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【Life with Trailrun WEB】モチベーションは下がらない。小原将寿 〜自分だけの道を極める〜

2020.06.05

2020年、新型コロナウイルスの影響を受け、国内外のトレイルレースは軒並み開催中止に。UTMB2019で8位という偉業を成し遂げた小原将寿さんも、UTMF、モーツァルト100(オーストリア)、UTMBと、出場を予定していたすべてのレースへの出場が叶わなくなってしまった。

いま何を思い走り続けているのか? 小原さん独自の「トレイルラン道」とは?

写真・文=一瀬立子

 


頑固な子供時代

小学生から大学まで野球一筋でした。僕はやりだしたら、物事に深く入り込むタイプです。小学生のときは、帰宅したら毎日素振りをしていました。やっていると手にマメができ、マメがつぶれると血が出ます。それを見て、「自分、がんばっているな」と思っていました。目標に向かってがんばっている自分が好きなんだと思います。母には「お前は子どもの頃から頑固だった」と言われます。自分では頑固にしていたつもりはないのですが、きっと「毎日素振りをする」と決めたら、頑なにそれをやり続けていて、そんな姿が周りの人には頑固者に見えたのかもしれません。

 
家族が寝ているうちに走る

僕は北海道の出身なのですが、家族がとても仲がいいので、大学を卒業したら、地元に帰るのが当然だと思っていました。実際、大学卒業後は地元で就職したのですが、そのときの仕事が営業で、僕には全然合いませんでした。大学では物理を専攻したので、宇宙に関する仕事に就けたらいいなと思い、人工衛星を扱う企業に就職しました。現在は東京で仕事をしています。

 
北海道の家族とはなかなか会えませんが、妻と子どもと過ごす時間は大切にしたいと思っています。自分にとってトレイルランは大切なものだけど、僕の人生において一番に来るものではありません。家族があって、家族のために仕事をして。それがあってのトレイルランです。だから、自分がどんなにレースで良い結果を出したいとしても、できるだけ家族を巻き込みたくない。だから、よく家族が寝ているうちに走っています。暗い中を走ることが多いですね。妻はそんな風にして走らなくていいと言うのですが、僕がそうしたくてやっています。
 
100マイルというロングトレイルレースにおいて世界で結果を出したいと思っています。そのためには、間違いなく絶対的な練習量が必要です。しかし、仕事の時間が不規則なこともありますし、なかなか休みのスケジュールが立てられない時もあります。それでもこなせるシンプルなトレーニングメニューを自分なりに考えました。トレーニング内容はルーティーン化していて、1年を通して基本的にそれを繰り返し続けます。ルーティーンが乱れることは僕にとってストレスになるので、自分が決めたメニューはやり通すことにしています。トレーニングに費やす時間を確保するために、自分にとって優先順位の低いものは極力省いています。
 
例えば、SNS。多くのアスリートはSNSを通じて自分の活動を人々に伝えています。でも、僕は4年前にすべてのSNSを止めました。やっていた時は、多くの方からメッセージをいただいていました。真面目な性格なので、一つ一つ丁寧に返信していると、それにたくさんの時間を使ってしまいます。今はSNSはやらないし、見ないです。他の選手のことはあまり知りませんし、気になりません。本当は、人にどう見られているか、他の選手がどんなことをしているのを気にしてしまうところがあります。SNSを止めてからはそういったことが気にならなくなって、自分に集中できるようになりました。
 
こんな風に時間を削っても、さらに自分の能力を引き上げ、結果を出すにはまだトレーニング時間が足りないと思っています。もう削れるものがない。だから、睡眠時間を削って走っています。平均睡眠時間は5時間半くらいかな。

 

 

40歳までにどこまでやれるか

UTMB2019は1年かけてやれるだけのトレーニングを積んで臨みました。「これでTOP10に入れなければ、自分にとっての限界だ。もうUTMBには二度と出ない」という思いで臨みました。1年間がんばり続けてきた自分に報いるためにも負けられなかった。それは僕の自分に対するプライドのようなものでした。

 結果は8位。夢だったTOP10入りが現実のものになり、自分が積み重ねてきたことは間違っていなかったという確信が持てました。今、37歳。まだやれると思っています。しかし、世界で結果を出すにはスピードが必要。それを考えると、40歳というのが一つの節目だと考えています。
 
UTMB2019で3位だった選手と自分のタイム差は1時間。今までのトレーニング法に+αしていけば、この1時間は縮められると思っています。具体的な目標で言うと、UTMBで22時間を切る。そうすれば、TOP3に入れるはずです。でも、この1時間を縮めることは簡単なことではありません。
 
目標というのは、自分の現状を把握して、それを実現する方法があってこその目標だと思っています。自分をそこまでもっていけると、自分に可能性を感じる。だからこそ、こうして「UTMBでTOP3入りする」と公言できるんです。40歳までのこの3年の間にこの目標を達成できればいいと思っています。UTMBでTOP3に入る。これは夢じゃなくて、目標です。自分がどこまでやれるか見てみたい。
 
  


2020年、UTMFもUTMBも開催中止に

今年出場を予定していたレース、UTMF、モーツァルト100、UTMBのすべてが開催中止になってしまいました。でも、これらのレースは、3年後の目標を達成するためのチェックポイントでしかありません。レースがないからといってモチベーションが下がることはありません。だから、いつも通り走っています。トレーニングには全力で取り組みます。
  
自分で決めた道を淡々と進むだけ。そうやって、トレイルランを始めた時ははるか彼方にあったUTMBの表彰台に立ちました。この先にまだ可能性があると信じ、目標に向かって進んでいきます。僕は負けず嫌いだし、人に認めてほしい気持ちもあります。だけど、僕にとっての最終目標が多くの人に認めてもらえたら、それでいいです。そこに辿り着くまでの道のりは、自分の大切な人にだけわかってもらえたら十分です。自分の求めるものは自分の中にありますから。
 

  

小原将寿にとって、走ることは「矜持(きょうじ)」、つまり、「プライド」。目標を達成するまで、雨が降ろうと風が吹こうと、レースがあろうとなかろうと、彼は自分だけの道を走り続けていく。
 
 
【プロフィール】
小原将寿(おばら・まさとし)
北海道出身。人工衛星を扱う企業の会社員。小学校から大学まで野球一筋。25歳からロードランを始め、2011年にトレイルランの存在を知り、特に100マイルレースに力を注ぐ。15年福岡国際マラソン2時間24分50秒。UTMF2019 4位。UTMB2019 8位。1児の父。



 
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