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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.19 2014年の勇者たち (14)山本寛人

2016.02.20

<残り2日間と思っていたが…>

 台風の影響が懸念された2014年大会、山本は出場選手30人中、10番手前後で進んでいた。一ノ越の稜線以降は、松浦、大西靖之と前後しながら進んでいた。



立山・室堂をめざす途中で景色を撮ろうと小休止(写真=藤巻翔)

 

 「薬師岳のあたりは初めてだった」こともあり、台風の中を進むのは、一人では危険だと判断した。
 スゴ乗越小屋からは、船橋智、飴本も加わり、5人で前進した。薬師岳からの下りは、山本にとって初めて経験する状況だった。
 「吹きさらしで、岩で隠れるようなところもなかった。風がすごくて、立って歩けなかった。這うまではいかないけど、しゃがむ感じで下っていました」
 先頭が松浦、山本は2番手で進んでいた。激しい暴風雨で視界は10mほど。後ろが少し遅れるだけでも姿が見えなくなり、心配になったという。
 「5人で進んでいたので、後ろが少し離れると心配で、松浦さんと少し待つんですけど、お尻をつけて待たないとあおられて飛ばされそうだった。雨も痛かったですね。(ウェアから)出ている顔の部分に、子どもが全力で小石を投げつけてきているような感じ。一人じゃ、やばいなと思いました」
 薬師岳山荘に到着後、一時待機となり、朝5時にレースは再開した。



室堂から一ノ越をめざし、雪渓を歩く山本(写真=杉村航)

 

 その後も、中盤あたりの位置で進んでいたが、北アルプスを下りてから、調子が上がらない実感があった。
 異変を感じたのは、中央アルプスに入ってからだ。
「中央アルプスで『体が変だなという気がしていたんですけど、歩くと息が上がって、全然体が動かない。動かないから体温が下がる感じで、まずいなと……」
 中央アルプスの後半は、西田由香里と前後することが多かった。序盤の立山ですごいスピードで自分を抜いていった山本の調子が悪そうな様子に、西田は驚いたという。だが、調子が悪そうにもかかわらず、幾度となく、自分の前を力強い足取りで進む山本の姿に、「すごい人だなと思った」と西田は語っていた。
 山本の目線では――。
 「木曽殿山荘、空木岳あたりで西田さんと前後することが多かった。一度は先行してもらったんですけど、西田さんが小屋に立ち寄ったタイミングで、また私が前に出て。で、後ろから追ってくるから、追われると思うと逃げたくなって(笑)、力が出て頑張れた、という感じでした」
 空木岳からの下りでは一緒になり、会話をしながら下山した。



中央アルプスの稜線を進む(写真=佐藤籤岳)

 

 ロード区間は道をロストする箇所もあったが、前進を続けた。市野瀬のデポで休息後、南アルプスへ。仙丈ヶ岳に向かう登りでは、体を動かしているのに寒さが止まらないことに不安を感じていた。
 「雨が続いていたこともひとつだと思うんですけど。ずっと濡れている状態で体が冷えて……。あとは疲れで高度順応ができなくなっていたのが大きかったのかなと。だいたい高度順応がうまくいかないときは頭痛がひどくなるんです。でも息が上がって歩けない、というのは初めてだった。息が上がって足が止まって、体が冷える……という悪循環でしたね」
 このとき、実際は残り3日あったが、山本は2日しかないと思い込んでいた。夜間のうちに塩見岳を越えないと完走は難しいだろう、と考えていた。
 もう一つ、山本の中で、前進に向けて強い気持ちになれない理由があった。初日の台風の中、薬師岳越えをしてよかったんだろうか、という疑問が、ずっと頭に残っていたという。
 「事故なく済んだのはよいことではあると思いますけど、台風に対して、できるからやっていいというわけではなく、常識的にやめなきゃいけなかったんじゃないのかな、と。それがずっと、頭の片隅にありました」
 南アルプスに入り、仙丈ヶ岳から先、3000m級の山が続くことに、このままの体調で臨むことに不安も感じていた。
 「もし万が一、自分に何かが起きて、誰かにお世話にならないといけなくなったときに、関係者にも迷惑をかけるし、前半の台風のこともあるからまずいな、と……」
 横川岳付近では、動けないことによる体温低下の自覚があった。「この先、進んだ場合、低体温症で迷惑をかけるかもしれない」――その可能性が高くなったこと、さらに今の状況では関門に間に合わせるのは難しいと感じ、山本はリタイアを決めた。


宝剣岳の岩稜地帯を進む山本(写真=藤巻翔)

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