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【連載】「RUNNERS’ TALK」 海外トレイルレースの魅力って? 最終回   文=吉本 亮

2015.02.20

 海外トレイルレースにチャレンジするための、さまざまなノウハウを紹介してきた、吉本亮氏の連載エッセイ。最終回となる今回は、海外レースをとりまく「住環境」についてのアドバイスを紹介しよう。     

                      
 海外レースに参加すると、レースの前後を含めて現地滞在が長くなる。必ず宿泊施設を利用することになるし、長丁場のレースでは途中で寝る必要があったりと、住環境はさまざまだ。居心地がよければ無駄に体力を消耗せずにコンディショニングできるけど、実際にはいろんな環境がある。でも、シリアスにとらえなければ、それもまた楽しめる要素に。これまで私が経験してきた、海外レースの住環境で、変わったところや参考にしてほしいポイントを挙げていこう。

■ニュージーランドの宿
 人気レース「ケプラーチャレンジ」の舞台であるニュージーランド南島はバックパッカーが多く、ユースホステルやバックパッカーズホテルが充実している。その中でも一風変わった宿が「ワゴンステイズ」。ワゴンというのは、なんと馬車! 物件が物件だけに、宿の場所は郊外の森の中。

 車内は外見と違ってベッドやキッチンのほかにトイレもシャワーもあって、エアコンも装備。外装が幌製なので断熱性が気になるけど、ダブルウォールなので、外が寒くても室内は暖かい。

 お風呂に入りたい人は馬車の前の広大な広場に風呂桶が置いてあり、お湯を張ってテンガロンハットを被って入るのがワゴンステイズ流だ。周りはぜんぶ牧場だから、ひと目を気にする必要ナシの開放的な入浴ができる。

 夕食と朝食はオーナーが作ったキウイ料理を運んできてくれる。キウイ料理というので、フルーツか、まさか絶滅の危機にある鳥の料理? と思ったが、じつはニュージーランドの郷土料理をキウイ料理と言うらしい(笑)。




写真左上|ワゴンステイズ外観。どう見ても馬車だけど、  樽にはプロパンガスが入ってます
写真右上|壁と天井を気にしなければ、内部は普通のホテ  ルです
写真左|ニュージーランドの伝統的な食事。魚とじゃ
いもが多い

 

 

 

 

 

 

 

■キリマンジャロの住空間

 標高6000m近いキリマンジャロ山頂への道は大きく2つあり、山小屋に泊まって3日間で往復するマラングルートと、テント泊をしながら1週間で往復するマチャメルートがある。

 登頂率はマラングルートが約50%、高度順応しながら登るマチャメルートはほぼ100%と大きく違いがあるため、私はマチャメルートを選択。この時はツアー会社から「山頂はマイナス20度近くになる時もあるから対応するシュラフを用意して」と言われたので、マイナス25度対応のものを用意していった。

 しかし実際に標高6000m近くまで登るのは山頂アタックの一瞬で、ほとんどが4500m付近をトラバースしてばっかり。テントの外が凍ることもあったけど、ダブルウォールということもあってテント内は最低でもマイナス3度ぐらいで済んだ。
 ツアー会社が用意したマットの他に、持参したエアマットを使ったけど、その威力は絶大で地面が冷たくて石がゴロゴロしていても心地よい眠りにつけた。
 住環境を改善してくれるエアマットは、寒さや不整地での寝心地だけじゃなく、振動対策にも効き目があった。遠征でフェリーを使う際、小刻みな振動が体に響いてあまりよく眠れなかったところ、エアマットを敷いて寝たら、船の中と意識せずにしっかり眠れた。

写真左|キャンプサイトは水がないので、ポーターが運んできます
写真右上|6日間シャワーもないので、髪の長い女子はたいへん
写真右下|標高4500mぐらいなので朝起きるとテントは凍ってます



■パプアニューギニアの環境

 パプアニューギニアで開かれる、ジャングルの中を100km走るココダチャレンジ。現地の住居は、スコールがあるためか、日本の古代建築と同じく高床式が主流。さらにマラリアが蔓延しているために、どの寝室にも蚊帳が用意してある。

 商店はさらに変則的で、暴動や略奪が勃発するために村のよろず屋には普通の窓がない。倉庫みたいな建物の正面に30センチ四方の窓があるだけで、買い物客はここから倉庫内を見回して、「アレとコレとソレ」と注文するシステム。
 日本にある開放的なスーパーは首都のポートモレスビーに1軒だけで、地元の人達はバッグ類を入り口に置いてからしか店内へ入れない。

 パプアニューギニアは、ちょっと郊外に出るとケニアなどよりも開発が遅れており、マサイ族なんて普通にケータイを使うし家にはテレビがあるのに対し、こちらの山間部では電気も水道もケータイ電波の中継アンテナもない。レースの係員は全員、衛星ケータイを使うほどだ。

 飛行場もあるけれど、ローカル空港になると滑走路からして未舗装のトレイル。着陸のショックより、タキシングのガタガタ感が大きく、飛行機内の住環境はあまりよろしくなかった。

 ちなみにパプアニューギニアのおみやげはブルーマウンテンコーヒーで決まり。なんで?と思うけど、じつは本場ジャマイカで栽培していた人が苗木を持ってきて植えたところ、偶然にも同じ気候で本場に負けず劣らずの美味しいコーヒーが収穫できるようになったとのこと。値段も安いし本場では縮小傾向にあるので、コーヒー好きならおすすめの一品。



写真左上|床をもっと上げて、雨宿りができる高さを確保した民家もあった
写真右上|この穴から店内を見て指さして注文する。SPは現地のビール名
写真下|着陸すると村じゅうの人が何かおこぼれを期待して集まってくる



■イタリア・トルデジアンのライフベース
 1週間に渡る長距離レース「トルデジアン」は、ベッドが用意してあるライフベースが6箇所ある。
砂漠マラソンだと期間中はテント泊で、ずっとシャワーを使えないから二の足を踏む人もいるけど、トルデジアンではベッドとシャワーが使えるので綺麗好きにはウレシイ。その住環境を紹介しよう。
1つめは「Valgrisenche」。赤いパイプがチャーミングなフカフカのベッドが約10床備えてある部屋がいくつかある。まだスタート1日目で差がついてないからごった返してる。

 2つめは「Cogne」。暗い体育館に簡易パイプベッドが多数。静かにしなければならないので、ちょっと気を使うところ。上記2箇所が普通に夜眠れる環境で、3つめ以降から関門の時間が明るい方にずれてくる。

 3つめは「Donnas」。教室2つ分ぐらいの広さにパイプベッドが多数あり、まだ明るい夕方のことが多いけど、体力を温存したいからとりあえず寝る。これまでテントだった食堂がここは屋内。この後に中間地点の山小屋であるCodaがあり、2時間程度の仮眠を取る人が多い。

 4つめは「Gressoney St. Remy」。ボルダリングの壁がある小さな体育館に配置された簡易パイプベッドに寝る。ガラスで仕切られているから静かで、ここも屋内、体育館内で食事ができる。

 5つめは「Valtounanche」。巨大な体育館に簡易パイプベッドがたくさん並べてあり、明るい中で寝る。マッサージのサービスが流行っている。

 6つめは「Ollomont」。テントの中の簡易パイプベッドで寝て、食事は屋内。もう制限時間が迫ってきていることもあり、ゆっくり眠っていられない雰囲気がある。テント内のすだれの向こうでは治療が行なわれており、さながら野戦病院だ。時間の経過とともに集団がバラけてくるため、ライフベースは小さくなっていく。また、ライフベースのほか、協力的な山小屋では2時間だけ眠れるように開放してくれるところもある。


写真左|到着が夜だし居心地もいいけど、ちょっと混雑する1日目
写真右|2日目は体育館に簡易ベッドなので耳栓などが必要



写真左|明るいうちに到着する3日目は快適な室内。でも早めに出発
写真右|ボルダリングの壁があるちょっと小さめの体育館が4日目


写真左上|5日目は広い体育館で、隣のマッサージルームが繁盛中
写真右上|最終の宿となる6日目はテント製。関門が気になり早々に退出
写真下|現地の人が村の壁に「がんばれマコト」と掲げててびっくり
 

 ここんところUTMBに一極集中しがちな海外のトレラン大会だけど、面白い大会は他にいくつもある。
海外旅行ついでにちょっとレースに出たいなら、渡航先のレースをチェックして旅行の計画を立てるのもいい。ガッツリ走りたいなら、UTMBのサイトにあるポイント対象レース一覧を出して、国名と高めのポイント数で検索すればぴったりのレースが見つかるはず。
 
 海外レースでは、日本と違ってレースなのに制限時間が無かったり、制限時間内なのになぜかエイドが撤収されていたり、コースマップがもともと無かったりと、想像を超えた運営にぶつかったりもする。そんな衝撃もありつつ、自然景観、暮らし、風習など、日本にはないものを吸収できるのが最大の魅力だ。

 私自身、これからも海外のいろんな大会に挑戦して経験値を高め、これから海外レースにチャレンジしたい人たちに、その魅力を伝えていきたい。


【プロフィール】
吉本 亮(よしもと・まこと)

UTMB、PTL、トルデジアン、ココダチャレンジなど海外のトレイルレースに数多く出場し、なぜか日本よりヨーロッパで有名。トレイルランではいかに速くではなく、いかに楽しめるのかを追求し、ライフスタイルも定職につかない遊び優先の生活を実践中。
http://tokyobanana.com/index.html

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