MtSN

登録

連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.21 2014年の勇者たち (16)石田賢生

2016.03.18

<2度目のTJAR>

 自分が高山病になりやすい、と感じたことはなかった。それを自覚したのは、11年夏、TJARの練習で、阪田とミラージュランドをスタートし、北アルプスを通して縦走していたときだ。
 「けっこうハイスピードで登ったら、早月尾根の途中で高山病みたいにフラフラになって動けなくなって。やっぱり(高地に)弱いんだ、と……」
 12年大会に向けては、高地順応のため、毎週のように日本アルプスや富士山に足を運んだ。
 「富士山の五合目で車中泊したり、山に行ってテン場で寝たり……。自分なりに高山病対策を考えていろいろやりました」

 そして12年大会、無事選考会をクリアした阪田とともに、TJARのスタート地点に立った。序盤は、阪田、小野雅弘とともに第2グループを形成、順調にレースを進めていた。上高地を越え、奈川渡ダムあたりから阪田たちが先行。石田はひどくなってきた咳が気になっていたが、調子は悪くなかった。中央アルプスも越え、南アルプスへ。12年にリタイアを決めた仙丈小屋を無事通過。「ご主人の宮下さんに元気な姿を見せることができてよかった」と石田。しかし、荒川岳を過ぎて、痰に血が混じっていることに気づいた。いちばん見たくないものだった。
 「やっぱりか……」
 絶望的な思いが頭を駆け巡った。だが、あきらめたくない……。石田は、チェックポイントを通過すればどんなルートを通ってもよいというルールを鑑み、一度下山することを考えついた。
 「荒川岳から赤石岳を通って一度下山して、椹島(標高1120m)で1日寝て休もうと。完走までは時間があったので、回復してからまた上がれば、完走できるかなと」
 実行委員に連絡を入れるも「一度下りてまた登ったときの再発の可能性をよく考えてほしい」と難色を示された。実は、スタート前のブリーフィングで、主催の岩瀬幹生が、選手たちに「前回は無理して入院した人がいる。くれぐれも無理しないように」と話していた。石田は釘を刺されたかたちだ。
 「荒川岳から先に進むと、しばらくリタイアポイントがない。どうするか……」
 12年大会は、NHKのテレビ取材も入っていた。このリタイアを考えている間も、カメラは回っていた。無理は許されない。石田はリタイアを決めた。

 


12年大会、南アルプス・塩見小屋でカップ麺を食べる石田(写真=藤巻翔)

 

 2大会続けての無念のリタイアとなったが、石田の気持ちは、次大会に向いていた。
 翌、13年夏には、阪田とともに、TJARの全コース試走に挑んだ。
 「8日間以内を目標に、ゆっくりめのペースだったので重い高山病にはなりませんでした。上高地から中央アルプスに向かう途中、疲労で潰れて一人になって。寝たら復活して、宝剣山荘で阪田くんに追いついて、ゴールまで一緒でした」
 記録は7日間16時間。「やっと太平洋までつながった!」という思いとともに、14年大会への手ごたえを掴んだ。あとは本戦で、どこまでペースを上げられるか……。



13年夏、7日間16時間で日本アルプス縦断を果たした。ゴールの大浜海岸にて、阪田(右)と(写真提供=石田)


 14年に入り、石田は「根拠に基づいて高山病対策を考えたい」と、三浦雄一郎氏が代表を務めるミウラドルフィンズを訪ね、低酸素室に入っての「高所テスト」を受けた。結果は「肺年齢52歳」という判定だった。
 「スタッフの人から、呼吸筋を鍛えるといい、とアドバイスを受けて。それからはストローに綿棒を入れて吹いたり、『パワーブリーズ』(空気を吸う際に負荷がかかる特殊な器具)を毎日くわえるようにしました」
 さらには、血中酸素濃度が自宅でも測定できるパルスオキシメーターを購入、普段から山に行くときに持って行き、「今どういう状態か」を把握するようにした。それによってわかったことがある。
 「登っているときは、血中酸素はあまり下がらないんです。ピークから下るときに、意識して呼吸をしないせいか、血中酸素がすごく下がる。登りは頑張るから自然に呼吸ができるけど、下りでもしっかり呼吸する、というのを意識するようにしました」
 血中酸素濃度が下がったときに、意識的に呼吸をすると、数値が上がった。繰り返すうちに「血中酸素が下がっているというのが、感覚でわかってきた」と石田は言う。
 「高山病っぽくなってきた、と思ったら意識して呼吸することで、悪化せずにすむこともありました」
 パワーブリーズの数値(レベル)が上昇し、呼吸筋が鍛えられていることも実証されていた。

最新ニュース

小川壮太プロによるPRO TREK Smart 体験イベントレポート
2019年9月に登場したカシオのスマートウォッチ「PRO TREK Smart」の体験講習会レポート。PRO TREK Smartを使えば、心拍数を計りながら、さまざまトレーニングができます。
レッドレンザーNEO10Rは隅々まで明るい!
独自の集光技術で広範囲をムラなく照らすレッドレンザーのヘッドライト。障害物や凹凸のディテールをくっきり照らす!
進化したインソール、シダス「ラン3D」新登場
安定性と衝撃吸収力の高いラン3DプロテクトJPと、しなやかで軽量なラン3DセンスJP。自分の走りにマッチするモデルが選べる。
過去の記事を見る
MtSNが過去に掲載した注目の特集・連載記事のアーカイブ。ニュース記事のインデックスとしてご利用ください。
トレイルランPRニュース
イチ押しの大会や、最新のギアやサプリなどの注目情報はこちら!