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【連載】「RUNNERS’TALK」 ウルトラトレイルレースの魅力とは? 第1回  文=野間陽子

2014.09.22

なぜ私はウルトラトレイルレースを走るのか

 よく聞かれるこの質問は、私にとって難問中の難問です。真剣に考えても簡単に一言で言い表すことができない、上手く言葉にしきれない質問なのです。今回から4回に分けて、自分自身の経験を元に、ウルトラトレイルレースの魅了を紹介していきますが、これを機に、私自身がその魅力について、ゆっくり考えてみたいと思います。

 まずは、私がウルトラトレイルレースを走るようになった経緯から。出産後から放置し続けて形成された、だらしない体型を何とかしようと思い、一念発起して走り始めたのが11年前でした。はじめは皇居1周5kmを走りきる自信さえなく、1周1kmあまりの小さな公園をぐるぐる走ることからのスタート。そこから少しずつ走る距離を伸ばし、無謀にも参加した初フルマラソンは、6時間をやっと切れるレベルでした。それでも、走ることを続けていくうちに、基礎体力と心肺機能の進化を感じることが楽しくて、気づいたら4年後にはフルマラソンを3時間12分で走り、国際女子マラソンの舞台に立っていました。

 ちょうどその頃、山好きの友人から「フルマラソンより少し距離は長いけれど、珍しい企画だからやってみたら?」と教えてもらったのが、2007年OSJハコネ50Kレース。山やトレイルの世界とは無縁だった私は、試走するという発想すらないまま、いきなりトレイルレースの本番デビュー。レース後、熱を出すほど酷い筋肉痛に見舞われましたが、11時間あまりかけて完走できた自分のポテンシャルに心底驚きました。
   その経験がきっかけとなり、私はトレイルレースにはまっていきました。登りはつらくて心肺機能も脚力も限界かと思うけれど、下っていくうちに心肺機能が落ち着いて疲労回復し、また登りに挑んでいける身体の変化を感じることが心地よかったのです。クライミングを始めた人がより険しい岩壁を目指していくように、緑の中、風を感じながら足元に集中して走るトレイルレースの楽しさに、完全にのめり込みました。

美しいモンブランのもと開催されたUTMB2013。大会中は天候に恵まれ、星降る夜空の下を走り続けてたどり着いたエイドステーション、クールマイユールにて

 

2011年ハセツネで暗闇のトレイル初体験

 トレイルレースを始めてから4年が経過しても、夜間走行は危険だから絶対にできないと思っていました。ところが、ひょんなことから2011年のハセツネに参戦。40歳代女子3位のメダルは涙が出るほど嬉しかったです。夜のトレイルも、レースでなら安全を確保して走れることを知りました。ウルトラトレイルレースのスタートラインは、着実に近づいていました。
 2012年5月、私のウルトラトレイルレースの舞台の幕が開けました。生涯初のウルトラトレイルレースは、タイムリーに開催されたUTMF 2012。ここでウルトラトレイルレースには睡魔との闘いがあることを知りました。人間として必要な睡眠をとらずに走り続けるウルトラトレイルレースですが、一時的に体内時計を覚醒し続けるよう調整することで、身体能力の限界に挑戦することができます。ウルトラトレイルレースにおける不眠不休との向き合い方は、UTMF2012の後、UTMF2013、UTMB2013、UTMF2014、Andorra Ultratrail2014と100マイルレースを4本走った今も、最大の難題です。

スペインとフランスに挟まれたピレネー山中にあるミニ国家・アンドラ公国で行われたAndorra Ultratrail2014。走行距離170km、累積標高差13000mのコースは、ヨーロッパで最も厳しいと言われている

 

過酷な状況下で本当の自分と向き合う

 長距離で厳しいコースのウルトラトレイルレースを走る間には、さまざまなシチュエーションで自分自身と向き合います。ポジティブな自分、ネガティブな自分、強い自分、弱い自分。極限で見る自分自身は飾ることも偽ることもできない自分自身。本当の自分としっかり向き合える特別な時間です。
 その舞台には光を通して輝く緑や、樹の香り、爽やかな風と世界を照らす太陽、せせらぎの音や静かに佇む植物、さらには、脚を止めてヘッドライトを消せば、降るような星空があるのです。
 走るのはひとりですが、同じ時空を共有しながら多くのトレイルランナー達と一緒に走れるのも、レースの魅力です。頑張っている同志がいるからこそ、もっと自分も頑張れる。これも、素敵な感覚です。

 そして、レースにおける一番の魅力は応援してくれる人々と出会えること。スタートを見送ってくれて、フィニッシュを待っていてくれる方々、エイド・ステーションや山小屋で温かく迎えてくれ、元気をくれ、優しく送り出してくれるスタッフの方々。応援してくれ、支えてくれる人々の温かさに触れられ、心が豊かになっていきます。

ウルトラトレイルレースの魅力をゆっくり考えながら書き出してみて、思いました。「なぜ私はウルトラトレイルレースを走るのか」。それは、やはり簡単に一言では言い表すことができないものでした。こんなに沢山の魅力があるウルトラトレイルレースを、私は体力の続く限り、ずっと走り続けると思います。


野間陽子(のま・ようこ)
1965年愛媛県松山市生まれ。東京都千代田区在住。マラソン歴11年、トレイルランニング歴7年。「UTMB 2013」44時間25分、「第21回日本山岳耐久レース」11時間09分、「UTMF 2014」35時間50分、「Andorra Ultratrail 2014」55時間21分。次のウルトラトレイルレースは10月にアフリカのレユニオン島で行なわれる「グランレイド・レユニオン」。

 

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