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連載 「Top Runner's Voice」。第3回 丹羽 薫

2015.07.17

 MtSNに会員登録しているトップランナーの、バックグラウンドや活動ぶりを紹介する連載 「Top Runner's Voice」。第3回で紹介するのは、丹羽 薫さん。2014年のUTMFで8位(日本人2位)、2015年5月のトランスバルカニアで9位に入るなどロングレースでの活躍が目立つ丹羽さん。MtSNのTRランキング は現在女子2位。ヨット・山岳スキーを経て、たどり着いた現在について語っていただきました。



愛犬マルク(左)とチョキ(右)と共に自宅のテラスで。
丹羽選手とトレイルランを結びつけた大切な存在


大学卒業後は海外へ

「大学時代はヨット部で、国体に出場したり、かなり真面目に競技に取り組んでいました。それで卒業後は、高校のヨット部の顧問として残る話ももらっていたのですが、ずっと動物と関わる仕事がしたかったんですね。動物だったらなんでも大好きで、犬でも馬でもシャチでもよかったんですけど。仕事として考えると馬がいちばんよくて、調教師の勉強をするためにオーストラリアに渡りました。幸い向こうで競馬学校に就職することもできて、結局6年くらい向こうにいたことになります」


愛犬デーモンと山に入る

 その6年間の海外生活を終え、オーストラリアで飼っていたデーモン(オーストラリアン・ケルピー)とともに帰国。「オーストラリアの大自然で放し飼いで好き勝手走り回っていた犬だったので、帰国してからもできるだけ運動させてやろうと思って、当時住んでいた六甲の山を一緒に歩くようになったのが、思えばトレイルランの始まりでしたね」
 その頃は山を走る競技があるとも知らず、山ガールの格好をして、登山靴ではあったが、かなり速いペースで山を駆け回っていたそう。しかも頭の中にはいつも「もっと速く移動できないものか・・・」という考えがすでにあったというから、もともとランナーとしての素質があったのだろう。



2015年4月に開催された第10回山岳スキー競技日本選手権大会では女子4位に入賞
 

「山スキーやボルダリングもやっていたのですが、結婚が決まり、ウエディングドレスを着るには、あまり上半身がムキムキではいけないというので、しばらく休むことにしたのですが、「なんかやりたいなー」という気持ちはあって、たまたま結婚前の職場にトレランを真剣にやってるおじさんがいらしたので、連れて行ってもらうことになりました。2010年の春頃です」

 とにかく「ジェルは1時間に1本」「登りも可能な限り走る」「立ち止まらない」という硬派なそのおじさんの教えを信じ、なにも分からずに初めてトライしたトレイルランはなんと「六甲全山縦走50K」。残念ながら、他の仲間が足を痛めたこともあり、20kmほどでみんなと下山することとなった。
「だけど感覚的には“全然走れるもんやなぁ。楽しいなぁ”という印象でした」。しかし結婚後で多忙だったこともあり、しばらくは月に1回程度山を走る生活が続いた。


デーモンとのお別れ

「京都に引っ越してきて、しばらくしてデーモンが亡くなりました。自分もつらかったんですが、一緒に暮らしていたチョキもすっかり元気をなくしてしまい、チョキを元気づけるために山に連れていく日々が始まりました。チョキも山に行くと元気に走り回るようになったんですね。犬って、登りが速いんですよ。とても追いつけないくらい。キリアンより速い(笑)。それで私もゼェゼェ言いながら必死でついていくと、頭が真っ白になって・・・。いわゆるペットロスって言うんですかね、そういう気持ちも紛れるなって」
 デーモンが亡くなった大きな喪失感を埋めるため、チョキを少しでも元気にするため、往復15kmくらいの距離を全力で走る日々が続いた。それである時ふと、「こんなに走ってるんやったら、レースとか出たらイケるんちゃう?」と思って。それで初めて出たローカルレースで2位になりました。それが2012年12月のことです。
 

国内トレイルラン大会での快進撃

 山岳スキーで培った基礎体力と、最強の練習パートナー・チョキとハードな練習を積み重ねた日々は、知らぬ間に丹羽選手を国内トップレベルのランナーへと押し上げていた。出場するレースでは、ほとんどが上位。実質的な初めてのシーズンとなる2013年には、美ヶ原トレイルラン&ウォークinながわ70Kで優勝し、一躍トップ選手となる。夫・紀行さんや山で知り合ったランナーと結成した「チームチョキ」も総勢25名ほどに増え、仲間の輪も広がった。表彰式にチョキと一緒に上がると、チョキは自分も表彰されている気分になっていることが分かるという。そして気持ちは早くも海外のレースへ。


はじめての海外レース・トランスバルカニアへ

 最初にトレイルランを教わったおじさまに借りた『激走!モンブラン』のDVDを観て、海外レースに憧れていた丹羽選手。2015年シーズンは、UTMBへに挑戦すると決めていた。しかし残念ながら抽選で外れてしまい、目標を失ってしまう。急遽、新しく目標にしたスカイランナー・ワールドシリーズ、ウルトラの部第1戦、トランスバルカニア(※スペイン・カナリア諸島で開催。距離73km、累積標高8525m)にエントリーしようと思い立ったが、気がついたときには少し遅く、ウェイティングリストに。

「だけどすごく出たかったので、大会組織にメールを送ったんです。どうしても出たいという思いと国内での成績を書いて。どうせだめだろうと忘れかけた頃に、参加してもいいよ、というメールが来たんです」

 トランスバルカニアも出られないと思っていたので、ほとんどの週末はスキーの予定を入れていた。今年4月に行なわれた山岳スキー競技日本選手権で4位に入賞。それが終わってから、トランスバルカニアに向けた調整が始まる。

 


2015年5月、スペインで開催された「トランスバルカニア」で女子総合9位。
自身初の海外レースだったが、その実力を見せつけた


「海外のトップ選手が集まるし、自分では50位くらいに入れたらいいかなと・・・。松本大さんからは30位以内を目標にするよう言われました。かなり暑くなると聞いていたので、それは日本人の私には有利だなという意識はありました。走り出したら最初の15kmくらいが砂礫で想像以上に走れない。自分は走る競技をやってこなかったから、走れないほうが得意。イケるかもと思いました。それに島で行なわれるレースだから盛り上がりが凄いんですよ。それもすごく力になりました」

 中盤の溶岩の硬いトレイルなども気持ちよく走ることができたが、まだ50位くらいを走っている気持ちだった。熱狂的な応援はほとんどがスペイン語で何を言ってくれているかは全く分からなかったという。しかし後半に差し掛かる頃、一人の英語を話せる人が教えてくれた一言で更に気持ちに火がついた。「あんた12位だよっ!」

「カウントし間違えていると思ったんですね。だけど何人か間違えていたとしても15位くらいにいるのかも知れない。もしかしたらトップ10に入れるかも知れない。そこからは一生懸命走りました。エイドでもほとんど時間を使わないように心掛けました。向こうは下りが得意じゃない選手が多いのか、どんどん他の選手をパスすることができました」
 そして結果女子総合9位でフィニッシュ。愛犬と山を走り出してまだ3年の選手が世界の舞台でこれほどの活躍をするとは、誰が予想しえただろうか。


これからの目標

「やはり一度はUTMBに出たいです。だけどアップダウンが激しいスカイレースのほうが自分には向いているなというのが最近分かってきたので、将来的にはそちらのほうをメインに出たいと思います。アンドラとかピレネーとか」
 コースが厳しければ厳しいほど、自分らしいレースができるという超長距離ランナーとしての最高の資質を持ち、長い海外生活の経験から国際感覚も併せ持つ丹羽選手。今後も海外での活躍に期待したい。
「ただ、チョキが今12歳と高齢なので、犬の寿命を考えると、チョキの心配をせずに海外のレースに出られるのは来年が最後かなと」
 この愛犬への想いもまた丹羽選手の強さの秘訣の一つのようだ。

文・写真=新名健太郎

 


夫の紀行さんと愛犬たちと、自宅リビングでくつろぐ。
なによりもリラックスできる時間だ

 


丹羽 薫(にわ・かおり)
三重県で生まれ、岡山で育つ。高知での大学時代はヨットに明け暮れ、卒業後はオーストラリアへ。念願だった馬の調教などの仕事に携わる。帰国後は神戸に住み、六甲山で犬の散歩をしながらボルダリングやスキーに熱中。結婚して京都に引っ越してからトレイルランニングと出会い、元々山やキャンプなどのアウトドアが好きだったのもあり、すっかりはまる。じつは結構ゲーマーだったり、ピアノも習っていたが全部やめて、現在はトレイルランとスキー三昧の現在を送っている。愛犬と野山を駆けめぐるのが最高の幸せ。
※丹羽さんのMtSNマイページへのリンクはこちら

 

【2015年の戦績】

トランスバルカニア・ウルトラ(スペイン)9位
※スカイランニングワールドシリーズ ウルトラクラス第1戦目
第1回 Mt.Hiei INTERNATIONAL TRAIL RUN 50km 優勝
第3回 スリーピークス八ヶ岳トレイル One Pack Line 38k 2位
美ヶ原トレイルラン&ウォークin ながわ80K(スカイウルトラ日本選手権)2位


【2015年・今後の出場予定レース】

7月 富士登山競走 The 4100D マウンテントレイル in 野沢温泉
9月 ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)
10月 日本山岳耐久レース(ハセツネ)
11月 FAIRY TRAIL びわ湖高島トレイルランニングinくつき


連載【 Top Runner's Voice バックナンバー】

第1回 小川壮太
第2回 宮﨑喜美乃

 

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