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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.25 2014年の勇者たち (20)朽見太朗

2016.06.08

<TJARへの道のり>

 13年4月、朽見はUTMFに出場し、完走(31時間24分58秒)。この後、TJARに向けて始動した。
 「6月後半から10月初めくらいまで、休みの日はほぼアルプスに行っていました」
 ちょうど仕事で職場の異動があり、“超”多忙となり、バドミントンから離れた時期でもあった。休日はすべて山にあてた。金曜の仕事を終え深夜に帰宅、仮眠をとり、早朝に車で出発、アルプスへ。1泊2日の山行を終え、日曜の夜中に帰宅し、月曜からまた仕事、というのが週末のサイクルだった。
 「平日は始発で行って、仕事が終わって家に帰るのが夜中の2時頃。13年は本当にしんどかった。特に、土曜に山に向かうときの車の運転が、(眠くて)現地に着くまでが大変でしたね。帰りは途中のパーキングエリアごとに仮眠を取りながら……」
 TJARをめざすと決めたからには、生半可な準備で臨むつもりはなかった。多忙を極めるなか、山へ行くことも妥協しなかった。

 山に行くのは基本的に単独だ。一度、危険な思いをしたことがある。13年7月、中央アルプスの木曽駒ヶ岳から空木岳をめざそうとしたときのことだ。
 「早朝に木曽駒頂上山荘を出て宝剣岳を抜け、檜尾岳との間付近で誤って1回転し、頭を強打。もう少しで伊那側に滑落する寸前で左手が岩にかかり、なんとか滑落せずにすみました」
 時間は朝6時、稜線は無人。駒ヶ岳ロープウェイはまだ運行していなかった。「幸い頭や意識は問題なく、早く下山して病院に行くために檜尾岳まで進んで下山しました」
 左手の中指が反対側に曲がっていたが、診断結果は「脱臼」。大事に至らず安堵したが、「当時は非常に仕事が忙しく、極度の寝不足と疲れでボーッとしてしまった。今思うと反省しています」と朽見は振り返る。

 TJARへの道のりにあたっては、「特別なことはしていない」と朽見は言う。
 「とにかく本戦と同じコースを、本戦と同じ装備、ペースでなるべく本戦と同じ時間にたどる、それをずっと繰り返していた」
 それが冒頭の山行記録だ。
 高所順応のため、低酸素設備を備えた施設での低酸素トレーニングにも通った。
 地道な努力が実り、14年大会の選考会をクリア。抽選会も通り、本戦への出場切符を手に入れた。

 アルプスでの山行では、悪天候に見舞われることもあった。
 「本戦の3週間前、最後の調整で南アルプスに行ったんです。ものすごい暴風雨で進めなかった。このくらいの風だと行動不能直前なんだなと……」

 朽見が山に行く際に心掛けていることの一つが「テント場以外の場所では寝ない」こと。
 「山に入るうえでマナーは守りたいので、極力テン場で寝るようにしています。でもこのときは、塩見岳の稜線に一度出て、これは吹き飛ばされると思い、少し戻ってビバークしました」
 悪天候を経験することで、新たな気づきもあった。
 「どのくらいの悪天候だと行動不能なのかという判断力が身につくのと同時に、天気が悪いとギアの性能がよくわかる。ここまで雨風がひどいと、これを着ていても寒いんだとか、そういうことがわかるのは大きかった」

 繰り返し試走を行なったことにより、朽見は本戦での行動計画の目安を次のように設定した。
<1日の連続行動時間は17~19時間程度、休憩時間は6時間(内訳は、就寝準備45分+睡眠時間4時間30分+出発準備45分>
 さらには「テン場で寝ること」を自分に課した。置かれた環境で最大限のでき得る準備をし、14年大会の本戦に挑んだ。

 


ミラージュランドでの開会式。ビブスナンバー3が朽見(写真=杉村 航/MtSN)

 

<嵐で始まった14年大会>

 本戦は、台風の接近により序盤のコースが変更された。38㎞のロードを終え、朽見が立山駅に着いたのは30番目、つまり最後尾だった。調子が悪かったわけではなく、想定したとおりのレース運びだった。朽見は言う。
 「TJARはロードの距離は全体の50%ですけど、かかる時間は3割を切るんです。最初のロードで人より1、2時間遅れようがあまり関係ないかなと。自分は一定ペースで行くタイプ。ロードは最後尾でしたけど、登り始めて、室堂のあたりでは中盤の集団に追いつきました。重要なのは、山での行動スピードだと思っています」

 


立山室堂付近を進む朽見(写真=杉村 航/MtSN)

 

 一ノ越から先は、米田英昭、中村雅美、柏木寛之とともに進んだ。本連載の各選手の記事にもあるように(※バックナンバーのリンク)、ここではアドベンチャーレースチーム「TEAM EAST WIND」の「なんちゃって」雰囲気で、朽見も「コンディションは本当に厳しかったけど、どこかで団結して楽しんでいるところがあった」と言う。
​ この後は飯島浩、仙波憲人も加わり6名での行動となった。風雨の激しさは、本戦3週間前に南アルプスで経験した暴風雨を超えていた。スゴ乗越に到着したのは20時前。迷わずビバークを決め、ストックシェルターにもぐりこんだ。その後、実行委員代表の飯島からスゴ乗越にいたメンバーに召集がかかり、台風により小屋での一時待機、さらには「台風の経過を待ち、朝4時まで待機」という決定事項が伝えられた。一度撤収したびしょ濡れのシェルターを再度張り、仮眠をとったが、体力的にはもちろん、精神的な負担も強いられた。「初日の行動時間が長かったわりに質の良い休息がとれず、厳しい出だしとなった」(朽見)

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