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藤川健さんスペシャルインタビュー

Q.日本百名山連続登頂の構想はどこから?

 以前から、いつか日本百名山を登りたいと思っていたんです。 一般的に登山というのは、ひとつの山に登って下りる行為なので、山の思い出は別々に記憶されますよね。 でも、僕は百個の山を、できるだけひとつの基準から見てみたいと思ったんです。それで、百名山をひとつの山行としてつなげて登ろうと思いました。
 昼に通過する山もあれば、夜に通過する山もあります。悪天候の山もあれば、良い天候の山もあるでしょう。 それらの山々は、すべてひとつの山行のなかの、あるシーンとして記憶されます。夜に登っても何も見えないじゃない? と思う方もいるかもしれませんが、真っ暗で静まりかえった山を歩くと感覚が鋭くなり、風の音や動物の息遣いなどをより感じられます。 視覚的には見えなくても、むしろ山を深く感じることができるんです。こうやって僕なりのスタイルで、百名山の新しい魅力を伝えられたらと思います。

Q.日本百名山はどのくらい登ったことがありますか?

 それがですねー、夏山登山としてはほとんど登ったことがないんですよ(笑)。 スキー登山で冬季は行ってますが、北海道はともかく、本州の夏山登山は槍ヶ岳と奥穂高岳くらい。 でも、日本百名山への想いは強くて、実は5年くらい前から「百名山貯金」をしていたくらいです(笑)。 ここにきて、経費の一部を援助してくれるというスポンサーが現われて、「いまこそ、この貯金を使うべきときだろう!」と決意。 結局、赤字計画のまま突入しちゃいましたが……。余談ですが、ライフワークのスキーで「百名山を滑る」というのも、いつかやってみたいですね。

Q.最速記録をねらうための装備や計画は?

 行程は、北から南へ進むということ、最初が利尻山で最後が宮之浦岳ということくらいしか決めていません。 途中については、天候や体調などを考慮し、進みながら決めていく予定です。
 登山は、基本的に日帰りか、山中は1泊まで(テント泊)。山と山の間は車で移動し(※運転手は別に手配)、車中で体を休めるつもりです。 できるだけ体力の消耗を防ぎ、回復を早めるためにも、山中で2泊以上はしないつもりです。 あと、あまりみすぼらしい格好で走っているのも避けたいので、できればお風呂に毎日入りたいかな(笑)。 食料も持つけど最低限。下山時に、地元のB級グルメなどおいしいもので体力を付けたいです。
 装備は、シューズは2種類で合計6足、バックパックも2種類。山によって使い分けます。 そのほかの装備についても、公式ホームページで詳細を掲載しています。 また、百名山挑戦中も、できるだけ装備についての情報をアップしていく予定です。

Q.「ライト&ファスト」のスタイルに思い入れがあるようですが?

 僕は、この百名山連続登山を通して、「ライト&ファスト」が安全登山につながるということを、ぜひ多くの人に知ってもらいたいです。 装備がないときに体力だけで自分がどれだけ動けるかを知ること、また装備がなくてもある程度動けるような体力を付けておくことは、 どのような形式の登山においても大切なことだと思います。装備不足というと非難の対象になったりもしますが、 実は、体力をはじめ技術、知識がしっかりあれば、多くの装備不足はカバーできるんです。 だから僕は、〝登山において最も大事な装備は「体力」〟だと考えています。
 たとえば山岳救助の現場でも、現状は人と装備がそろわないと、なかなか出動となりません。 でも、もしトレイルランの経験豊富な救助隊員がいたとしたら、まずは最低限の装備で遭難者のもとへ急行し、 現場を特定したりすることで、その後の救助が効率的に進められたり、時間が短縮されたりすることもあるのではないかと思います。  この百名山連続登頂でも、いわゆるトレイルランレースのようなスピードでは進みません。 下りも、走れるけど走らないということが多いと思います。 何かトラブルが発生してとしても、安全を保って極力自力下山できるような体力を維持するつもりです。

(2014年8月22日 山と溪谷社本社にて)