.20

3月17日に全国一斉の外出禁止が発令されたフランス。つまり既に5週間以上、トレイルランナーたちも自宅の敷地外では1日1時間、距離2kmまでのジョギングしか許されない日々を過ごしていることになる。その実情とランナー達の日常を、フランス・メリベル在住の祐天寺りえさんにリポートしてもらった。

文・写真提供:祐天寺りえ



©Kenta OSAKI


フランスで外出禁止令と同時に発令された「ジョギング規制10条」
 


©Kenta OSAKI


①家族や同居者、同僚など自分の周囲に感染者、あるいは風邪気味の人がいる場合は、
自分も無症状なだけで感染の可能性があるので走らない

②いつ検問にあってもすぐに提示できるように必ず外出証明書(氏名、生年月日、出生地、住所、その日の日時、外出理由などが記入された用紙)と身分証明書を携帯

③自宅から500m以内。車などで移動し居住地から離れた場所からスタートすることは禁止

④走行距離は最長2km(パリなど都市部では最長1km)

⑤走行時間は大人1日最長30分。子供と未成年は最長1時間

⑥1人で走る(でも実際には怪我の場合などを考慮。カップルや家族2名でのジョギングは許されている)

⑦人との距離(上記のようにカップルや家族の場合も)は最低1〜1.5mとる

⑧走行中に咳やクシャミが出そうになった場合、前後から人が来ないことを確認してからすることを心がける

⑨インターバルや短距離走など心肺&呼吸器機能を使う練習の禁止(感染後の重症化原因になるため)

⑩道徳を守る


地域による追加条項


『パリ』

外出禁止令の発令後、テレワークや休業者のジョギングが増え、むしろ通常以上に路上に人が溢れたパリとその近郊都市部では、4月8日からは10時から19時までのジョギングも禁止になった。発汗し呼吸も上がるジョギングの場合、人との距離が最低10m必要となるため。
 

『シャモニー』

UTMB(ウルトラ・トレイル・ドゥ・モンブラン)で知られるモンブラン麓の街・シャモニーでは、条項にある距離と時間以外に「標高差+100mまで」という規制も追加。怪我や遭難のための救助や治療により、現在コロナ対策に追われる医療関係への負担をこれ以上増やさないため。


『ニース』

ニースに限らず多くの海岸地域では砂浜や海岸でのジョギングも禁止。これも検問作業に追われる警察や憲兵、そして水難事故による医療関係への配慮から。


検問

検問のスタート時には、指定フォーマットでの外出証明書を印刷あるいは手書きコピーし、検問の際に提示。エコロジーを推進する時代にもかかわらず紙使用を義務付けたのは、携帯登録にすると気軽に外出してしまうに違いないという懸念からだった。それを2週間後からは携帯登録も可能にしたのは、これも警察や憲兵への感染防止のため。QRコードでの1m以上の距離を保った検問が可能になった(スマートフォンを持たない人のための紙による証明書ももちろん可能)。


罰金

検問により違反が判明した場合の罰金は最低135ユーロ(約1万6000円)。15日以内に再び違反した場合は最大1500ユーロ(約18万円)。更に30日以内に違反を再度した場合は3700ユーロ(約44万5000円)+6カ月の禁固刑。
 

【トレイルランナー・インタビュー①】
Sylvain COURT (シルヴァン・クール)36歳

 

2015年トレイル世界選手権(フランス・アヌシー/84km)チャンピオン。それ以前から今に至るまでフランス国内はもとより世界で参戦し優勝&入賞している彼に、外出禁止令中の日常について訊いてみた。

 

1)外出禁止令中、辛いことは?

精神的には大丈夫。なぜなら、以前15年間空軍にいた時、今回も感染が問題になっている原子力空母シャルル・ド・ゴールに乗船中、外出禁止令になったことがあり、既に4ヶ月半に及ぶ外出禁止を経験済み。だから、もし今回の外出禁止が4カ月以上に長引いたとしても自分がどうなるかを予測できる。誰もが同じように辛く感じているのはたぶん、「友人と会えないこと」「バゲット(パン)を気軽に買いに行けないこと」「移動できないこと」。そういう日常の「当たり前だったこと」なんだと思う。でも一番辛いのは、やっぱり天気がよくても山に行けないこと・・・かな。

 

 

2)そういったことへの克服法は?

まずやれること、やっていいことについてはマックスまでやってみること。ただ僕の場合、ちょうど家を自分で建てているところだったから、やること、やらなければいけないこと、やりたいことが沢山あって暇を持て余すということはないのは幸運だったかな。あと庭の手入れや料理も好きだし、特に大工や家庭菜園は今まで時間がなくて充分にはできていなかったから、逆にそれができてとても嬉しい。


3)この外出禁止令のお陰で、見い出したものや良かったことはある?

ウイー! いろいろ、これまでとは違ったことを試せているし、これまでは1週間に1度しかできなかった筋トレも今は2、3度できている。ポールを使った楽しめる練習法にもトライできているし、ずっとやりたかったけれどできずにいたビデオコーチングも始められた。さらにこれからは栄養学やトレーニング術などについても、今まで知らなかったことを深く知って発信したり、いろいろな人とも分け合っていきたいと思っている。


4)外出禁止になってから5週後の今、身体の変化は感じる?

最初の2週間は逆に絶好のデトックス期間になった。予定していた大会が全部キャンセルになって、逆にそれで緊張感もなくなって頭が完全にリラックスしたんだろうね。いつもよりたっぷり深く眠って、今までの何年間分も、100時間くらいは眠った感じ? お陰で精神的にとてもスッキリとクリアに「ZEN(禅)」状態になれた。

そして次には新しいプロジェクトへ視線を、必要に迫られてや義務感からではなく、ごく自然に向けられた。モチベーションがモクモクと身体の底から目覚めた。身体的には体重は変わっていないけれど、有酸素運動力や持久力は減っている気はする。でもそれは当たり前だし、すぐ取り戻せるものだと知っているので大した問題ではないと思っている。一方、柔軟性や体幹力、筋力は前よりついているのを感じている。
 

 

5)外出禁止令前と後の練習量の違い

普段は勤務している月曜日から金曜日までのトレーニングは1日1時間から2時間。週末に5時間から6時間。つまり1週間トータル8時間から12時間。UTMBの前などは1週間に15時間から25時間。それが今は約30%減。1週間トータル4時間から8時間になっている。


6)現在の平均的な1日のプログラム

朝食→2時間トレーニング→昼食→昼寝→筋トレ&ストレッチ。


7)この期間、特に禁じていること注意していること

仕事が休業だとついバカンス気分になるのが落とし穴なので、そこに注意はしている。あとは『夜更かしをしない」「インターネットは極力控える」


8)標高の高いところでの練習不足についての策は?

それについては以前12年間、標高が低く、山がないボルドーに住んでいたことがあって、でも世界レベルを保持&戻せたから心配していない。


9)今年予定している大会は?

10月初めのフレンチ・チャンピオンシップは開催が告示されているから一応、確定。その前にもし開催されればCCCとLes Templiers 、Le Cap Townは出場予定。


10)春夏の大会がすべてキャンセルになってスポンサー契約での問題。あるいは賞金も通年よりなくなる。そういった経済問題は?

まず職業を別に持っているので経済的な不安はない(軍人育成高校での学校内スポーツ&トレーニング用品店に勤務。国家公務員)。もちろん賞金などボーナス的なものは見込めない年にはなるだろう。でもトレイル界はちょっと異質なのかな? そういうことに関しては仲間同士でもコーチ達とも滅多に触れないし喋らない。隠すわけじゃない。ただそこにはなんとなく目を向けたくないっていうのかな。

逆にいうと今、世間は経済について憂い嘆いているけれど、僕らにとっては元々問題じゃないし、もしかしたらこれからもずっと問題にされないのかもしれない。

あと、そうそう。2017年にフランス国内の大会で優勝して「神流マウンテンラン&ウォーク」という日本の大会に出場するための航空券と1週間の滞在権を貰い、15日間日本を堪能。日本人の暮らし方、リスペクト、人情は素晴らしくて大好きな国になった。そういうものこそ経験と想い出になる、僕らにとってはもっとも嬉しい褒美かも。
 


小さな庭やバルコニー、家の前の道でもできる
エクササイズをシルヴァンが動画でアップしている



【トレイルランナー・インタビュー②】
Yann GUDEFIN(ヤン・グドファン)33歳

 

23歳までカヤックのフランス代表選手。現在はカヤックのナショナルチーム・コーチ&バーティカルランナー。選手達への栄養指導でも定評ある彼に、外出禁止令中の食事について訊いてみた。


1)これまで5週間、主にどのように過ごしている?

家の中&家の周りでのトレーニング&料理!


2)料理の魅力ってなに?

なにを食べられるか、なにを食べたいか、それを考えることは「真の喜び」。少なくとも僕にとっては精神的に、そしてポジティブなエネルギーを保つのにとても大切。お腹が健康だと頭も健康。お腹とメンタルは繋がってるからね。


 

3)この外出禁止期間中、食生活で気をつけていることは?

気をつけているというより、いい機会だと思って「よい味」「目にも美しい」「健康的」な料理を毎日作ることに挑戦している。それによって創造性を育めるし、間食や無意味なダラダラ食べをしなくなるし。​あと、この時期に限らず普段から心がけているのは「旬の無農薬の野菜や果物を使う」こと。例えば僕の家の周りにはいま、野生の行者ニンニク(フランス語では熊のニンニク)が生えてるので、それを摘んできてペーストを作り、自家製のパスタと一緒に食べたりもする。

 


他には「肉は週に一度程度にして、プロテインは卵や野菜(アボカド、キヌア、大豆など)から摂る」ようにもしているし「バリエーション豊かになって楽しいからオリエンタル料理やアジア料理も好んで作って食べている」。


4)ナショナルチームのコーチとして選手達にこの時期アドバイスしていることは?

①インスタント食品や出来合いのものを食べない!

工場生産のものには過剰の糖分、塩分、添加物などが含まれ「潜んで」いるから。

 

 

②自分で料理しよう!

日々それをすることでメンタル的にも小さな自信が積み重なる。自分の身体を自分で作っている感覚や確信も持てる。
 



 

③いろいろな色を使おう!

緑・白・赤といった感じで。そうすることで難しく考えたり調べたりしなくても、栄養的バリエーションが自然と増える。

 

④アスリートにはデザート愛好家が多いけれど、この運動量が少ない時期、それについての対処法は?


デザートも自家製ならばほぼ問題なし。糖分控えめにしなくても、市販品よりはずっと糖分は少なくなるはず。しかも手づくりならば旬の果物、そしてナッツ類などもふんだんに使うようになるからカルシウムやビタミンなどよい栄養もデザートから摂ることができる。

 




 


⑤誰かと一緒に食べよう!

1人暮らしの場合は外出禁止令中、難しいことだけれど、できるだけ人と一緒に食べよう。
分け合い、共に味わうことは喜びをさらに高めてくれ、メンタル的充足感も得られるから。



 


フランスのトレイルラン大会の今季の開催予定

 


春から夏にかけて予定されていた大会は当然のことながら全て中止あるいは来年へ延期。ただし、「ツール・ド・フランス」が中止ではなく延期となった発表(8月末スタート)は、トレイル界にも大きな吉報となった。世界最大規模ともいえる国際大会であるツールが決行ということは、その時期までにはほぼ間違いなく外出禁止令および国境封鎖は解除されるという政府や医療機関との確信的予測があってのこと。

つまり先行きがまったく見えなかったトレイル大会も、9月以降のものは中止を免れることになりそうだ、と。そしてそれに伴い、多くの選手達が10月4日のフレンチ・チャンピオンシップを目標に自主練や調整をできるようになった。

また、そのチャンピオンシップについても通常ならばある春から夏までの大会での戦績による参戦選考はなく(即ち誰もが挑戦可能)、更にはその大会結果が11月14&15日のワールド・チャンピオンシップへのチケットにもなるので、大きな可能性と意欲を選手達に与えはじめてもいる。

 

 

 

 

 

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