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連載 「Top Runner's Voice」。第2回 宮﨑喜美乃

2015年06月10日(水)

 MtSNに会員登録しているトップランナーの、バックグラウンドや活動ぶりを紹介する連載 「Top Runner's Voice」。第2回目で紹介するのは、宮﨑喜美乃さん。2015年3月15日(日)に開催された「IZU TRAIL Journey」で女子2位となり、いきなりトップシーンに躍り出た宮﨑さんだが、トレイルレース参戦はなんとこのIZUが2回目。 陸上競技で鍛えた「走力」と「学究肌」の一面をあわせ持つ、期待の新星だ。 
 


 

■小学校1年で早くもランナーとしての頭角を現わす
「小学校1年でマラソン大会1位になって、子ども心に楽しいと感じたんですかね。おやつがもらえて嬉しかったのかな? とにかく走るのが楽しかったんです。小4で自分から望んで陸上スポーツ少年団へ。運動会は徒競走が得意で、小5まではマラソン大会で男子より速かったですね」
 山口県下関市で生まれ育ち、幼少期から抜きんでた走力を持っていた宮﨑さん。中学〜高校でも陸上競技に打ち込み、山口県立西京高校時代は全国高校駅伝大会に出場。専門の3000mでインターハイ出場を僅差で逃したのをきかっけにバーンアウトを経験するも、「陸上競技が好き」という気持ちは強く、国立大学法人鹿屋体育大学(鹿児島県)に進学する。


■大学院で「低酸素と登山」を分析する研究に没頭
「大学時代は、長くケガをしていて思うように走れませんでしたが、4年時に自分の弱い気持ちを吹っきろうと女子長距離のキャプテンになりました。気合いを入れて望んだ全日本大学女子駅伝では九州初のシード権を獲得。キャプテンとしてチームをまとめて、シード権がとれたので、とても達成感がありました。その後、卒業研究で山本正嘉先生のもと、低酸素と登山の研究をして山岳スポーツに興味を持ち、勉強を続けたいと思ったんです」

 鹿屋体育大学大学院に進学した宮﨑さんは、陸上競技から離れ、山でのフィールドワークや実験室での研究、データ分析に没頭した。「もう陸上競技はやりきったという思いがあったし、走るよりパソコンにデータを入れる作業のほうが楽しかったですね(笑)。『安全登山のための体力度』の指針を作る山本先生の研究が本当におもしろくて、先生の力になることをすべてやろうと思いました」

 宮﨑さんが現在所属している(株)ミウラ・ドルフィンズ代表であり、日本を代表する冒険家・三浦雄一郎氏との出会いは、大学院時代に遡る。
「毎年1回、三浦先生たちが体力測定で鹿屋体育大学に来ていて、2013年5月の80歳エベレスト登頂前にも測定に来ていたんです。その時は山本ゼミの1人として測定させてもらい、そのときにミウラ・ドルフィンズのスタッフと知り合って、2013年の8月からドルフィンズで働くことになりました。山とつながる仕事をやりたかったし、山本先生とのつながりのなかで、低酸素と登山の研究が続けられそうだと思ったから」
 


 

■東京生活~トレイルランデビューまで
 さて。大学院時代は研究ひと筋だった宮﨑さんは、いかにしてまた走り始め、トレイルランにつながっていったのか。その急展開のきっかけは、ハーフマラソン大会への出場と、三浦雄一郎氏のアクティブな活動ぶりだった。
「東京に来ると、やっぱり地震が怖くて、仕事場から家まで帰る道をチェックしようと走ってみたら、久しぶりのランのせいか、たった5km走っただけでフラフラになった(笑)。こんなんじゃダメだ~と思っていた矢先、友達から新宿ハーフマラソンに出ようと誘われたのをきっかけに、また走り始めました。でもいちばんの理由は、三浦先生が80歳になってあれほど動いていて、自分は20代でなにをやっているんだ、と思ったことですね」

 走る感覚を取り戻した宮﨑さんが次にめざしたのは、なんと100kmを走るウルトラマラソン。ハセツネCUP(日本山岳耐久レース)でトレイルレースデビューする直前、2014年6月のことだ。
「ハーフマラソンの次に100kmマラソン(阿蘇カルデラスーパーマラソン)に出ることになりました。100kmを完走するためには練習しなきゃ、と思い立ったのが、本格的にトレーニングを始めたきっかけに。その結果がよくて(女子4位・9時間27分35秒)、ザ・ノース・フェイスの方から、ハセツネの女子チーム戦メンバーに誘われたんです」

  2014年10月のハセツネCUPは、初トレイルレースにして11位(10時間58分54秒)という好成績をマーク。山を走るのはほとんど初めて。試走もなし。それでもいい結果を残せたのは、登山の経験と陸上競技で鍛えた走力、そして「チーム戦」という心の支えがあったから。
「その頃、登山に頻繁に行っていて、山の中で長時間行動することには慣れていました。でも、ハセツネは夜の山を走るのが本当に怖くて、崖から落ちるんじゃないかとか、終わったあとの精神疲労がひどくて、2日間くらい眠れなかった。マラソンの感覚で、歩いちゃいけないと思っていたので、とにかく夢中で、登りでは走りました。夜間走行は怖かったですが、チーム戦というのが心の支えでしたね。一人で出ていたら、たぶん途中でやめていましたね。チーム戦の雰囲気が駅伝と似ていて、それが楽しくて、トレイルランを続けていけばまた一緒に走れるだろうし、それがのめり込むきかっけでした」
 


 

■IZU TRAIL Journey~今シーズンの目標
「ハセツネのあと、地元の下関海響マラソン(フル)に出たり、JST(スカイランニング)のチーム合宿で大瀬和文さん、小林慶太さんというすごいメンバーの方々とハードな練習をしたり、IZUに向けてコンディションを作っていきました。IZUは走れるコースなので、最初に飛ばし過ぎてキツかったです。後半、足が動かなくなり、とにかく逃げろ!という感じでした。優勝がチラチラ頭をよぎりましたが、最終エイド地点に優勝した福田由香理さんとほぼ一緒に入って、福田さんのほうが元気だった。それで、2位は死守しようと」


2015年3月の「IZU TRAIL Journey」の表彰式にて(前列右端)

 

 IZUで一躍トップシーンに躍り出た宮﨑さんが、今シーズン照準を合わせているのが、スパトレイル(四万to草津)とSTY(静岡to山梨)。この2レースをステップに、2016年にはUTMF出場をめざしている。
「今シーズンはSTYに向けてピークを持って行きます。気負わずに走りたいですね。そして来年はUTMFを走る。それが目下の最大の目標です。STYで弾みをつけて、来年のUTMFでいい成績を出して、三浦先生に褒めてもらいたい(笑)。 そして、ゆくゆくは世界で戦える選手になるのが夢です」


■トレイルランニングをテーマに研究も続けたい
「速く走れば行動範囲が広がって、より遠くまで行けるし、景色もどんどん変わっていくし。絶景に思わず声が出たり。マラソンとは違った非日常的な楽しさがトレイルランにはありますね。ロードは淡々と走るのが好きですけど、トレイルランは遊びの要素もあるし、その楽しさを多くの人に伝えていきたいです。
 そして、自分の体をベースに、トレイルランの研究をしてみたい。トレイルランのトレーニング理論は世の中にあまり出ていないので、いろんなレースに出て、できるだけ上位に入って、そのデータをもとに研究をしていきたい。学究的側面からも、トレイルランというスポーツに取り組んでいきたいです。その研究をしていくことで、登山の世界にも貢献できるかなと思っています」

 自らを分析して、レースでは「最初に飛び出しちゃうタイプ。ロングレースにはまだ慣れていないというか、ガマンできなくて(笑)」という宮﨑さん。おっとりとした外見とは裏腹に!? 根っからの負けず嫌い。「兄弟が4人いるんですけど、昔から“兄には絶対勝ちたい”っていう気持ちが強い。兄とはいまも毎年1回、フルマラソンで勝負をしていて、下関海響マラソンでは私が勝ちました(※ちなみにお兄さんもフルマラソン3時間30分を切るランナー)。負けてたまるかって感じです(笑)」
 先行逃げ切り型のタクティクスを武器に、まさにいま伸び盛りの宮﨑さん。今後の活躍に期待しよう。

                                  取材・文・写真=久田一樹/MtSN


宮﨑喜美乃(みやざき・きみの)
1988年、山口県下関市生まれ。小学校から陸上競技を始め、鹿屋体育大学まで選手として活躍。鹿屋体育大学大学院を経て、ミウラ・ドルフィンズで健康運動指導士、低酸素シニアトレーナーとして活動中。2014年10月・ハセツネCUP女子11位。2015年3月・IZU TRAIL Journeyで女子2位となり、一躍脚光を浴びる。当記事公開日現在(6/10)のMtSN女子ポイントランキングは24位。
※宮﨑喜美乃選手のMtSNマイページへのリンクはこちら

★2015年、宮﨑喜美乃さんの出場予定レース
スパトレイル(四万to草津)
STY(静岡to山梨)

 

 

連載【 Top Runner's Voice バックナンバー】

第1回 小川壮太

 

 

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