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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.22 2014年の勇者たち (17)中村雅美

2016.04.04

<2015年、10日間かけ“裏”TJAR踏破>

 15年夏、中村は、岩崎勉、福山智之、宮崎らと“裏”TJARに挑んだ。
 「岩崎さんに誘われて、楽しそうだな、やってみようかなと。軽いノリでした」
 5日目、南アルプス・熊ノ平で、三伏峠の関門時間に間に合わないと判断、マイペースで進むことに切り替えた。北荒川岳付近で関門時間を越えたが、中村は前進を続けた。終盤は天候も悪化し、風雨のなか前進を続けた。

 最も苦しんだのは、畑薙からのロードだ。
 「よく、TJARは畑薙から先が本番だ、と言われているんですけど、本当にあの道はきつかった。相当、ビバークしましたからね。一人で『もーやだー!』『足痛いー!』と叫びながら。近くに人がいるときは黙々と(笑)」
​ そして、10日間をかけて大浜海岸へ。
 「けっこうかかりましたね。あきらめてもよかったんですけど、静岡の方たちがすごく応援してくれて、車で併走してくれたので、やめるにやめられない状態でした(笑)。歩く人のほうが速いくらいに、足が痛くて進まなかった。応援の人のおかげで最後まで行けました」
​ 海岸が近いことを感じてから、とめどなく涙が出ていた。安堵、感動、嬉しさ――いろいろな感情が入りまじり、何の涙なのか本人にもわからなかったという。
 「何も考えられなかった。ただただ泣いていました」

 


2015年の“裏”TJAR、10日かけて大浜海岸にたどりついた(写真提供=奥島弘三さん)

 
​ 10日間かかったものの、全行程を自分の足で踏破した。16年大会への思いは――。
 「実力がまだ足りないんじゃないかなと……。でもやってみないとわからないし、もう1回やってみたい気持ちはあります」
 トレイルラン、アドベンチャーレース、ロードのマラソン……さまざまなジャンルのレースに参加しているが、共通するのは「レースを楽しみたい」という思いだ。中村にとって、TJARの位置付けもまた同様だ。
 「どのレースも同じように楽しみたい。TJARもその中の一つです」
 できるかぎりの準備はしている。
 「南アルプスには何回か行きました。あとは近いのは筑波山。TX(つくばエクスプレス)のつくば駅から筑波山に行って、キャンプ場でテントを張る練習をして戻ってくる、というのもやりました」
​ チャンスがあるなら頑張りたい――そこに気負いはない。

 


14年大会、中央アルプスを進む(写真=藤巻 翔)

 

 TJARの魅力について、中村は「レースだけどレースではない、ちょっと過酷な大きな旅というところ」と言い、こう続けた。
 「出場選手の数が少ないので、連帯感がある。1000人、2000人規模の大会と違って、みんな顔もわかるし、途中で一緒にご飯を食べたり、経験を共有できるのがいいなと。あとは景色が素晴らしい。朝から晩まで、一日中ずっとアルプスの中にいて、素晴らしい景色を一人占めできる、ゆっくり体験できるのが魅力だと思います」

 タイでの初レースでMTBで落車してケガをして以降、アドベンチャーレースでの落車による脳挫傷、練習中の落車による鎖骨の骨折……と、ケガの多さも知られるところだ。

​ 15年に初出場したUTMFでは頭部を切り流血した。
 「もう、十八番なんです」と中村は苦笑する。「他の人よりケガし慣れているかもしれない。でも痛いのは嫌いです(笑)」
​ このとき、流血しながらも、31時間17分46秒の好タイムで13位に入った。サポートについた夫は、中村にとって最大の応援者であり、理解者だ。
 「UTMFは、長くて長くて、天気も悪かった。でも今年も優先枠で出られるので、楽しく走りたいなと」
 そう中村は語る。今後も、それぞれのレースを楽しみたい、と思っている。
 「好きなのは、長い距離のトレイルレースと、フルマラソン。MTBは今ちょっとトラウマになって怖いですけど、地に足がついているレースは、やめようとは思わないですね。長い距離のトレイルは旅のような感じが好きで、フルマラソンはタイムを追い求めるのが楽しい。歳なので(笑)あまり無理しないように、これからも自分なりに楽しんでいきたいですね」
 中村の“競技人生の第二章”は、続く。
 

■中村雅美(なかむら・まさみ)  写真=小関信平
​1963年東京都生まれ、千葉県在住。中学、高校は陸上部。800mのベスト記録は2分17秒。40歳過ぎてからMTBを始め、45歳からランニングを始めた。2010年から国内の国際マラソンに出場。13年アドベンチャーレースのイーストウインドのメンバーに加入、コスタリカでの世界選手権に出場したが、終盤にMTBの落車で脳挫傷という大ケガを負った。14年、TJAR初出場。

<主な戦績>
フルマラソン 2時間58分53秒(13年名古屋ウィメンズマラソン)
UTMF 31時間17分46秒、13位(15年)
日本山岳耐久レース 10時間27分40秒 9位(13年)
OSJおんたけウルトラトレイル100km 12時間33分42秒 2位(11年)

 

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