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連載「TJAR2014 30人の勇者たち」Vol.33 2014年の勇者たち (28)飯島浩

2016.07.27

<2年間を費やして関係機関を回った>

 10月、NHKスペシャルでTJARの特集番組が放映され、果たして、TJARの認知度は一気に高まった。
​ 14年大会に向け、飯島は実行委員の業務に追われた。田中や同じく実行委員会メンバーの湯川朋彦、さらに新しく実行委員会メンバーとなった富山県在住で同県山岳連盟の畑中渉らと役割分担をしつつ、関係機関を回った。
 「富山県、岐阜県は畑中さんにお願いして、それ以外の関係機関はほぼ回りました。このレース、コースが5県20市町村にまたがっているので、本当に大変でしたね」
​ 行政(市町村)を回るだけでも、容易ではない。このほか、環境省、各山小屋、森林管理署、地元警察などに足を運んだ。
​ 環境省の理解を得るには、各山域の山小屋の了承を得ることが条件だった。TJARに関わる山小屋は37軒。TJARに理解を示し、応援してくれる山小屋もあるが、一方では、見方の厳しい山小屋もあった。トレイルランニングなどの山岳スポーツが抱える問題が、壁となって立ちはだかった。
 「『山を走るなんてとんでもない』と、厳しい意見を持っている山小屋も少なくない。実際、トレイルランスタイルで山に入ってマナーが悪かったり、目に余る事例もたくさんある。『いくら“自己責任”だといっても、遭難者が出たら、助けるのは山小屋の関係者だ』と言われる。その意見はもっともで、受け止めるべきだけど、登山者を押しのけてまで行くわけではない。TJARの考え方のベースは登山だということを伝え、『迷惑はかけません』と、納得してもらえるように何度も説明しました。それでも、かなり厳しい言い方をされることもあった。『本当に14年大会が開催できるんだろうか……』と、泣きたくなるようなときもありました……」
 当時の飯島の奮闘を知る田中は次のように語る。
 「飯島さんは(12~14年の)2年間を費やして、関係機関に足を運んできた。反対するところがあれば何度でも足を運び説明し、理解を求めた。半端ない努力。普通はそこまでできない。その情熱には本当に頭が下がる」
 山小屋側からは、開催時期、参加人数についての懸念も指摘された。双方の意見をすりあわせ、現行の人数での開催、さらには安全管理などの項目も新たに定めるなどして、14年大会の開催へとこぎつけた。
 「オールクリアとなったのは、14年3月」だった。胃の痛くなるような日々が報われ、「これで公然と開催できる」と安堵した。

<異例の対応に追われた14年>

 14年大会も選手マーシャルとして出場したが、渉外にとられる時間も多く、思うように練習が積めなかった。選手としての自分のことは二の次、大会当日まで運営業務に追われた。 さらに14年大会は台風接近によるコース変更など、急きょ対応すべき事案も起きた。
 「選手マーシャルとして出場はしたけど、完走できるような体調ではなかった。大会前でいうと、今まで休日は山に充てていたところを、渉外や挨拶回りで時間をとられてしまう。純粋に山を走る時間がとれなくなりました。スタート直前まで、準備やあれこれ動いて、開会式も終わって、さぁやっと自分のことを考えることができる、という状態になったのはスタートの2、3時間前。それまでは、ずっと運営業務。気を抜く間もなかった。スタート時点でもう疲れていた感じです……」
 NHKでの放映の反響は予想どおり大きく、スタートのミラージュランドでの開会式など、過去の大会とは比較にならないほど華やかなものになった。
 いざスタート、という場面になり、やっと飯島も一選手として自己と向き合うことができた。「自分がやることはやった。あとは、選手たちみんながやってくれるだろう」という思いだった。



スタート前の選手ブリーフィングで説明する飯島(写真=杉村 航/MtSN)

 

 一番の懸念材料は、台風の接近だった。富山県警からの通達を受け、剱岳を回避するコースに変更するなど、過去にない対応が求められた。また、初日のスゴ乗越から先の稜線がどんなことになるのか、予想不可能だった。
 「初日は、スゴ乗越から先に進むなと言いたかった。だが天候はそのときどうなっているかわからない。選手個々の対応に任せた」
 そう飯島は振り返る。



ロード序盤は紺野裕一(中央)、望月将悟(右)と快調なペースで進む。左端が飯島(写真=杉村 航/MtSN)

 

 レース初日、薬師岳以降の稜線は風速30mを超える「行動不能」の暴風雨となり、トップの望月将悟をはじめ10選手が、薬師岳山荘で一時避難という事態になった。
​ スゴ乗越で寝ていた飯島は、本部からの電話で起こされ、対応協議に追われた。
 「スタート前までの疲れもありましたけど、スゴ乗越でレースを中断したような感じ。寝ていたのを起こされて、連絡をとりながら3時間くらいバタバタしていた。そこで、緊張の糸がプツッと切れてしまった感じ。体調もあまりよくなかったし、寒さと風で精神的にやられていて。歯車がいろいろずれてしまっていた感じでした」
 翌朝、レースが再開となった。三俣蓮華岳まで進み、ビバーク。体調も食欲も気力も回復しなかった。飯島はリタイアを決めた。



風雨が徐々に強まるなか、立山室堂へと向かう飯島(写真=杉村 航/MtSN)
 

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