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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.27 2014年の勇者たち (22)田中尚樹

2016.06.30

<12年大会は7日間18時間13分​で完走>
 選考会をクリアし臨んだ10年大会は、中央アルプスの手前でリタイアした。
 「雰囲気に呑まれた感じでした。僕、いちばん遅いんじゃないかと思うぐらい走力が低いんです。当時は選考会の点数をもらえたんですけど、けっこうギリギリでの合格だった。その後、練習のために毎週のようにアルプスに通って、装備も揃えて。本戦の前日も結局あまり寝られなくて、(スタート地点の)富山に来るだけで疲れてしまった」

​ スタートしてからも調子の悪さを感じていた。

 「事前に立てた計画通りに行こうとして、ちょっと無理しながら頑張った。でも足もあちこち痛いし、内臓も調子悪いし、エネルギーも切れて寒くて仕方がなくて……。ちょっと無理することを続けていたら、もたなくなった」
 3日目、中央アルプス手前の藪原で雨にたたられ、体調がさらに悪化。田中はリタイアを決めた。1年前に一通りコースを踏破しているとはいえ、勝手が違った。
 「やっぱり、1日に進む距離が違うとダメージも全然違いました。ダメージに対応する能力とか諸々、足りなかったなと……」



10年大会は中央アルプス手前・藪原でリタイアした(写真提供=田中)

 

 次こそ完走したい――田中は12年大会へ向け、気持ちを切り替えた。
​ 10年大会では、山岳セクションは調子よく進んでいても「(ロードに)下りるとダメージが増す感覚があった」と振り返る。

 12年大会に向け、ロードを強化するべく、100kmのウルトラマラソンや「川の道フットレース」250kmの部など、ロードの長距離のレースに出場した。
​ 長い距離のレースだと、やっぱりいろいろ(アクシデントが)起きるんです。例えば、足がむくんでシューズに入らなくなったり、足の裏がマメだらけになったり、胃腸のトラブルが起きたり……。そういうのをいろいろ経験して、こういうときはこうすればいいとか、これが効くとか、自分なりの対処方法がわかってきたのはよかった」

 12年大会直前の7月には、アルプスの3000m峰に毎週のように登り、高度順応を図った。「ギリギリで完走すること」を目標に、「なるべく走らなくてもいいように、ダメージが残らないように考慮して」計画を組んだ。毎日3時間は寝ること、足のケアをしっかりすることにも重点を置いた。
​ そうして臨んだ2度目のTJAR。
​ 初日、スゴ乗越序付近でハンガーノックに陥ったり、2日目、太郎平小屋では財布を汲み取り式のトイレに落とす(ザックに予備のお金を入れていたため事なきを得た)など、序盤からアクシデントが続いた。さらには、胃の痛み、足のマメにも悩まされた。
​ そのなかでも「頑張らない」を意識し、7日間18時間13分、16位(完走18名)でゴール。
 「少しずつ無理をしてしまった」という10年大会とは対照的に、12年大会は「毎日少しずつ計画より遅くなった」が、マイペースを貫いたことが完走につながった。
​ ゴールの大浜海岸では、11年に結婚した妻が本戦前に生まれた長女を抱きかかえ、出迎えてくれた。
 「10年大会は楽しさを感じる前に終わってしまった。12年はすごく楽しかったですね。完走できて本当によかった」。充実感に満たされた。



12年大会、奈川渡ダムで装備を乾かす田中(右) (写真提供=田中)

 


2度目の挑戦で完走! 記録は7日間18時間13分だった(写真提供=田中)

 

 完走は果たしたが、12年大会を振り返ると改善すべき点がいくつも出てきた。
 「どうしても山小屋でダラダラしたり、無駄な時間がけっこうあった。そういうのをちょっとずつ削っていくのと、あとはもう少しロードを練習したら、さらに短縮できるなと」
​ 妻と話し合い、子どもが1人の間は参加してもいいということになり、田中は14年大会もめざすことにした。ロードを強化するため、12年大会前に250kmの部を完走した「川の道フットレース」520㎞の部に、13年、14年と出場した。
 「1回目はすごく苦労したけど(131時間)、2回目は112時間でゴールできた。ゆっくり走り続けると、いつまでも走り続けられるイメージが持てました」と田中は言う。
​ さらに、田中が影響を受けたのは、12年大会、3位でゴールした木村正文だ。
​ 「僕の中では、12年大会の木村さんのレース運びがMVPだと思っています。考え方はシンプルなんですけど、自分のポテンシャルを最大限出してゴールされたんじゃないかなと」
​ 中でも参考になったのは、食事のとり方や睡眠時間の確保だ。
 「あまり山小屋を利用せず、1時間おきに補給するとか、毎日の睡眠が5時間とか。僕は10年大会のときは余裕がなくて、1時間半くらいしか寝られなかった。やっぱりそれでは持たなかった。いろいろ試して、自分の場合は3時間がベストかなと。よく聞くのが、前半はほとんど寝ずに、後半に寝すぎたとか。そういうのはもったいない気がする。同じペースで睡眠をとれたらベストだと思います。そう思っても、なかなかうまくいかないのがTJARだと思うんですけど(笑)」

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