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「TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」Ver.5 柏木寛之(※出場2回目)

2017.01.23

「TJAR2016 - 鉄人たちの熱い夏」 Ver.5 柏木寛之 ナンバーカード8 6日間20時間56分 13位

松田珠子=取材・文

※14年大会連載「TJAR‐2014年の勇者たち」Vol.6 柏木寛之 へ

 

 大会7日目、時刻はもうすぐ21時になろうという頃、前回(14年)大会の最終完走者・柏木寛之が、ゴール地点の大浜海岸に姿を見せた。軽やかな足取り、ガッツポーズでフィニッシュ。6日間20時間56分、13位。2年前の記録(8日間2時間32分)を24時間以上短縮してのゴールだ。太平洋の水に右手をつけると、その手を上に掲げ、笑顔を見せた。
 「前回は(最終完走者で)実行委員の方にも迷惑をかけたなと。今回は8日以内で完走したいと思っていたが、結果的には7日以内で完走できてすごく嬉しい。120点の出来になりました」
 ゴール後のインタビューでは、こう語った。

 


大浜海岸にて、フィニッシュの瞬間。前回に続いて夜のゴールになったが、
記録はまる1日以上短縮した(写真提供=APJ阿部加世子)

 

<最終完走者だった前回大会>

 14年大会は、レース序盤に膝を打撲するアクシデントに見舞われた。膝の痛み、続く悪天候、極限の疲労に加え、足のむくみにも苦しんだ。最後のロードでは「もう限界」と感じながら、いつ足が動かなくなるかという不安と闘いながら、歩き続けた。完走したときは「やりきった」という思いだった。

 16年大会への挑戦にあたっては迷いもあった。過酷だった前回大会の8日と2時間32分を振り返ると、「次も挑戦したい」と、安易には口にできなかった。
 「前回、ぎりぎりの状態でゴールできて達成感もあったので、もう一度やるというイメージは当時は持てなかった」

 TJARのためというわけではなく、14年から16年にかけては、ロードの走力アップに努めてきた。もともと自転車や山を楽しんでいた柏木が走り始めたのは、TJARへの挑戦がきっかけだ。14年時は参加要件のタイム(フル3時間20分)をやっと切ったくらいだったが、15年には、市民ランナーの“グランドスラム”と呼ばれる「フルマラソンのサブスリー(3時間切り)」「100㎞ウルトラマラソンのサブ10(10時間切り)」「富士登山競走完走」を達成した。
 「今までタイムをめざして走るのは苦手分野だった。レースにもあまり出ていなかったので、やってみようかなと」
 富士登山競走は完走にとどまらず、3時間半を切る好タイム、日本山岳耐久レースでは9時間52分のサブ10を果たした。走力アップを実感したことは、TJAR再挑戦への後ろ盾にもなった。
 山行は、夜間行動を意識し月2~3回の週末登山を行なってきた。その気になったときにはTJARへのエントリーができるよう準備はしていた。「ある程度のレベルで維持したい」という気持ちもあった。

 2度目の挑戦を決意したのは、16年に入ってからだ。
「前回のつらさを忘れてきたというのもありますけど(笑)、それまでの1年半くらいの間に、またあの濃密な時間を過ごしたいという思いが生まれてきた感じです」

 そして16年大会にエントリー。書類選考を通過後、14年大会完走者である柏木は選考会にスタッフとして参加、今大会は抽選が行なわれなかったことで、2度目の出場が決まった。

 

<序盤から胃腸の不調に見舞われ>

 16年大会の目標は、堅実に「8日以内での完走」。オーバーペースにならないことを心がけたが、レースは序盤から胃腸の不調に見舞われた。胃腸の弱さは「自分の弱点」と柏木は言う。
 「心理的な面もあるのかもしれないけど、(TJARでは)毎回お腹は調子を崩している気がする。今回は暑さもあったし、特にきつかった。水分を補給しないといけないけど、お腹の調子が悪いから、とりすぎるとペースを落としてしまう。バランスが難しかった。お腹を下しちゃうとペースも落ちるし、精神的にも乗れないし……」

 



スタート後、馬場島までのロードを江口(左)と一緒に走る柏木。すでに胃腸の不調を感じていた(写真=山田慎一郎)

 

 暑さには苦しめられたが、一方で、好天が続いたことで14年大会では見られなかったアルプスの雄大な景色を堪能した。特に強く印象に残っているのは、剱岳から立山の区間だ。
 「剱岳から一ノ越は、TJARの行程で唯一未踏区間だったので楽しみでした(※前回大会は、台風によるコース変更で剱岳が回避された)。TJARという舞台、しかも最高の天気の中で初踏破できたのはとても印象深かった。立山の景色と、人混み(笑)恐るべし、と思いました」

 


一ノ越の先を進む柏木。暴風雨に見舞われた2年前とは対照的な好天だ(写真=松田珠子)

 

 中央アルプスへ向かうロード上にある選手たちのオアシス、スーパーまるとでは、序盤から前後することが多かった江口をはじめ複数の選手と休憩のタイミングが重なった。長く過酷なレースの合間に選手どうしでリラックスできる時間は、TJARならではの醍醐味を味わえる瞬間でもあった。

 「江口さん、米田さん、仙波さんたちとちょうど一緒になって、前回と同じようなメンバーで同じような状況だったので、デジャブのようだった。選手どうしの一体感みたいなものを感じました」

 


市野瀬を出発する直前。休憩中の桑山(右)と互いの健闘を誓う(写真提供=APJ阿部加世子)

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