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【インタビューシリーズ】若者のすべて VOL.1 柿本恵理 〜未来に希望しかない〜

2020.07.01

これからのトレイルランシーンを賑わせてくれるのはやはり若者であってほしい。そんな願いを込めて、10代〜20代のトレイルランナーの今を描くインタビューシリーズ「若者のすべて」。第1回は柿本恵理さん。看護師の仕事をしながらも、彼女が日々走り続ける意味とは?

文=一瀬立子

                                             
                  


写真="ROCKIN'BEAR"黒姫トレイルランニングレース(小関信平)


走ることが大好きな女の子

ーいつから走り始めたのですか?

中学生から陸上競技を始め、800mをメインに走っていました。一番キツいと言われる種目ですが、私はそのキツさが好きでした。高校でも、800m、1500m、3000mに取り組んでいました。その後、看護師の勉強をするために大学に進みましたが、大学でも競技を続け、20歳まで競技会に出場していました。走ることそのものが大好きなんです。生活の一部になっているという感じです。

大学生になってからは、トラック競技だけでなく、マラソンにも興味を持ち始め、19歳の時に初めて東京マラソンを走り、記録は3時間21分。ハーフマラソンしか完走したことがなかったので、初めてのフルマラソンはいい経験になりました。時間が経つと、もっといい記録を出したいという思いが湧いてきて、フルマラソンに向けたトレー二ングを始め、2018年の東京マラソンで3時間1分4秒という記録を出しました。タイムは大分縮みましたが、サブ3をしたかったなという思いが残りました。
 


山を走る!? そんな面白いことがあるの!


学生時代から原宿にある「織田フィールド」というトラックで定期的に練習をしていました。そこで出会った仲間に「スカイランニング」という山を走る競技があることを聞き、さらに、16歳〜23歳までの選手が出場できる「スカイランニングユース世界選手権」が海外であって、国内選考会で好成績を挙げれば、日本代表になることができると知りました。

「山を走るってなに! なんか面白そう!」と思い、仲間に連れて行ってもらって山を走ってみたのですが、平地を走るのと全然違って思うように走れなくて、脚がガクガクになりながら山を下りました。「今までずっと走ってきたのに、こんなにうまく走れないなんて・・・」と悔しくて。何度か山に走りに行くうちに、だんだん楽しくなってきました。
普段はトラック練習やロードランで基礎的な走力を上げ、レースで山の経験を積み、2018年のスカイランニングユース世界選手権の日本代表に選ばれました。
 

 

ー世界で活躍する選手になりたいという気持ちがあったのですか?

そうではなくて、目の前に未知の世界があって、がんばればそのチケットが手に入るなら、やってみようと思ったんです。「スカイランニング」という急峻な山を駆ける競技特性をあまりよく理解していなかったので、講習会に参加したり、山にも通って知識や経験を積みました。それでも、実際に世界選手権が開催されたイタリアの山は、今までに経験したことにないような急登、急角度の下りなどがあり、本当に怖かった。泣きながらも絶対に完走するという気持ちでフィニッシュ地点を目指しました。同じユース代表のみんなが迎えてくれて、あのときは本当にうれしかったです。無事に戻ってきたと思ったら、また安堵の涙が出てきました。

今は、スカイランニングはお休みしていますが、海外の世界選手権に出たことは、ランナーとしてまた一ついい経験になりました。


長く走り続けるために手術を選んだ


山で何度も捻挫を繰り返しているうちに、靭帯が緩んでしまいました。走ることは生活の一部なので、手術するかしないか、何度も医師に相談しました。悩みましたが、今後も長く走り続けるために思いきって手術を選びました。手術を決めたのは、走るためだけではありません。今では山が大好きで、この先もずっと山に行き続けるためにも緩んでいる靭帯をどうにかする必要があると思ったからです。

2019年の11月に手術をし、リハビリを続け、最近になってやっと毎日のジョグに耐えられるようになってきました。山にも行き始めていますが、今でも痛みがあるときは練習を控えています。
 

 

私はあまり物事を考え過ぎないようにするところがあるので、手術後の走れない時期も「これからよくなっていくんだ」と前向きな気持ちで過ごしていました。でも、ここ2年の自分の成長ぶりを思い返したときに、目標としていたところにたどり着いていないなと思い、2020年の初めに3つの目標を立てました。

前向きな気持ちだけではやりたいことを達成することはできない、具体的な目標を持たなければと思ったからです。あまり先のことまで考えても仕方がないので、1、2年先の具体的な目標を立て、常にそれを自分に意識づけようと、ベッドの前に目標を書いた紙を貼りました。
 

目標は、2020〜21年に向けたものです。
1.信越五岳110kmで入賞すること
2.  フルマラソンでサブ3をすること(3時間を切って完走する)
3.信越五岳でポイントを得て、OCC(UTMBのレースカテゴリーの1つ、56km)に出場すること
なかなか大変な目標ですけど、目標に向かっていくのは楽しいです。
 

自分の未来が楽しみで仕方がない

 

ーコロナ禍の中、看護師の仕事をしながら走ることは大変ではありませんでしたか?

現在は福祉施設に勤めているのですが、特に緊急事態宣言が出されてから解けるまでは、感染者を出さないように、また、自分が感染しないようにと、毎日緊張状態でした。ニュースでいわれていたように、実際にマスク不足に陥ったこともありました。みんなで手作りマスクを作って凌ぎました。

そんな中でも人に接しない場所や時間を選んで毎日のように走っていました。モチベーションが下がることはなかったです。走ることは生活の一部であり、レースがなくても走り続けることが私のやりたいことだからです。

 

ー新型コロナウイルスの影響を受けて、世の中は大きな不安に包まれていますが、
20代の女性として未来に希望は持てますか?


今がどんな状況であっても、未来には常に希望があると思っています。もちろん、世の中の情勢によって不安や大変なことはありますけど、それよりもまず「自分がやりたいこと、なりたい自分」について考えるのが一番だと思います。まだ若いと言ってもらえる世代だからこそ、今、この時を悔いなく過ごしたい。「あのとき、やっておけばよかった」と悔やむようなことのないように行動していきたいです。

看護師としての仕事もやり甲斐を感じて楽しくなってきたところです。仕事をしながらも、大好きなランニングも能力を高めていきたい。そうやってなりたい自分をイメージしながら暮らしていると、自分の未来が楽しみで仕方なくなってきます。

誰かと比べて焦るようなことはなくなりました。他の人に対して「羨ましい」と思うのは、自分にその部分が足りていないから。じゃあ、その足りない部分がなんなのか知って自分で埋めていけばいい。自分にフォーカスすれば、自分のペースでやりたいことができるようになっていくと思います。

5年後、10年後のことはあまり考えません。少し先の未来に、理想の自分の姿をイメージして楽しく進んでいきたいです。
 


「いまどきの若い子は」などと言うのは、古臭い大人の固定観念だ。若者はしっかりと地に足を付けて、一人の大人として前を向いて、楽しみながら今を歩んでいる。
柿本さんが走る姿に「私も走りたい!」という若い女性が増えていくことを期待している。


【プロフィール】
柿本恵理(かきもと・えり)24歳
看護師 / ロードランナー / トレイルランナー
コロンビア モントレイル アスリート
2018年 東京マラソン3:01:04
2018年 スカイランニングユース世界選手権日本代表
2019年 奥久慈トレイル30K 優勝
2019年 SPA TRAIL 38K 優勝
2019年 Aso Round Trail 56km 2位


【インタビューシリーズ】 若者のすべて VOL.2 横内祐太朗

 

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