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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.25 2014年の勇者たち (20)朽見太朗

2016.06.08

<「完走できないイメージはなかった」>

 2日目以降も天候は回復しなかった。3日目には天気が回復し、濡れたものを乾かせるだろうと期待したが、それも叶わなかった。
 「台風一過で天気が回復するかと思ったら、どしゃぶりの雨……。薮原に向かうロードの歩道も川になっていました。木曽駒ヶ岳の登山口も増水して沢のようだった」
​ 木曽駒ヶ岳に向かう途中、玉乃窪山荘までの登りは「左側は切れ落ち、岩が多くストックも使いにくい。夜に通りたくないナンバーワン」の区間だったが、「カラダにムチを打ち」前進。駒ヶ岳頂上山荘に着いたのは23時を回っていた。1日の行動時間は最も長い20時間となった。
 「その日はすごく寒くて、明日こそは晴れてほしいな……と思いながらビバークしました」

 翌朝4時過ぎに起床し、準備を整え、シェルターの外に出ると、待ち望んでいた日の光が差していた。見事な日の出をバックに宝剣岳の岩稜地帯を進む写真は、トレイルラン雑誌の表紙にもなった。
 「ようやく晴れたという感じでしたね。あの日は、大原選手と前後しながら、気持ちがいい景色を眺めながら行けました」

 


朝日を浴びながら宝剣岳の岩稜地帯を進む。「すごく寒かった」と朽見。手にはゴム手袋(写真=藤巻 翔)

 

 レース中は、疲れを残さないよう序盤から意識的にストレッチ、マッサージなどを取り入れ、定期的に足裏のケアを行なった。後半は膝の痛みに見舞われたものの、レース続行に影響するような大きなトラブルはなかったという。
 膝の痛みには、ストックを使ったり、歩き方を工夫することで脚への負担軽減を図り、「とにかく膝を壊さない」ことを意識した。
 5日目以降、南アルプスに入ってからも雨、風が続く悪コンディション。疲労も重なるなか、「ペースが上がらないなりに一定のペースを心がけた」。南アルプスの終盤には、逆に前を行く大西靖之、松浦和弘との差を詰めた。

 そして畑薙第一ダムからの最後の85kmのロードでは、残り30kmまでは快調に進むものの、最後の最後で足裏の痛み、マメに悩まされた。「どうにもこうにも動かない足を引きずって」ひたすらゴールをめざした。
 静岡駅の手前で7日を越えた。大浜海岸に着いたのは、17日の2時半をまわっていた。深夜にもかかわらず、大勢の応援者が駆け付けていた。そして、7日間2時間36分でゴール……。

 大浜海岸をめざす途中で7日間を越えたときは、悔しさも感じた。あらためてゴールを振り返り、朽見は言う。
 「3時間の関門延長があったので、単純に(ゴールタイムから)3時間引けば、7日間は切れている。あのコンディションのなか、停滞があって、それでも7日ちょっとでゴールできた。もう少しコンディションが良ければ7日は切れたんじゃないかなと。次は絶対、晴れた景色のなかで楽しみたいなと思いました」



ゴールでは「人生初の」シャンパンファイトを経験した(写真=杉浦征人)

 

 台風接近と序盤のコース変更により、当初立てた行動計画は「あまり考えずに」進んだという。それでも「毎日の睡眠時間を含め、ほぼ予定通りにいった。計画のプラス2時間くらいで進むことができた」と朽見。本戦と同じ条件で試走を繰り返すうちに、安定したペースが体に染みついていた。
​ 1日の睡眠時間は、多少の誤差はあるものの、計画どおりの「だいたい4時間30分」だった。眠れないこともなかったという。
 
「えらそうと思われるかもしれないけど」と前置きをし、「正直、完走できないイメージはなかったです」と朽見は言い、続ける。
 
「タイムを狙うわけではなくて、自分ができるレースの中で、速くがんばってみようという方が大きかった。完走の秘訣というよりは、想定して繰り返しやってきたことが、そのまま完走につながったと思います」

 14年大会の報告書を記載するにあたり、レースの行程を振り返ると、どの場面も鮮明に脳裏に蘇った。朽見の報告記録は全選手中でも抜きん出てボリュームがあった。
 「正直、自分でもあんなに細かく覚えていると思わなかったです。メモとかもまったくとらなかったんですけど。どこで何を食べたとか、何を考えていたとか、誰と会ったかとか……はっきり覚えていましたね」

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