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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.22 2014年の勇者たち (17)中村雅美

2016.04.04

<TJARへの挑戦>

 TJARへの挑戦のきっかけは、2010年に遡る。10年、12年大会に出場した宮下晋とトレイルランを通じて出会ったことがきっかけとなった。
 「宮下さんが、TJARについて『素晴らしいレースだ』と目をキラキラさせて話していて。何回か話を聞くうちに、そんなに素晴らしい世界があるなら、ちょっと見てみたいと思ったのがきっかけですね。その頃は日本アルプスにもまだ行ったことがなくて。どんな景色なんだろう?と。自分には無理かなと思ったけど、やるだけやってみようかなと……」
 12年大会をめざそうと、南アルプスに足を運ぶようになった。だがその年の選考会では落選。
 「地図読みと筆記試験がダメでした。筆記試験はコースを走り終えた後にやるんです。ゴールして燃え尽きたときに用紙を渡されて、(疲労で)自分の名前も漢字で書けないくらいだった。めちゃくちゃなことを書いていたと思います」

 12年大会では、中村はレース終盤、畑薙第一ダムのボランティアスタッフを務めた。
 「畑薙だと、選手はみんなボロボロになって降りてくるんです。そういう姿を見て、かっこいいなぁと。特に印象に残っているのは、やっぱり宮下さん。夜中に、ボロボロの状態で。『ポール1本なくしちゃった、もうリタイアする』と散々言っていたけど、結局ゴールまで行った。その精神力がすごいなと。あと宮崎崇徳さん。常に余裕をもって、わざとギリギリを狙っているのかと思ったら、走っていて。宮崎さんも走るんだ、と(笑)」
 選手たちを間近に見て、レースへの興味が強くなった。だが「絶対出る」という強い意気込みがあったわけではないという。
 「出られたら頑張ろう、というくらい。そんなに自分に自信がないので、選考会で落ちてもしょうがない、みたいな感じでした」

 14年をめざす過程では、前述のイーストウインドへの加入があった。TJARを意識して、イーストウインドのトレーニングに参加した後、南アルプスに登ることもあった。アドベンチャーレース・エクストリームシリーズ奥大井大会の後に、車で畑薙まで行き、車中泊してTJARの逆コースで赤石岳までを往復することもあった。だが、13年11月のコスタリカ大会での大ケガ、入院による影響は小さくなかった。
 「入院で体力も落ちてしまって……。十分な練習はできなかったですね」
 それでも、地道にトレーニングを続けた。思うように練習を積むことはできなかったが、選考会も「落ちてもしょうがない」と力みのない状態で挑んだ。結果は合格。抽選会もクリアし、中村はTJARのスタートラインに立つことになった。

 


TJAR2014、ミラージュランドでの開会式(写真=杉村 航)

 

<TJAR2014、中央アルプスにてリタイア……>

 14年大会は、悪天候でのスタートとなった。一ノ越から先は米田英昭、柏木寛之、朽見太朗とともに前進した。突風に飛ばされないように、男性に挟まれるかたちで歩いた。
 「風が本当に凄かった。かなり危険を感じました。強風にあおられっぱなしで、ちゃんと歩くことができない状態がずっと続いていた。前後に男性が歩いてくれて、なんとか進めた感じでした。もう必死でしたね。まわりの選手がいなかったら、私は一ノ越でやめていたかもしれない」
 「這う這うの体で」(中村)スゴ乗越に到着。ここでのビバークは、TJARの行程の中でも最も印象に残っているという。
 「ストックシェルターを張ったけど、ビショビショで寝られない。その後、本部から停滞命令が出て、一度小屋に入ってまたシェルターに戻ったんですけど、一睡もできなかった。シェルターの中で3cmくらい水に浸かって、マットがプカプカ浮いている中で、寝転んで。『これはないよ~』と思いながら。強烈でしたね、あれは」

 


悪天候によりコース変更に。最初のロードを終え、立山駅を通過する中村(写真=杉村 航)

 

 楽しかった記憶は、上高地からのロードの途中にある「スーパーまると」でのひと時だ。
 「ロードは本当に足が痛くて、全然進めなかった。お店が全然なかったけど、やっと直売所のお店があって、トマトを買って。あまりにおいしくて、その後のスーパーまるとでもトマトを買いました」
 米田、柏木、仙波憲人らと談笑しながら、つかの間の楽しい時間を過ごした。



北アルプスから中央アルプスをつなぐロード。奈川渡ダムを通過する(写真=宮上晃一)

 

 その後は、足の痛みとの戦いとなった。
 「はじめは足首あたりが痛かったのが、だんだん全体が痛くなって。最後はまったく足が動かなくなって……。疲労でリンパ液が全部下半身にたまった感じで、足が曲がらない状態。足のふやけ、マメもできて、砂がふやけた深い皺に入って、針が刺さったような痛みも出て……。もう、ありとあらゆる痛みが足に集中して、どこが痛いって説明できないくらい、あちこち痛かった」

 


中央アルプス・駒ヶ岳に向かう(写真=藤巻 翔)

 


駒ヶ岳山頂にて(写真=藤巻 翔)

 

 中央アルプスも入ると痛みはさらに増したが、一歩一歩、歩みを進めた。
 「痛みで中央アルプスも全然動けなかった。それでもまだ完走できるつもりでいたんです。空木岳を越えたあたりで、自分は気分よく走っているつもりなのに、ハッと我に帰ったら、何回も転んで全然進んでいなくて。そこからリタイアがよぎり始めました」
​ 頭の中で思い描いている行動と、自分が実際にやっていることが合っていない――そんな経験は初めてだった。
 「ちょっとこれは完走できないかなと……」
 悩んだ結果、この状態で進んでも関門には間に合わない、と判断。中村はリタイアを決意した。大会本部に連絡を入れた後、ちょうど一緒になった阿部岳史から「あきらめるのはまだ早いよ」と励まされた。その言葉に「リタイアを取り消そうかな、とちょっと気持ちが揺らいだ」が、もう足は思うように動かなかった。
​ 初挑戦のTJARは、中央アルプスで幕を閉じた――。

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