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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.19 2014年の勇者たち (14)山本寛人

2016.02.20

<憧れから挑戦の舞台へ>

 TJARの存在を知ったのは08年大会の前だ。
 「飴本さんが挑戦すると聞いて、すごい大会があるなと。当時は丹沢や奥多摩ばかりで、まだアルプスに行ったことがなかったので、想像がつかなかったですね。おもしろそうだな、いつか出てみたいな、と思ったけど、仕事柄、そんなに長く休みが取れないので、あきらめていたというか、あまり考えないようにしていました」
 山本の仕事は介護職で、連休が取りづらく、休日でも職場から電話がかかってくることが珍しくなかった。出場できる大会は限られるうえ、遠方の大会参加も難しかった。TJARに興味を感じるも、現実的には無理だと思っていた。
 この頃から山本は、平日の休みの日に自分一人でも挑戦できる目標を立てるようになった。
 「小さな“野望”です。『丹沢ぐるっと一筆書き(70km)コースタイム48時間』とか『富士山の4ルートをぐるっと一筆書き』とか『一人箱根駅伝(大手町~箱根を往復217km)』とか……」


13年に「一人箱根駅伝」を初めて達成した。ゴールの大手町、読売新聞社前にて。記録は31時間44分


 ちなみに「富士山一筆書き」は13年8月に、国内トップトレイルランナーの近藤敬仁が11時間53分で達成したことが知られている。
 「あんなに速くは行けないけど(笑)、まる一日かけて、2008年にやりました」
 4ルート一筆書きを達成後に思いついたのは「富士山頂でウルトラマラソン」だ。
 「富士山を下から登って、山頂のお鉢をグルグル回って、めざせ100km(笑)」
 富士山頂の噴火口周囲のお鉢巡りは、一周約2.5km。一般の登山者では一周1時間半くらいかかるのが標準的だ。ここで100kmのウルトラマラソンとなると、単純に計算しても40周となる……。しかも山本の挑戦は、馬返し(0合目)から山頂までの往復も含む。
 「今まで2回チャレンジしたんですけど、17、18周あたり、フルマラソンくらいの距離で高山病がひどくなっちゃって。頭が痛くてもうダメで、ほとんど歩きました」
 「富士山頂でフルマラソン」でも十分常識を超えたチャレンジだが、山本の“野望”はあくまでウルトラマラソン。休日、天候などいくつかの条件が重ならないと挑戦できないが、「いつか達成したい」と意欲を見せる。



「富士山頂でウルトラマラソン」に最後にチャレンジしたのは14年8月初旬。そのときの富士山からの写真

 

 09年頃からはアルプスにも通うようになった。初めてのアルプスは日帰りだった。南アルプスの広河原~白峰三山~奈良田~鷲ノ住山~夜叉神峠。走力には自信があったが、当時案内してくれた知人についていくのに必死で、きつかった、と振り返る。

 「ただ、天気はよかったので景色がすごくよかったことと、連れていってくれた方が歩きながらアルプスや丹沢の話などいろいろ教えてくださって、すごく思い出深い旅でした」
 10年には、初めて1泊で南アルプスの黒戸尾根~甲斐駒ヶ岳~北沢峠~仙丈ヶ岳~北沢峠(ツエルト泊)~甲斐駒ヶ岳~黒戸尾根を縦走した。
 「シュラフカバーだけだったのでちょっと寒かった記憶があります。100円ショップのお風呂の内蓋をマット代わりに使っていましたが、背中の肉が厚いのか、意外に平気で、しばらくはマットを買わずにそれを使っていました」

 アルプスに足を運ぶたび、壮大な景色、魅力に引き込まれ、同時にTJARへの憧れも強くなっていた。13年にはトレーニングキャンプに参加した。
 身近な存在である飴本が、08年大会、12年大会と2度出場(10年大会は選考会で不合格)、完走したことにも刺激を受けた。
 そして14年大会前は、たまたま転職のタイミングと重なった。山本は入社に際し、「夏に1週間の休暇がほしい」と希望を伝え、会社側は了承した。TJARへの挑戦が現実味を帯びてきた。
 めざすと決めてからも、山本の生活が大きく変わることはなかった。走り始めた頃から、年に一度、「フルマラソンでサブスリー」を自分に課していた。月間走行距離は300kmを保っていた。UTMF(12年26時間54分)、大江戸小江戸200km(13年優勝)など、ロングレースでも実績を積んできた。限られた連休には、アルプスに足を運んだ。
 「私はケチなところがあって(笑)、山小屋はあまり利用したくないんです。荷物も全部、自分で持ちます。特別なことをしなくても、普段のそういうスタイルがよかったと思います。ただ、連休が少ないので、2日とか3日間動くということがあまりできなかった。行けるときはなるべく泊まりを入れたり、夏だけじゃなくて冬山も始めたり……。1年を通していろいろな環境に対応できるようにしました」
 限られた山行を自分のペースで楽しむことが、TJARに必要な総合力のベースとなっていた。

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